テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
「ありがとうございます」
思わず小声で言ったその瞬間、悠真が横でふっと笑った。
「なにそれ。妹ちゃん、妙にかしこまってんじゃん」
「えっ……?」
「前はもっと、ガキっぽかったのにな」
軽くからかうような声音に、咲は胸の奥が熱くなる。
「……もう高三ですから」
精一杯平静を装って返した言葉に、悠真は「そっか」と短くつぶやき、皿をすすぐ手を止めた。
一瞬、沈黙が流れる。
ただ水の音だけが響くその時間が、やけに長く感じられた。
咲は耐えきれず、視線を伏せる。
――こんな小さなやり取りで揺れてしまう自分を、認めたくなかった。