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「大臣、こちらがワクチン製造機になります」

薄暗く無機質な研究室を案内する、黒いもみあげの男。その横には先程「大臣」と呼ばれた男と、その秘書や警備と思われる男たちが並んでいた。

「これで我が国はワクチンを確保できるのかね」

大臣は紹介された「ワクチン製造機」を見つめながら、黒いもみあげの男に問いかけた。

「はいもちろんでございます。これよりも適した製造機はございません。

日に百万本分のワクチンを量産可能でございます」

この返事を聞いた大臣と呼ばれた男は満足げにうなずくと

「よしわかった。しかし、どういう仕組みなのだね」

黒いもみあげの男は「ワクチン製造機」を眺めニヤリとする。

そこには、白いもみあげの老人が全裸になり椅子に座らされていた。

その椅子の背もたれ、老人の脇の下あたりからは何やらコードが伸ばされ、老人の乳首に繋がっていた。

コードの先は細かく振動し、老人に刺激を与えているようだ。

「でりゅ!でりゅよ!」

そう叫ぶ老人の陰茎は、彼の前に座るもうひとりの中年の男の肩のあたりにプスリと刺さっていた。

陰茎は脈動し、老人の精液が中年の腕に流し込まれる。

「あああああああああああああああああああ」

中年は、絶叫を上げている。

「なに簡単なことですよ、ワクチンを人体を用いて培養を行っているだけです」

黒いもみあげの男は大臣と呼ばれた男に対して説明を行う。

「あの白いもみあげの老人にはすでにワクチンを一箱、およそ六百人分打っています。

彼の体はワクチンでいっぱいな訳です。

血液はおろかその精液もワクチンになっているのですよ」

「なるほど、実に合理的かつ低廉な手法だ。

しかし、なぜ、その精液をまた別の男に打っているのだね」

大臣と呼ばれた男は続けて尋ねる。

「あの中年は彼の息子なのです。

白いもみあげの精液はまだ、元のワクチンと同様で、2回摂取の必要があります。

しかし、ウイルスの撲滅のためにはこの回数は少ないほうがよい。

どうやって一回接種で済むまでその効き目を上げるかというと、それをその中年を使って行うわけです。

老人の精液を、陰茎で直接筋肉注射することで、中年の体内に取り込み、さらに強力なワクチンへと自己培養が可能となるわけです」

黒いもみあげの男が説明すると大臣と呼ばれた男はふむふむとうなずきながら新たな疑問を口にする。


「つまりこれから更にあの中年の精液を採取して国民に接種するというわけだな。

しかし、それだと量が足りないのではないか。射精の量などたかが知れているぞ」

男は黒いもみあげをいじりながら答える。

「精液はあくまでも培養のための道具。ワクチン自体はこのように量産するのです」

そういうと男は、中年の口の先にろうとのようなものを装着すると、横にある機械のスイッチを押す。

すると、ろうとを通して白い液体が中年の口に流し込まれていく。

「この白い液体は牛乳です。まあ、見ていてください」

しばらくすると、中年は小刻みに震え顔面蒼白になり絶叫とともに下腹部から下痢便を噴出した。

ニラやコーンの浮いた下痢便の一部を試験管ですくい上げると、大臣と呼ばれた男に見せる。

「これがワクチンとなるわけです。

乳首刺激マシーンによって老人はワクチンを射精し続け、それが陰茎筋肉注射によって中年の体に流しこまれ続ける。

精液ワクチンは中年の体の中で強化されるわけですが、牛乳をひたすら飲ませることで下痢便ワクチンという形で排出されるわけです。

これで24時間、大量に強化型精液・下痢便ワクチンを量産できるというわけです」

男が説明している間にも老人の乳首は刺激されワクチン射精は止まらず絶えず中年に流しこまれ、中年も下痢便を噴出し続けている。

「従来型ワクチンの一人あたり注射量は希釈する生理食塩水も含めて0.3mlでした。

一日300リットルの牛乳を飲ませることで、一日あたり百万人分のワクチンが量産できるわけです。

しかも希釈の手間もいりません。また、たまにニラやコーンを筋肉注射で接種できるというハプニングも体験できるのです」

黒いもみあげの男の話を聞いて、大臣と呼ばれた男は満足げな様子である。

「実に素晴らしい。このまま続けてくれ。すぐに承認を行い、全国に届けることにしよう」

「ありがとうございます。鋭意努力いたします」

二人はそんな会話を交わしながら研究室を出ていく。

誰もいなくなった薄暗い部屋では、老人が震え中年が絶叫するばかりである。

しかし、彼らのおかげで、我々はこの人類の危機を乗り越えることができるのである。

(終わり)

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