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「凛」
甘い声で目が覚める。
今までじゃ絶対に聞けなかった恋愛的な感情を含んだ声だ。
まだ眠たい眼を擦りながら、その人の名前を呼ぶ。
「おはよ、兄ちゃん」
「おはよう」
抱きつくと、兄ちゃんの温かい体温が肌を通じて伝わってきた。あ、もっかい寝ちゃいそう。
うとうとと、現実と夢の境界を彷徨っていると、「起きろ」と兄ちゃんが声をかけた。
「んぅ、」
「凛の好きな鯛茶漬けあるぞ」
「おきる⋯」
正直このまま眠ってしまいたかったが、鯛茶漬けがあるなら起きるしかない。まだ眠たくて目が開かないから、兄ちゃんの服の裾を軽く引っ張って、連れて行ってもらった。
席について、美味しそう。と言葉を零す。
ほくほくと湯気を立てている鯛茶漬け。
兄ちゃんと、手を合わせてそれを口へ運ぶ。
「美味いか?」
「うん。美味しい」
一口食べると、高級な鯛の味が口の中を独占する。そこにアクセントのように入ってくる濃いお茶。
白米も、鯛に負けない食感を醸し出していて、多分高いお米使ってるんだろうな。
「凛、米ついてる」
「ほぇ、」
そう呟いた兄ちゃんが、俺の口の横に付いていたらしいお米をとってくれた。
急に兄ちゃんの整った顔が目の前に来て、びっくりしてカシャンとお箸が机に落ちる。思わず阿呆らしい声が出てしまって、頬が赤くなった。そんな俺を見て兄ちゃんは楽しそうに口角を上げている。
性格悪い⋯!!
「兄ちゃんのばか」
「はいはい。ちゃんと食べろよ」
俺と兄ちゃんは、和解してから一緒に住むようになった。
俺の自己肯定感が爆下がりしていたこともあって、兄ちゃんはお互いのオフが重なると『凛甘やかしデー』を作る。
自己肯定感は今は人並みに戻ったし、兄ちゃんに甘やかされると、ドキドキしすぎて心臓が爆発しそうになるから正直もう終わって欲しい。
でも、兄ちゃんは終わらせる気はないようだ。
「凛、次はどうする?」
「映画見たい」
朝ご飯を食べたら、兄ちゃんと一緒に好きなことをする。大体は映画見たり、ホラーゲームをしたり。
兄ちゃんは意外と怖いものが苦手だから、偶にジャンプスケアでビクッと体を震わせるのが可愛い。その後、俺の前ではかっこいい兄でいたいのか、何も無かったかのように過ごしているのも可愛い。言ったら怒られるから、絶対言わないけど。
「凛、来い」
映画を見る時は、兄ちゃんの隣でソファに座る。
同棲を始めたころ、兄ちゃんに頭撫でられるの好き。と呟いたところ、毎回頭を撫でられながら映画を見るようになった。
兄ちゃん、心を許した人にはとことん甘いから。
映画を見たら、その後は一緒にトレーニングやストレッチをしたり。喧嘩中なら絶対に考えられない雰囲気で兄ちゃんと一緒に過ごせた。
一緒にお昼ご飯を食べたり、海を見に行ったり。晩ご飯を一緒に作って、お風呂に2人で浸かる。
兄ちゃんは一日中凄く甘やかしてくれるけど、俺は一日を終えてベッドで一緒に眠る時が好きだった。
「凛、おやすみ」
「おやすみなさい、兄ちゃん」
雪の日の前は、当たり前だったこと。喧嘩してからは、当たり前じゃなくなったこと。
兄ちゃんと『おやすみ』って話して、兄ちゃんに抱きついて、そのまま寝るのが俺は1番好きだ。
「兄ちゃん、大好き」
「ん。凛、愛してる」
兄ちゃんが俺の瞼に触れるだけのキスを落とすと、魔法にかかったようにすぐに眠くなる。
兄ちゃんの温もりを肌で感じながら、俺は眠りについた。
終わり。
rnちゃん、健やかにサッカーするんだよ。
seちゃん、ちゃんとrnちゃんを甘やかすんだよ。