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次の日の放課後も、結局思うように集中できないまま下校した。
夕暮れの風は冷たくなりはじめ、制服の袖口から入り込む空気に小さく身震いする。
家に帰ると、玄関には先に靴が並んでいた。
「……あ」
悠真のものだとすぐに分かる。
廊下の先から足音がして、彼が顔をのぞかせた。
「おかえり、咲」
ほんの少しだけ、それまでのざわついた心が和らいだ気がした。
「……ただいま、悠真さん」
何気ない挨拶なのに、鼓動が早くなるのを隠せない。
この感情の名前を、咲はまだはっきりと口にできなかった。