テラーノベル
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世界は日に日に悪くなっている気がする。
あなたがいなくなってから少しして、オランダがドイツ軍に占領された、という知らせが入ってきたのだ。
ラジオのガサついた音がここまで怖かったことは今までに無かった。
あの時無理にでも引き留めていれば良かった、と今更にでも思う。
あの日と同じ位置に立ち尽くして、わたしはじっとドアを見つめていた。
今までも毎日のように会っていた、という訳では無いけれど、必ず帰ってきてくれた。
ヨーロッパと遠く離れたここだから動けないのが悔しくてたまらない。無事に帰ってくるのを祈るしかない。
金属の取手に触れて、回す。やっぱりやめる。いけない。余計なことをすればここまで戦禍が及びかねない。
国の化身であるわたしのエゴで、ここを、国民を危険に晒すわけにはいかない。
わたしは玄関先にしゃがみ込んで、静かに目を閉じた。あと何日、何時間待てばいいのかな。
結局今日も何もせずに1日が終わったことに若干の後悔を覚えながら、ふらつく足で階段を登る。
寝室はやっぱり静まり返っていた。ベッドに張られた蚊帳の網目が5月の月明かりに照らされて、床に影を落としている。
なかば倒れ込むみたいにして、枕に顔を埋めた。
開け放った窓から夜気が入り込んで、白いレースのカーテンを揺らす。
なかなか寝付けずに布団の中でもそもそやりながら、わたしはやっぱりあなたのことを考えていた。
誰か賢いものに今のあなたの状況を詳らかに説明してほしかった。
情報源はせいぜい居間のラジオくらいしかなかった。見えないものは想像するしかない。
東南アジアの海外領土の方に亡命する人もいること。つまり、本土はもう既にぼろぼろになっていること。
あの後いろいろと調べて、カリブ海の兄弟たちとも話し合った。また会えるのに、船着場で別れるのが悲しかった。
一度大きな行ってきますを知ってしまえば、ちょっとのお別れでも寂しくなる。
夕飯も食べてないのに、喉の奥に何かつっかかるものがあって、視界がじわりと滲んだ。
コメント
3件
🇳🇱君が占領された絶望の中、国の化市としての責任に葛藤し、ぼろぼろの本土を想って涙を流す🇦🇼君の姿に胸が締め付けられました…ッッ!!!!!!!!😭😭✨✨✨ 歴史のシリアスさと、切なすぎる心理描写の圧倒的な筆力に一気に引き込まれました!!!!!!!!😭😭💕💕💕 めちゃくちゃ本当に素晴らしいお話で…感動中です!!!!!!!!💓✨
ただいま窓辺唄 #2、読みました。 戦時下の不安と、待つだけの無力感がじんわり沁みましたね…。「あの日と同じ位置に立ち尽くして」って描写、何度も同じ場所で同じ後悔を繰り返す感じが刺さります。蚊帳の影やカーテンの揺れなど、静かな描写が逆に心のざわつきを引き立ててて、そこがすごく好きです。窓子さんの書く「国の化身」という設定、重いけど優しい目線が本当に素敵。続きが気になります…!
えんか!