いちゃいちゃさせたいだけの小説Part5
い、、ちゃ、、、、いちゃ。?
杏様愛され
⚠︎死ネタ注意
なんか普通に書いてたけどよくよく考えれば百合やんってなったシーンがありますがお気になさらず。
身体が蝕まれていく。
日が経つ事に自分が自分でなくなる。
🎧
最初に異変に気がついたのは、イベントの帰りにこはねと公園で会話していた時。急に体に力が入らなくなって、貧血か何かだと思っていた。
病院で目を覚ました時に男性の医者から聞かされたのは、私の余命宣告だった。
医「……白石さんは、夢花病…ですね。世界有数の奇病の一種です。」
謙「杏は…助かりますよね?」
医「現代の技術では、、もって半年かと…」
こはね「嫌…嫌ッ、、嘘だよね、、杏ちゃん、!」
夢花病。この前初めて日本人患者が生まれ、話題になっていた奇病だった。
【夢花病】(yumekabyou)
夢のように儚く散ってしまう病。時が経つ毎に足先から花びらと化していく。最後棺桶に残るのは真っ赤な花弁だけだという。
杏「あぁー、、、。死ぬんですね。私。」
医「…諦めないで。まだ、、、希望はある、、」
杏「そうなんですか、?!」
医「もし白石さんが良ければ、私が紹介する施設の研究に協力して頂けませんか?夢花病の治療薬を開発する施設なんです。」
杏「…!勿論です!」
淡い期待を抱いてしまう。
この白石杏という人生をまだ続けても良いのだろうか?神様が居るのなら問いただしたい。
✄——————-‐✄
🥞
杏が倒れた。そう聞いた。
夢花病。軽く調べただけでも絶望を感じた。
余命半年。
あと半年で、杏が死ぬ。
嘘…だ。
彰「杏!!!!!!!!ッ」
病室の扉を勢いよく開く。
後ろから走ってきた冬弥に注意されても、足は止まらない。
杏「彰人っ、、!」
俺を見て柔らかな笑みを浮かべたのはやつれている、よく見たことのある少女だった。
杏「見て……?」
杏が手の上に乗せ俺に差し出してきたもの。
【赤い花弁が1枚】
彰「杏…これ、、、」
冬「まさか…白石、、!」
杏「うん、!こはねが来てた時に…足が、、、、ね。なってたみたい。全く痛くなくて気づかなかったよ。あ、勿論私は大丈夫だからね?」
…嘘つくな。
嘘を、つくな。
痛くない?嘘をつくな!!!
そんなに苦しそうな顔して何言ってんだよ。
辛そうにして何考えてんだよ。
大丈夫とか、言うなよ。
本当だ。本当の本当に、、
杏が死んでしまう。
嫌だよ。、杏、?
どうしてそんな顔をする?
諦めんじゃねぇよ。
まだ伝説超えてねぇだろ。
杏「彰人ぉ…そんな顔しないで?」
冬「……歌は、、歌えるのか?」
杏「うん!歌える歌える!だから、、最期まで私はビビッドストリートで過ごそうかなって思ってる所〜!」
彰「…んなことしたら、、、病気が……」
杏「狭い病室で過ごすより、大好きな街に囲まれてたいんだ、、良いでしょ?、」
否定出来ない。
生きて欲しいと口に出来ない。
強がりしか口に出来ない。
彰「…ははっ、、じゃあ、、それまでに伝説超えるしかねぇな…」
冬「……彰人…」
死なせない。死なせたくない。
これからも一緒に伝説目指して歌い続けるんだよ。お前はそういう運命なんだよ。
死んで途中離脱か、?許せねぇよ。
🎤
ミク「……ッ」
カイ「ミクッ、!?」
ルカ「やっぱり、、不味いわねぇ…」
メイ「……また?ミク。」
ミク「うん…、、」
パッと視界がホワイトアウトする。次の瞬間には足先が痛みに包まれる。
…先程、みんなから神妙な面持ちで報告を受けた。
杏が【夢花病】にかかり、余命半年だと。
杏の痛みが私にまで伝わってくる。
杏と違って、私の足が花弁になることは無い。ただ、、、苦しい。
リン「杏ちゃん…死んじゃ、、うの、、かな」
レン「……嫌だよ。杏が居ないセカイなんて、、、おかしいよ…」
リン「どうして、、杏ちゃんなの、、?」
私達は何も言えない。杏の決断を尊重することしか出来ない。想いを見つけた杏にとって、私達は夢を叶える…伝説を超えるための手段の1つでしかない。
ただ…私は……、、
ミク「杏……ッ、、ポロポロ」
🎀
大親友が、学校に来なかった。
病気なんて滅多にしない彼女を、今日校内で見かけることは無かった。
お昼時。弟君と冬弥君に、お昼に誘われた。何か、杏についての話があることは分かりきっていた。
約束の教室に集まれば、類や司先輩、、、類のショー仲間の女の子に、えななんまで。
この為だけに早く来たのか?えななんも顔を俯かせ、僕と目を合わせない。
僕が椅子に座ると、揃ったかと小声を出し、弟君が立ち上がった。
__杏が夢花病に掛かった。余命は半年らしい。
何度も帰宅中その言葉が脳内で繰り返された。
全てがどうでも良くなった。
大親友の余命宣告を受けた。
僕はどうしたらいいの?杏。
僕、君に恩返ししなきゃいけないのに。
こんな僕に話し掛けてくれてありがとうって。
これからもよろしくって。
言わなきゃいけないのに。
太陽のように眩しい杏の笑顔を思い出し、思わず天を仰ぐ。雲が跨った夕暮れが水溜まりに沈んだように見える。足を進めた振動で水たまりから流れた水が頬を濡らす。
ナイトコードで、えななんに謝らなきゃ。きっと僕が悲しむからわざわざ学校まで来てくれたんだ。謝らなきゃ。謝らなきゃ。謝らなきゃ。
一滴たりとも頬を濡らす水を拭わず、家へと足を進めた。
🐹
今日は放課後練の日。だったけれど、急遽ミーティングに変わった。場所は、WEEKEND GARAGE。杏ちゃんの退院を迎える予定だ。
帰りのHRが終わると同時に自然と足が動き始めた。少しでも早く、街へ浸りたかった。杏ちゃんの愛する街に浸りたかった。
ストリートに着いた。約束の時間までは、おおよそ1時間ほどある。街の歌声に耳を貸すことにした。
今はもう営業していないお店の前の花壇に腰をかける。目を瞑り、歌声に耳を貸す。
とってもパワフルな歌声だな。でも、足りない。杏ちゃんに、遠く及ばない。
ッ、!
気が付いたら手が震えていた。喉も、足も。小刻みに震え、不安を煽ってくる。
杏ちゃんが居ない街で、本当に私はやっていけるのか。恐怖に近い感情だった。
杏ちゃんとの街での思い出を振り返る度に、少しづつ目が熱くなって来る。
道行く人に心配そうな目で見られても。
通りすがりの街の店主に声を掛けられても。
溢れる涙を堪えきれず、ただ嗚咽を漏らした。
☕️
…今日は全く授業に集中出来なかった。
委員会の仕事にさえ力が入らず、満足に行えない。
「冬弥ー!」と、窓枠に腰掛けながら俺の名前を叫ぶ白石はもう拝めないのだろうか。
「この本!返却お願いします!」
冬「あ、はい。お預かり致します。」
冬「ぁ…しおりが挟まってますよ。どうぞ、、ッ!」
栞の押花に目を奪われる。
昨日白石が見せてきた赤い花弁を彷彿とさせるその栞に対し、途端に不快感を覚える。
白石……俺が彰人と喧嘩をした時、誰よりも解決に貢献してくれた。お前が居なければ、今の俺は無かったかもしれない。この、素晴らしい日常を体験することがなかったかもしれない。
ありがとう。白石。だから、、、
死なないでくれ。
🥞
クソが。
クソが。クソが。クソが。
どうして、、杏なんだよ。
どうして、杏なんだよッ!!!
杏がなにか悪いことでもしたか!?してねぇだろ!!ざけんな、、ざけんな、ざけんなッ!!!!!
空き教室で太い柱に何度も拳を叩き付ける。
ドン、ドン、と。鈍い音が鳴り続ける。
伝説を超えたい。それは、、俺達の目標だ。
お前が居なきゃ、俺達はVivid BAD SQUADじゃない。
杏…杏ッ……
死ぬなと想いを込めようと、世界は残酷だ。これだけで命が助かるなら医者は要らない。
友達が、ライバルが、親友が。
あと半年で死ぬと分かったとて、自分に何ができるだろうか。
何も出来ない。それが俺の答えだ。
何年も、何年もの記憶、思い出を半年で全て感謝の気持ちに込めるなんて無理なのだ。杏が死ぬという事実を受け入れるため、1年は欲しい所だ。たったの365日の半分で何が出来るっていうんだよ。
俺は、、あまりに杏の友人として不甲斐無い。
🎧
大きな白い建物の前で車椅子を1度止める。
いつ消えるか分からないこの足で立っているのは危険なのだ。車椅子は今後必須になってくる。
建物の中から1人の白衣を着た女性と、その隣に立つ私と同い年程度であろう少女が出てくる。
杏「…白石杏です。夢花病の、、研究に協力に来ました。」
白衣を着た女性がゆっくりと話し始める。
白「…初めまして。白石さん。夢花病研究施設の所長の**です。よろしくね。」
少「夢花病研究施設の、白石さんの担当医…というか、サポート役の**です。よろしくお願いしますっ!」
具体的に何をするかなどを説明されながら、建物の奥の部屋へと運ばれていく。少女の方は、どうやら私の1つ上の年齢らしくまだ高校生だそう。どうして此処で働いているのかと問いたかったが、無粋な気がして聞けなかった。
採血や少量の薬の接種など、丁寧に全ての仕事を終わらせてくれた。検査中に足先が2枚程花弁と化したが、その痛み以外に何かを感じることは無かった。
少「これで、、っと。最後の検査終わりです!お疲れ様でした!」
杏「ありがとうございました、、!」
少「白石さんは、ご入院されないんでしたよね、?」
杏「あ……はい、、そうなんですよね。ご迷惑なんでしょうか…」
少「余命は普通の暮らしがしたい、というのも珍しくありませんよ、全然大丈夫です!」
廊下を渡りながら、通院の回数や家での薬投与について説明を施される。だが、その話は突然に途切れることとなった。
長い一本道の突き当たりは曲がり角になっていて、入院患者達の生活スペースが広がっているらしい。突き当たる直前に、玄関ホールが広がっている形になる。
車椅子を段差から下ろしてもらった辺りで、突き当たりから入院患者であろう1人の女の子が現れた。
その女の子に、目を奪われた。
女の子は確実に私と同じ夢花病。しかし、その姿は異様なもので、車椅子に座ってもいなければ指先は真っ赤な花弁と化してる。女の子は、次の瞬間倒れ込んだ。
【夢花病によって手足が失われる瞬間が目の前にあった。】
少「**!!!!!!」
担当医の少女が、その女の子の名を呼ぶ。騒ぎに気づいた研究施設の調査員が、わらわらと女の子達の元へ向かっていった。
少女は何かを調査員数名と話した後、私の方へ戻ってきた。
少「ごめんなさい、、お騒がせして、!」
杏「いや!全然大丈夫です…あは、は……」
苦笑いが限界だった。私もあのように手足が消えるのか?そのまま命が朽ちるのか?
言葉にならない恐怖が身体を支配していく。
少「白石…さん。これは、、ほんの、1人のお願いです。聞き流してください。」
「1人で戦っていると思い込まないでください。ここに居る全員が、貴方の味方です。」
どうして…
どうして、?貴方は夢花病を患っていない。私達なんてどうでもいいでしょ?
杏「…どうして、夢花病の研究に携わることを決めたんですか?」
少女は少し驚いたような素振りの後、切なさが籠った笑顔で呟いた。
少「今倒れてたあの子、僕の彼女なんです。」
…繋がった。彼女が夢花病だったから、その研究に携わっていたのか。嫌、、、何か違う。
杏「夢花病の研究は最近始めたってことですか?」
少「…いいえ。」
日本人の夢花病患者が出たのはここ数年で初めてだったはずである。少女の彼女が夢花病にかかってから研究を始めた訳では無いのなら、いつ始めたのだろうか。
尋ねたいことが増える一方、少女は対応に追われているようだった。
少「ぁ、それじゃあ、、!お気を付けて!また来週お願いします!」
杏「あ、はい!ありがとうございました!!」
このまま向かう先は1つ。
WEEKEND GARAGEへと車椅子を進める。
押し潰されそうな恐怖や不安を悟らせないため、少しでも明るい顔をしてストリートに溶け込んでゆく。
🐹
こ「杏ちゃん!!!、!」
思わず大きな声を出してしまう。
ガレージの扉が開き、ゆっくりと車椅子で店に入ってくる少女は、私の相棒だった。
目が腫れたせいで上手く目を開けない。けれど、そんなこと関係ない。
何度も愛する相棒の名前を叫ぶ。
半年後、返事をしてくれなくなってしまう前に。
杏「こはねっ、!!!!」
杏ちゃんはまだ外風の冷たさを帯びていた。抱き締めた身体は、いつもよりひと回りだけ小さかった。
彰「…杏、これからの話……だ。」
杏「そうそう!色々考えてきたんだけどねぇ…」
杏「やっぱ私、死ぬ前にもう一度ステージに立ちたいなって思って!」
杏「凪さんみたいに、、最期のステージをやりたいの。そうしたら、、きっと、、あの伝説の夜に、、!、私達の中で、最高の記憶に残る夜になるんじゃないかなって。」
あの頃、凪さんが亡くなっていると聞いて涙していた杏ちゃんが居ない。
夢を追う、私の大好きな杏ちゃんだけがそこに居た。
冬「なら、最っ高の伝説の夜を作り上げるしかないな笑」
彰「おう。これまでの全部出し切って、あの夜を超える!!!」
こ「うん!!頑張ろうね、みんなッ!!!」
杏「…えへへ、、っ、、!絶対、絶対あの夜を超えるんだ、、!凪さん……っ、!見てて!」
それから数ヶ月が、数分に感じてしまうほど儚く練習に熔けていった。
放課後練習、放課後練習、放課後ミーティング、休憩日、放課後練習、皆で思い出作り、休憩日。
杏ちゃんが行きたいと言った場所へ遊びに行った。したいと言ったゲームをした。
幸せな時間が過ぎていった。
🎧
あーぁ。死にたくないや。
着々と小さくなっていく身体。蝕まれているこの身体は、とうとう太もも以下が全て花弁として散っていった。
死にたくない。生きたい。そんな気持ちに支配される。不安になる。けれど、今だけは、、今だけは…忘れよう。
彰「杏…そろそろだ。」
頷き、マイクを手に取る。そのまま、車椅子のまま、ステージにあがる。
なんて喋ったのか、あまり覚えていない。死んでしまう事への悲しみを謳った気もすれば、こはね達への希望を綴った気もする。
お得意のダンスが踊れなくても、私には歌がある。
全ての全力を出し切って歌う。
何かが、違う。決定的に何か。いつものイベントとは異なる。
空気が違う。街が一体化している。
熱狂に包まれる。感じたことの無い高揚感に盈ちる。
後に’伝説の夜を超えた’と称されるこの日のイベントは、大成功で幕を閉ざした
訳ではなかった。
歌の途中、マイクが手から落ちた。拾おうと手を伸ばすも、何も腕からは伸びない。
歌の最中に、両手が花弁になって散った。
マイクを拾うことが出来なかった私は、拾ってもらう時間はないと判断しマイク無しで歌を歌いきった。
いつかのイベントで、こんなこと、あったな。
マイクの接続が切れて、それでも歌ったこと。
あの時は冷たい空気と暖かい空気がはんぶんこされていた。けれど、今回は違った。
熱い。身体が熱い。マイク無しの叫びと言える歌は、ワンフレーズを乗り切った後に毎回歓声が上がるほど盛り上げ要員となっていた。
全てが最高の夜だった。
?
身体が…身体が痛い。
とっくに無くなった足も、手も。
痛い、痛い。
私は…日本で初めての、「夢花病」患者だと言われた。どうしてこんな奇病を患ってしまったのか分からない。
あぁ、また、1枚花弁が地面に落ちた。
死にたくない。涙は頬を伝い、そのまま地面に落ちた。
また、1枚。また、、1枚。
1枚、1枚、1枚。
親友は、夢花病の研究施設をわざわざ作成してまで私を救おうとしてくれた。
大好きな彼氏は、医者という仕事を休業してまで私の世話をしてくれた。
どうして?
どうして私が?
ねぇ、、何か悪いこと、した?
余命宣告を受けたのは数年前。それがもし正しければ、あと数ヶ月は生きれたのに。
限界を感じて布団の上に転がる。
身体が着々と蝕まれるこの感覚は、言葉では表せない。
死んでしまう。死んでしまう…死んでしまうッ。
嫌だなぁ……生きたかったなぁ、、
?
夢花病を患った彼女は、余命宣告よりずっと早くに息を引き取った。1人の医者として、、嫌、1人の彼氏として。最期に隣に居てあげられなかった。最低だ。
彼女の遺体に虫が湧いたり、異臭が放たれることなどなかった。その逆だ。甘い花の匂いだけが部屋に残った。赤い花弁だけが 残った。
嫌に鼻に残る香りは、今でも忘れることが出来ない。
🎧
床に寝転がる。
最後のイベントを終え、後は死をゆっくりと迎えるだけ。
謙「……杏、」
杏「父さん!今行くから待って〜!」
7月26日
WEEKEND GARAGEで大規模な誕生日会が行われた。
私の最期の誕生日を、皆が盛大に祝ってくれた。
フォークを掴めなくても、こはねが口へケーキを運んでくれた。プレゼントは、手足が無くても喜べるものばかりだった。
あぁ…愛されて、、るんだ…
死にたくない、と何度願っただろう。
叶うことがなかったとしても、それでも、これまでの出来事は全て夢だったんじゃないか?なんて、思いたくなる。
それでもやっぱり、痛いや。
処方された鎮痛剤も、最初は効いていたけれど今は…もう。
苦しい、生きたい。
幸せな人生、終わるには早すぎる。
嫌だ、嫌だ!死にたくない!!
感情が昂り、思わず涙を零してしまう。
声を押し殺して泣く。
つられてみんな、涙を流した。
父さん母さんも、こはねも彰人も冬弥も。新達も遥達も瑞希たちも。
来世も、こんなふうに沢山の人に愛されたい。次は、強い身体だったら良いなぁ。
死後は何処へゆく?
無の世界?それとも、異世界へ?同じ人生を繰り返すのかな?凪さんに会えるのかもな。
長かった誕生日会を終え、部屋の中に倒れ込む。本当に幸せな時間だった。
みんなの事が大好きになれる時間だった。
「杏ちゃん!」
声がする。スマートフォンを見ると、リンとミクが私を呼んでいる。
久々にセカイへ行くと、第2の誕生日会が行われるところだった。
歩けない私を、先にセカイに来ていた彰人が運んでくれる。私用の椅子を、冬弥が引いてくれる。こはねの合図で、歌が始まる。
いつもの私達は歌わない歌。
Happy birthday to you.・*’’*・.♬
私の愛した人達が、私を愛してくれている。これ以上の幸せなど有ってたまるものか。
大きく膨らむ生きたいという気持ち。死にたくないと願う気持ち。そして、止まない痛み。
大好きな歌を歌って、大好きな物を食べて、大切な人達と時を過ごした。もし、人生で楽しかった事は?と聞かれたら間違いなくランクインする。
私は……幸せだなぁ…あはは、、
声と裏腹に溢れる涙は、甘くなんて無く、ただしょっぱいだけだった。
🎧
病院のベッドの上に寝かされる。
限界だ。周りの声も聞こえなくなってきた。
あと何時間?何分?何秒で、私は死ぬの?
杏ちゃん、と叫ぶこはねの声。
そんな風に呼ばないでよ。未練が残っちゃうじゃん…、、大好き、、だよ…こはね……私は…貴方の相棒になれて幸せ…だった。
彰人も柄にもなく目を赤くして私を呼ぶ。
私はここに居るってのに笑…あぁ、でも、もう居なくなるのか、。彰人…沢山、助けてくれて、、本当にありがとう。貴方が居なきゃ、私は、、私達は伝説を越えれなかった。
冬弥?お願い。泣かないで。そんな顔をしないで。
いつか来るお別れが、少しだけ早かっただけだから。冬弥、やりたいこと、ちゃんと、、やってね。どんなときもチームのこと……考えてくれてて本当に嬉しかった…
全員…全員。一人でも欠けたら、私達は、、きっと上手く生きれなかった。
みんなみんな、私にとって、最高の相棒。最高のライバル。
きっと私は…幸せ過ぎたんだ。幸せ過ぎたから、神様が公平にするために私が選ばれたんだ。
ここまでの人生、嬉しかった事ばっかり。
この後、凪さんに会えると考えたら悪くない。
みんな……本当に、、ありがとう。
大好きだよ…これからも、、ずーっと、、、!
。
杏。が。
🥞
杏が息を引き取ってから数日が経った。
葬式では嫌な甘い匂いが漂った。
俺は杏を選びやがった神様を許さない。いや、許しちゃいけないんだ。、
ミク「彰人。来て。」
セカイに、呼ばれた。音楽アプリを起動し、セカイへ移動する。
カフェの中では杏を除いた全員が1つの封筒を囲って座っていた。冬弥とKAITOさんの隙間に座ると、MEIKOさんが話し始めた。
メイ「杏ちゃんが最期に遺した手紙よ。3人宛ての。」
こはねが封筒を受けとり、開封すると1枚の便箋が入っていた。
―――――――――
こはね、彰人、冬弥へ。
手が動く元気な内に、手紙を残そうと思います。
私は夢花病にかかって、とっても痛い思いを沢山してるけれど、みんなが居てくれるから辛くない。改めて伝えさせて。ありがとう。
こはね。
貴方に出逢えて私の人生は彩り豊かに成りました。これからも想いは変わりません。大好きな相棒。本当に、とても幸せでした。これからも頑張ってね!こはねだから心配はしてないけど…幸せになってね。信じてる、最高で大切で、素敵な私の相棒へ。
彰人。
何度もぶつかって、喧嘩したね。私が一方的に怒っちゃったこともあるよね。本当にごめん。私も彰人も、いいチームにしたくて…だからこそ、ぶつかって……でも、私はそんな毎日が結構楽しかったよ。彰人は自覚して無い。彰人は才能だらけ!!だから、冬弥とこはねを、よろしくね。人生謳歌して、よぼよぼになったら幸せな顔して会いに来なさい!これは約束!破ったら許さないから!
冬弥。
冬弥がチームのために変わろうとしてくれて、本当に嬉しかったよ。こんな形でお別れになっちゃってごめんね。これからも2人を支えて欲しい。それで、やりたい事をして幸せに暮らしてね。私の相棒と、ちょっぴり意地っ張りな冬弥の相棒。2人が背負い過ぎないよう、見ててあげて欲しいな。私もしっかり見守ってるね。こんな私達に付いてきてくれて、ありがとう。
―――――――――
レン「…あと、、これだよね。」
リン「何……?これ。」
ルカ「ボイスレコーダーね。伝説を超えた後、手紙を書けなくなってしまったから音声で残した追記よ。」
カイ「…本当に、最期の1つだね。覚悟はいい?」
メイ「……行くわよ。」
『撮れてる…?さっき1回撮ったんだけど撮れてなかったみたい…笑。同じセリフ言うのなんか嫌だなぁ〜!』
『私、あの時4人で組もうって提案してよかった!皆の歌が好き。大好き。こんな私だけど、最期までみんなと歌うことが出来て幸せだった!本当に…本当に』
『みんな、だーいすき!!
ありがとうございましたっ!』
コメント
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なんか凄い医者達も日本初の夢花病患者も既視感あるな… 小説書くの凄い上手いのに書くストーリーの方向性間違えてるよ君ハピエン書こうよ 学園シリーズ待ってるね☆