その日の帰り、隣の靴箱から声がした
『お前好きなやついるのかよ』
『いるわけねぇだろ』その声は確かに蓮くんだった。
蓮くんと帰る時間が合うのは久しぶりだ。
『あ、わりぃ!塾あるんだった。先いく!』
蓮くんの友達は急いで外へ出ていった。
私は蓮くんが出て行くのを待っていたけど、出てくる気配がなく、私は小走りで外へ出た。
『あ、あの!』そう言われて振り向くと、そこには蓮くんがいた。
『一ノ瀬さん?一緒に帰りません?』
『え?あ、まぁいいですけど』緊張していたのか、私はあなたに興味ないですという感じを出すためなのか、少し冷たい返事をしてしまった。
『ありがとう!』と、嬉しそうに言ってくれた。
その後も話が弾み、少し仲良くなってきた。
『なんで一緒に帰ろうって言ってくれたの?』私がそう聞くとこう答えた。
『え、なんでって、そりゃぁ美人って噂されてるような人だもん。』
『え?』素で出た返事だった。
『あ、ていうか一ノ瀬さんの下の名前って何なの?』
『華』
『そうなんだ!』蓮くんはまた嬉しそうに返事をしてくれた。
次の日
『おはよう!』朝一番に挨拶してくれたのは蓮くんだった。
『おはよう』と私も返す。
『え、そこできてるのー?』という声が聞こえた。
明らかにからかっているようにしか思えなかった。
『できてねーし。』蓮くんはそう言うけど、私は何故か悲しくなった。
『できてないよ。』私も答えた。
『じゃあなんでお揃いのキーホルダー付けてるんだよ』そう言われて初めて気がついた。
『え!?ほんとだ』蓮くんも知らなかったようだ。
白い熊の可愛らしいこのキーホルダーを、学年1イケメンの子が身につけてるなんて思いもしなかった。
『蓮くん、なんでそんな可愛いやつをを?』
『普通に可愛いから』
『そ、そっか』
普通に〇〇って…普通にって何なんだろう。そんなしょうもないことを考えていたら、いつの間にか自分の教室の前にいた。
『一ノ瀬さん、じゃあね!』笑顔で言ってくれた。
『じゃあね。』帰りも蓮くんと会えたらいいな。
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