テラーノベル
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夜のスタジオ。明かりを落とした控え室に、
滉斗と涼ちゃん、ふたりだけ。
リハ後、自然と、
誰もいないこの部屋に居残ることになった。
理由なんて、
聞かなくても分かってた。
お互い、
まともな精神じゃもういられなかったから。
「……涼ちゃん」
「……滉斗」
名前を呼び合う声すら、かすれていた。
滉斗は、涼ちゃんを見つめた。
どこか怯えたようなその表情。
(俺と同じだ)
元貴の視線。
元貴の声。
元貴の、指。
思い出すたびに、
身体の奥が冷たくなっていく。
「……元貴、変だよな」
滉斗が、ぽつりと呟く。
涼ちゃんも、
小さく頷いた。
「うん……すごく、怖い」
目の奥に、怯えが滲んでいる。
(……俺だけじゃなかったんだ)
それが、少しだけ救いだった。
けれど、救われた分だけ、
余計に罪悪感が胸を締めつけた。
(全部、俺たちのせいだ)
壊した。
3人のバランスを。
大切だった関係を。
「……ごめん」
滉斗が、ぽつりと謝った。
涼ちゃんが、目を見開く。
「なんで、滉斗が謝るの」
「俺も、同じだったのに。 ……止めなかったのに」
滉斗は、
ぎゅっと拳を握りしめた。
(守りたかったはずなのに)
(守れなかった)
苦しくて、息が詰まりそうだった。
涼ちゃんが、
そっと、滉斗の手に自分の手を重ねた。
柔らかくて、
でも、どこか熱かった。
その温もりに、
滉斗は耐えきれなくなった。
そっと、涼ちゃんを引き寄せた。
涼ちゃんも、
拒まずに、滉斗に身体を預けた。
——罪だと分かってる。
でも、触れていたかった。
触れ合って、温もりを確かめないと、
きっと心が壊れてしまうから。
滉斗は、涼ちゃんの背中を撫でた。
震える涼ちゃんの指が、滉斗のシャツを掴む。
互いに、求め合うように。
ただ、温もりが欲しかった。
「……怖いよ」
「……俺も、だよ」
涼ちゃんが、かすれる声で言った。
滉斗は、力なく笑った。
元貴の存在。
それ以上に、
自分たちの、
壊れていく感情が、怖かった。
「……滉斗」
「……涼ちゃん」
絞るように呟いて、
涼ちゃんの顎を持ち上げ、
そのまま、貪るようにキスをした。
「んっ……っ……」
重ねた唇は、すぐに濡れて、乱れた。
抱きしめ合う腕に、力がこもる。
滉斗の手が、涼ちゃんのシャツの裾をまさぐり、
そのまま無造作にめくり上げた。
「や、っ……滉斗……でも……」
「……無理……我慢できない」
囁くような声で。
涼ちゃんの耳元に、熱く吐息をかける。
自制なんて、もうできなかった。
滉斗の手が、涼ちゃんの背中から腰を撫でる。
涼ちゃんも、抗いながらも、
身体を委ねてしまっていた。
滉斗は、控え室の机を振り返った。
散らばったノートや水のボトル。
「……邪魔、だ」
滝のような欲望に突き動かされ、
滉斗は机の上のものを手で薙ぎ払った。
ガシャーン!
と鈍い音を立てて、物が床に散らばった。
「っ……滉斗……」
涼ちゃんが怯えたように声を漏らす。
だが滉斗は、
その細い身体を、机の上に押し倒した。
「ごめん、涼ちゃん……でも、もう、止められない……」
シャツの隙間から、震える背中を撫で、
そして——
滉斗は、涼ちゃんの頭を優しく押さえながら、
後ろから一気に、深く、突き上げた。
「ぁ……っ……ああぁっ‼︎」
涼ちゃんの喉から、切ない叫び声が漏れる。
ガタガタと、控え室の机が激しく軋み始めた。
「っ……はぁ……涼ちゃん、やば……っ」
滉斗は、汗ばむ額を涼ちゃんの背に押し付けながら、
必死に貪るように腰を打ちつけた。
「やぁっ……ぁ、滉斗っ、深い、深いよ……っ」
涼ちゃんも、滅茶苦茶に乱れながら、
必死に滉斗を受け止める。
机の脚がきしみ、
二人の吐息と、熱い音が、
この小さな控え室いっぱいに響き渡る。
「涼ちゃん……あ、愛してる……っ」
「っ……俺も……滉斗……っ、滉斗がいい……っ」
お互いの熱に、
お互いの心に、
もう、抗うことなんてできなかった。
「イきそう、涼ちゃんっ……!」
「俺もっ、滉斗と一緒に……っ‼︎」
そして——
「っ……うぁぁっ‼︎」
「んあっ……‼︎」
ふたりは、同時に、
叫び声とともに、絶頂を迎えた。
涼ちゃんの中に、
滉斗の熱が、溢れる。
涼ちゃんも、机にしがみついたまま、
全身をビクビクと震わせた。
荒い息。
汗だらけの肌。
震える指先。
「……はぁ、はぁ……涼ちゃん……」
「……っ、滉斗……」
机に突っ伏したまま、
涼ちゃんが小さく呟く。
その声に、
滉斗は、どうしようもなく愛しさが込み上げた。
「……もう、絶対離さないから」
耳元で、
熱く、囁いた。
そして——
スタジオの廊下の奥。
そのすべてを、
一部始終、
覗き見ていた男がいた。
大森元貴。
扉の隙間から漏れる、
滝のような熱と欲望。
机の上で、必死に求め合う二人。
ガタガタと軋む机の音。
乱れた喘ぎ声。
——まるで、
世界にふたりきりしか存在しないかのように。
すべてが、
元貴の耳と目に、
ありありと焼き付いていた。
呼吸すら忘れたみたいに、
静かに、じっと。
目の奥に、
ドロリとした感情が湧き上がる。
(またかぁ……いいなぁ)
心の底から、
無邪気に、そう思った。
(俺も、あそこに入りたいな)
(ふたりの間に、割り込んで、ぐちゃぐちゃにして)
(涼ちゃんも、滉斗も、俺のものにして)
(泣かせて、壊して、でも絶対、離さないで)
ぐるぐると、
止まらない欲望が渦巻く。
「……はぁっ……ぁ……」
元貴は、
廊下の影に隠れたまま、
ズボンの奥に手を差し込んでいた。
震える指先で、
自らを擦り上げながら。
涼ちゃんが、
滉斗が、
必死にお互いを貪っている。
その光景が、
たまらなく愛しくて、
たまらなく憎かった。
「……っ、涼ちゃん……滉斗……」
喉を震わせるような声で、
二人の名前を、
狂ったように何度も呟く。
(欲しい——)
(ふたりとも、欲しい——)
(壊して、めちゃくちゃにして、俺だけのものにしたい——)
元貴の中で、
膨れ上がった欲望と独占欲は、
もはや制御不能だった。
(……ダメだなぁ、俺)
(もう、止まんないや)
ぞくり、と背筋を駆け上がる快感。
二人が抱き合えば抱き合うほど、
自分の中の「欲しい」が膨れ上がっていく。
「……俺だけ、置いていくなよ」
かすれる声で、吐き捨てる。
(涼ちゃんも滉斗も……
全部、俺のモノだったはずだろ……?)
(なんで、俺以外で、そんな顔すんだよ)
(俺だけを、見ろよ——)
ガタン。
元貴の肩が、震えた。
腰を押し付けるようにして、
指先で自らを擦り上げながら、
目の前の行為に、どんどん溺れていく。
「……っ、うあ、ぁ……っ!」
押し殺した声と同時に、
廊下の壁に、熱い飛沫が飛び散った。
荒い息をつきながら、
壁に手をつき、ぐったりと項垂れる。
手のひらには、べったりと、自分の欲望の痕。
でも、元貴の目は、まだ笑っていなかった。
ギラギラと、血走った目。
そこには、ただ純粋な興奮だけじゃない。
——支配欲。
——独占欲。
——破壊衝動。
全部、混ざり合っていた。
「……もう、止まんねぇな」
低く、ゾクリとする声で呟く。
「俺の涼ちゃんも、滉斗も——
全部、俺のもの。」
舌でぺろりと手のひらを舐め取る。
元貴は、 笑った。
狂った、心底楽しそうな顔で。
舌なめずりするように、
狂気を孕んだ目で、ふたりの影を見つめ続けた。
暗闇の中、
元貴の影は、
ますます濃く、深く、
歪んでいった。
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