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「美味しかった。ごちそうさま」
「いえ、簡単なものしか作れなくて」
恐縮して言う私に、
「人を思って作る料理は、何でも美味しいものだよ。……愛情も詰まってるしね」
彼の優しい言葉が返る。
「はい、愛情はそれはもういっぱい、詰め込みました!」
右手を拳に握り、意気込んで答えると、
「うん、目いっぱい感じた……。だから、お礼のキスをさせてくれ」
頬に手が当てがわれ、テーブル越しにチュッと口づけられた。
「えへへ、手料理のお礼にキスなんて、もらったことなくて……」
にやけそうになる顔を隠そうと、食べ終えたお皿を手に、そそくさとキッチンに立つと、
「ああ、僕が洗うよ。ごちそうになったしね」
彼がそう言って、シンクの水栓を開いた。
受け取ったお皿を拭き、出した棚へしまいながら、チーフはきっとステキなダンナさんになるんだろうなぁーと思うと、自然と頬がふにゃりと緩んできちゃうみたいだった。
「デザートは、どうしようか?」
「おもたせのケーキは、まだ入らないかもしれないです。ちょっとお腹がパンパンになっちゃったので」
「そうか」と、彼が頷いて、「だったら、白ワインを飲むか? 冷やしておいたのがあるから」そう話して、冷蔵庫へ取りに行った。
「でもまだ、外が明るくて……」明るい内からお酒を飲むことに、なんとなくだけれど気が引ける。
「飲むのは夜からと決まっているわけでもないし、逆にいつもは夜に飲む酒を昼から飲むと、退廃的な気分も味わえそうだろう?」
ボトルに水滴をまとったよく冷えたワインを、二つのグラスとともにテーブルに置くと、チーフが茶目っ気たっぷりに笑って話した。
「退廃的な……それもそうかもですね」
クスッと笑って返すと、注がれたワインでコーヒーに続いて、二人で二度目の乾杯をした──。