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目を覚ますと、先程とは違う部屋にいた。
外はいつの間にか雨が降り始めているようで、絶えず雨音が響いていた。
手足は今座らされている椅子に縄で固く固定されていて、外れる気配はない。
「やっと起きた?」
ビクッとして反射的に声のするほうを向いた。
そこには、先程の男と………死体があった。
「刑事さんもよく知っての通り、僕は殺人鬼だ。」
「それが事実だってことは、この状況を見れば分かるよね?」
殺人鬼は視線を後ろに移して、手でその死体を指すようにした。
「それで…殺人をしてる理由から話そうかな。」
「僕には、5年前まで母さんが居たんだ。」
「さぁ、ここで刑事さんに問題です!僕の母さんはなぜいなくなったのでしょう!」
これまで明るかった声色がさらに明るくなった。
「…そんなこと、俺が知ってるわけないだろうが。」
自然と声が低くなり、動かない腕の先でギュッと拳を作った。
「…本当に?」
殺人鬼は疑うような目で、小さく言った。
「本当に君、知らないの?」
なぜ2回目の確認をしたのか、俺には分からなかった。
正直に言う、以外の選択肢がないことはわかっていたから、ありのままを伝えた。
「…なんのことだか。」
「……そう。」
心做しか、雨の音が強くなった気がした。
「教えたところでもう思い出すなんてことはないと思うけど、教えてあげる。」
「僕の母さんは、君が殺したんだ。」
ガツンと頭を殴られた気がした。
…いや、本当に殴られていた。
言っている意味がわからなかった。
今、自分が殴られた意味も分からなかった。
「5年前、どうせ君は分からないだろうけど。」
「僕の母さんはあんたに殺されたんだ。」
「5年前のあの日…」
殺人鬼は少し俯いて、静かに話し始めた。
「現場はあまりにも無惨な光景だった。
人が何人も死んでいて、確か僕はクローゼットからそれを見てた。
その全ての人を母さんが殺した。
でもそれは正しい行いだった。
なぜなら、苦しんでいる人を…死を望んでいる人を救っていたからだ。
僕は、母さんにこのことを教えられていたから、今、人を殺してる。
それが、僕が殺人をやってる理由。
話を戻すね。
それからしばらくして、刑事さん…つまり、君が入ってきたんだ。
何を言ってるのかは聞こえなかったけど、何か言い合っているみたいだった。
それで、その後…その後、あんたが僕の母さんを殺したんだ。
別に怒ってるわけじゃなくて…。
僕はもっとこの事件のことを知りたいだけなんだ。
最高に面白い事件だった…。
君はどんな事を考えて母さんを殺したんだろう、誰がこの事件のことを隠したのだろう。
それをずっと知りたかった!
それからしばらく、君がこの町に流されたという情報が手に入った。
なんて運がいいんだろうと思ったね。
はぁ…だけど、期待外れだ。
君は何も覚えてなかった。
本当は君の口から全て話して欲しかったけど、仕方ないから会社のデータをちょっと探すことにするよ。」
5年前、俺はそんなことをしたのか?
本当に?
…ずっとその事件は、俺は何の関わりもないと思っていたのに?
俺がぐるぐると考えを巡らす中、男は再び話し出した。
「ということで、君には『壊れて』もらいます!」
「残念ながら僕は君らを止めることの出来る素晴らしい装置を手に入れられなかったからね!」
再び殴られ、バチッと火花が飛んだ。
意識がなくなり、縛られたままガクっと項垂れた。