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共に生活してみて、今まで気づかなかったことや知らなかったことが意外とあった。散々一緒にいたのだが、生活するとなると新しい発見があるらしい。それぞれの癖や習慣など。
例えば、
「ジヨンっ」
ローテーブルの足元を指さしながらキッと睨む。彼は途端にしまった、という顔をした。
「また雑誌出しっぱなしにしてるだろっ」
「あーごめんまたやってた…つい癖で…」
ジヨンは基本的にはどちらかといえば几帳面で使ったものはしっかり元に戻すし整理整頓もできているのだが、なぜか雑誌や本、漫画に関しては読みかけのまま近くに置く。そして新しいものを読み始めたかと思えば途中でやめ、その上に積み上げていくのだ。
「邪魔だし意味わかんないからやめろって言ったよな」
「あ、あとで読もうと思って…」
「そう言って読み始めたことあるか?何冊も積んで数日放置するだろっ」
「わ〜ごめんてヒョン〜…怒らないでよ〜」
そう言って毎回そそくさと片付ける姿にため息しかでない。
あとは、
「ジヨン、この前の話だけど…」
そこで言葉を止める。ジヨンは真剣な眼差しでペンを持った手で頬杖をつきながらどこか空中を見つめていた。彼は歌手になるため誰よりも歌とダンスのレッスンに真面目だ。それに加えてこういった歌を歌いたいという思いが強い。だから空いた時間に歌詞を書いていた。
そのときは普段のふにゃふにゃした雰囲気は消え、まるで別人のように真剣な眼差しになる。集中力が高すぎて周りの音が一切聞こえなくなるほど。そのときは話しかけても返事がない。無視してるのではなく、聞こえなくなってしまうのだ。
(……こういう真剣な顔、嫌いじゃないな…)
最初は無視されてるのかと思っていたが、慣れてしまえば逆に尊敬しかない。こういうときは俺も黙って見守る、というか最近は彼の表情を観察するようにしていた。どこか見ているようでなにも見えていないようなその瞳が割と好きだったりする。
「〜〜」
ふとその口がなにかを刻むように動いたあと、徐にペンが紙の上を走った。いつもそうだ、なにかいい歌詞が唐突に浮かんでそれを文字におこしていくような。彼も俺もラップが好きで、普段からレゲエやヒップホップを好む。その影響かジヨンのリリックには独特なものがある気がした。前にちらっと盗み見したときに感動したのを覚えてる。
俺は隣に座って、ジヨンが自分の世界から戻ってくるのを静かに待った。いつもなにかしら2人で話してるからなんだか静かで、でもこの空間が心地いい。
「…………あ、ごめん。ヒョンなにか言った?」
どうやら戻ってきたらしい。
「いや?大したことじゃない」
ジヨンの書いた歌詞を見ながら答える。俺の視線に気づいたのか、彼がサッと紙を隠した。
「なんで隠すんだよ」
「い、いや、だって恥ずかしいし…見ないでよ」
そういってわたわたと恥ずかしそうにする彼に笑った。さっきまでの真剣な表情が嘘のように、焦るその顔が面白い。
「恥ずかしいことないだろ、見せろよ」
「ちょ、やめてよっ」
「おら、手どけろって」
「やーめーてー!」
手を伸ばした俺のがら空きの横腹をジヨンが擽る。負けじと俺も彼の横腹を狙い始め、いつのまにか擽り合戦に変わっていた。だいたいこの流れになる。
他にも、
「チャーハン食べたくない?」
「……」
「ねぇ、チャーハン食べたくない?」
「だーもう、うるさいな」
唐突に、ジヨンが騒ぎ出す。彼は料理に関してまるで知識がない。のに、こうやって突然「これを食べたい」と言い出す。寮には食堂があるので基本的にそこで食べたり、どこかに食べに行ったり、家族が差し入れしてきたりするのだが、ジヨンはたまーに俺に作ってくれと言う。一度言い出すと止まらない、俺が頷くまで。こういうところは頑固なんだよなあ。俺も簡単なものしか作れないが。
「わかったから」
「やったーー!」
というかチャーハンなんて簡単だろお前がやれよ、と言いたいところだが彼はめんどくさいの一点張りで作らないので、俺はそのやり取りを続ける方がめんどくさくて結局作るのだ。
「ほらよ」
「わーーい!美味しそう!いい匂い〜」
綺麗に片付けられたローテーブルに皿を置くと、ジヨンは大袈裟すぎじゃないか?というくらい喜ぶ。俺が作ってる間に俺用のスプーンや水がちゃんと用意されていて、そういった細かい部分にまめで気が利くのは毎度感心していた。
「美味しくなくても文句言うなよ?」
「美味しくないわけないじゃん!いただきまーす!」
スプーンに山盛りに盛ったチャーハンがジヨンの口の中に綺麗に入っていく。ガサツそうに見えて食べ方は綺麗。
「んー!うまぁ〜」
彼が声を出してそう言う。毎回美味しい美味しいと言いながら食べる姿を見るのは純粋に嬉しい。
「簡単にしか作ってないけどな」
「それでも充分だよ、ヒョンが作ってくれるだけで嬉しいし美味しい。いつもありがとうね?」
「おー」
「あーヒョンの手料理これからもずっと食べたいな〜」
「っ、」
思わずむせそうになって慌てて水を飲んだ。こいつはなにも考えず言ってるのだろうが、そういったことがどれだけ人の心を掴むかわかってない。天然人たらし。なんか顔が熱い。
「……大袈裟すぎ」
ジヨンはいつのまにかペロリと平らげていた。俺はなんだか喉が乾いて、グラスの水を一気に飲む。その空になったグラスをジヨンはさり気なく掴んで立ち上がった。そして新しく水の注いだそれをゆっくりと置く。
「………………ありがとう」
「いーえ」
こういうところも、まめなんだよなあ。
コメント
3件
あーーもうまた天才的な連載を始めてしまいましたねたぷつむさん!!!!🤦🏻♀️🤦🏻♀️この恋愛初心者感満載のかんわいい2人がどうやって最初の話に繋がるのかめっっっちゃ気になりますね、!!🤭💭