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『デート』
吉田:うわぁ、正月だし餅とかありですね…って、俺なんかついてます?
佐野:…え?
吉田:俺のことジロジロ見てるから
佐野:あ、いや、なんでもないよ。仁人のほっぺと餅どっちが柔らかいかなって
吉田:は?馬鹿なの?
佐野:てか、大晦日だけじゃなくて正月も一緒にいてくれるの?
吉田:…なんか予定ありました、?
佐野:なんも無い!だからそんなこと思ってたなんて…嬉しいなぁ
吉田:、っ、次、蕎麦見に行きましょ?!
……見てしまう。てか、見る以外の選択肢は無い。俺のコートを着て、俺にピッタリくっついて、なのに平然としてるその顔!無自覚に俺の心を揺さぶるだけ揺さぶってくる。はぁ、俺はどうしたらいいんだよぉ
吉田:やっぱ人多いですね
佐野:だね……え、大丈夫?苦しくない?
吉田:平気です。佐野さんいるし
俺の胸の中でズキュンと鳴り響く音が聞こえた
佐野:それは…わざと言ってる?
吉田:はい?
佐野:いや、!なんでもない!!
吉田:ねぇ、さっきから何でもない何でもないって…なんか隠してるんですか?
佐野:違うわ!どれもこれも仁人のせい!
吉田:はぁ?
ダメだ…なんか、仁人のことをそういう目で見てしまう。いや、見てもいいんだけどさ。なんというか、俺が一方的に好きな気がしてしまう。これが怖いから、過去付き合った人達の時は褒められたことを元にして虚像の俺を作り上げていた。けど、仁人の場合は俺に求めてるのは匂いなわけで。だから、仁人が求める「佐野さん」になりたいのに、それがなんなのか全く分からない
こんな悶々と悩む俺に気づいていないのか、仁人は手馴れた手つきでカゴの中に材料を入れていく
吉田:んー、まぁ、こんなもんかな
佐野:凄いね。よく自炊するの?
吉田:まぁ、しますよ。人がいない時間に好きなもん買いに行って、適当に作るだけなんですけどね
佐野:てことは、今日は仁人の手料理が食べれるってこと?
吉田:そゆこと
佐野:え!まじ?うわ、めっちゃ楽しみだわ。俺にもなんか手伝わせてよ
吉田:…やっと笑った
佐野:へっ、?
顔の半分以上がマスクで覆われているから、表情があまり分からないけど、前髪がかかっているパッチリとした目が細まる
吉田:ずっと心ここに在らず、みたいな顔してたから心配だったんですよ?
佐野:え、まじ?なんかごめん
吉田:ま、いいや。早く買って帰えろ?
吉田:…美味しいですか?
佐野:まじ、美味すぎる…すげぇな、自炊できるの
吉田:佐野さんも手伝ってくれたじゃん
佐野:俺は指示に従うことしか出来ないから笑
佐野さんは口いっぱいに頬張って食べるタイプなんだ……てか、会話は普通に出来ているけどやっぱり、なんか今日の佐野さんは変だ。目があんま合わないし、モゾモゾしてて、もしかして照れてるのか?
吉田:佐野さん
佐野:モグモグ、ん?
吉田:なんで照れてんの?
佐野:ブホッ!!、、ゴホッ、、
吉田:え、?大丈夫!?
佐野:だ、大丈夫……なんで照れてるかだっけ
吉田:ん
佐野さんは箸を置いて、腕を組み、ぽつりぽつりと話し始めた
佐野:…今まで色んな子と付き合ってきた。その時は求められてる人物像があったからそこ目指してやっていけた。けど、仁人が求めるのは俺の匂いでしょ、?だから、どう接すればいいのかが、分からないというか
はぁ、なんだ…そんな悩みか。と言いそうになったが、佐野さんはそれに苦しめられてきたことを思い出して、少し哀れな気持ちになる
吉田:はぁ、よかった…嫌われたかと
佐野:嫌いになるわけないじゃん!!
俺がちゃんと伝えないといけないな。俺も箸を置いて、隣に座る佐野さんの方に体を向き直す。俺の行動に気付いたのか、何故か佐野さんは正座をして固く拳を握ってじっと俺の言葉を待っている。いやいや、説教する訳じゃねぇんだから、そんな固くならなくても…と思ったけど、そんな真剣な所もやっぱ佐野さんらしいわ
吉田:俺は、最初こそ佐野さんの匂いに惹かれたけど、今は、俺が抱きしめると嬉しそうにしてたり、悩むとそうやって挙動不審になったり……そのままの佐野さんに惹かれてます。だから、俺が求めてるのは、佐野さんの匂いだけじゃないんで……ってえぇ!?なんで泣いてんの!?
匂い、だけじゃなくて、俺のことも本当に求めてくれてたんだ。俺の、思い込みじゃなかったんだ。嬉しさと今まで言われてきた取り繕った言葉と俺の自信の無さと……色々な感情が俺の中を渦巻く。気が付けば涙が出ていて、仁人は心配そうに俺の顔を覗き込んで涙を拭っている。今までは俺が拭う側だったのに、情けないな
吉田:ふっ
佐野:…え、今っ、笑った?
吉田:あ、え、すみません…弱々しい佐野さん見たことないんで、なんか、ちゃんと素の姿を見せてくれたのが嬉しくて笑
そっか。仁人はどんな姿でも、俺として認めてくれるんだね
吉田:まぁ、泣けるだけ泣いたらいいと思いますよ、っ!?
無意識だった。無意識に俺は、仁人のことを引き寄せて抱きしめていた
佐野:ごめん、、嫌だったら殴って
吉田:…初めてだ
佐野:え?
吉田:佐野さんが、俺の反応とか気にせずに抱きついたの、初めてです。今までは佐野さんの合図で俺からいってたでしょ?それはきっと、俺の気持ちを最優先にして、合図だけして待つっていう佐野さんなりの優しさですよね
佐野:…そうかもね、あ、いきなり抱きしめちゃってごめ
離れようとしたが、仁人がギュッと俺を包み込む。優しくて、温かい
吉田:確かに、外とか匂いキツイ時はその方が有難いですけど!今は、佐野さんの家で、佐野さんの匂いしかない、から……そうやって佐野さんからハグしてくれるの、嬉しい、から
耳元で聴こえる声は徐々に小さくなり、最後は独り言並だったけど、俺にははっきり聞こえた。どんな顔をしてるのか見たくて、肩に手をおいてゆっくり離れる。前髪のすき間から覗く眉は下がり、目は泳いでいて、頬はほんのり赤く染っていて、
佐野:…可愛い
吉田:は?!
佐野:やっぱ、好きだわ
溢れるように出てしまった言葉。あ、そういや何気に初めて伝えた、かも?そう思い仁人の表情を伺うと、こぼれ落ちそうなほど丸い目でこっちを見つめていたが、俺の言葉の意味を理解したのか、顔がゆでダコ並みに真っ赤になっていく。でも、口をモゴモゴと動かし、消え入りそうな声で、だけどちゃんと言ってくれた
吉田:俺も、同じ気持ち、だよ……
本当に愛おしい。この瞬間は流石に動画に取っておきたかった 、いや、目に焼き付けたから良かったのか……悩むことに必死で返事をしない俺に気まずさを覚えたのか、話題を変えるみたいに仁人は蕎麦を勢いよく啜った
吉田:っ、恥ずかし!!蕎麦っ!伸びるから早く食べて?!
佐野:えーもう少し余韻に浸らせてよ
吉田:…佐野さんの分も食べますよ?
佐野:それは困る!
吉田:じゃあ早く食べて
佐野:…ねぇ、もう1回言ってもらえたりする?動画撮りたくて…
吉田:絶対に、嫌!!!
『数年後』
佐野:もしもし?
吉田:、勇斗、?
佐野:迎え行こっか
吉田:っ、うん、今、ガード下
人気のないガード下。仁人から苦しいという連絡が来た時は大体そこにうずくまってる。学生の時よりは落ち着いてきたが、それでもこうやって、仕事のストレスと人混みの酷さが重なった日は電話がくるんだけど予想通りだったな。確かに最近寝不足そうだったし、よりによって週末だし
佐野:仁人、!ごめん、遅くなって
久々に辛そう…かと思いきや「遅い」、なんて言い返す余力があるくらいだからマシな方か。ちょっとからかいたくなって俺も負けじと言い返すと、弱々しく謝られた。ありゃ、これはかなり弱ってんな。でもこんな素直な姿中々見れないから可愛いな、なんて呑気に思っていると堂々たる嫌い宣言。それはヤバい。全身全霊で謝罪しなければ、、
吉田:もぉ、、分かったから、っ、、早く
仁人は俺の挙動に呆れながらも両手を広げて待っている。上目遣いで、涙目のくせに、早くしろ、と言わんばかりの目。その熱い眼差しを合図に、俺はしゃがんで仁人を抱きしめる。鎖骨あたりに顔を埋めて、出来るだけ自力で呼吸を抑えたいのか腕をつねっているのが見えた。前まではこんなことしなかったのに、社会人になってからは俺に頼りすぎるのは良くないと思ったらしく、そのような行為をするようになった。別に気にしなくていいのに、てか今は俺いるから頼ってよ!?
佐野:またアザになっちゃうよ、?力入れたいなら俺のこと抱きしめて……マスク外すよ?
その腕をゆっくり離し、俺の背中に回させる。まるで俺のことを探すみたいに必死にしがみつくのが服越しに伝わる
吉田:はぁ、、っ、んぐ、っ、
直接匂いを嗅げるようにマスクを外すと、くぐもっていた呼吸音がより鮮明に聞こえる。とりあえず落ち着くまでは、替えのマスクを準備しつつ頭を撫でてこの姿を堪能する。苦しんでいる仁人には申し訳ないけど、何年経ってもこの求められている感は堪らない
吉田:ふぅ、、、っ、もう、大丈夫
佐野:はいマスク。落ち着くの早くなったね
吉田:慣れだよ…ごめん、いきなり呼んで、
佐野:想定内だから大丈夫。立てる?家帰ろ?
その日の夜
吉田:勇斗、今日隣で寝てもいいっすか
佐野:え!?まさかの仁人からお誘い!?
吉田:ちげぇーわ!!今日は、その、安心したい気分なの!!
恥ずかしいのか大声でまくし立てながらズカズカと布団に潜り込んでくる。入り込んだはいいものの、緊張してなのか固まる癖は学生の時から変わらない。てか今は広めのベットだからマシだけど、学生時代はあの狭いベットでよく2人寝れたな、なんて思い出す
佐野:ふーん…毎日一緒に寝てもいいんだよ?
吉田:貴方、暇さえあれば手出すから油断ならないの。それにたまに隣で寝るのが良くない?
佐野:まぁ、そっか
俺が納得したのを見て安心したのか、仁人はふっと笑い反対側を向いた
佐野:ねぇ、せっかく隣なのになんでそっち向くの?
吉田:ん”ー今日は疲れたから、もう眠いの
佐野:ん?理由になってなくない?
吉田:…こんな疲れてると、どうせ無意識に匂い求めて近づいちゃうから、安心、してよ
…やっぱあざといというか、策略家というか。ただでさえ可愛いのにそんな可愛いこと言われたら襲いたくなるからやめて欲しいんだけど。いや、これは誘ってるのか?確かに明日お互い休みだし…そういうことか!?
吉田:も”う!!さっきから全部聞こえてんだけど!?俺は誘ってない!!
あ、なんか言葉に出てたっぽいわ。完全に反対方向向いちゃった
佐野:ごめん…
吉田:…んぅ、、ごめんっていいながら、バックハグしないで、
佐野:少しもの謝罪の気持ちです
吉田:……もぉ、、、分かったから、
仁人は俺の手を振りほどいてこっち側を向く。きっと俺の匂いに囲まれているということもあって、かなり眠気が襲っているのだろう。目がしょぼしょぼしてて、なんかほわほわしてる
吉田:…今日は、もう、眠いから、
佐野:うん…ごめんうるさくして…最近大変そうだったもんね、ゆっくり寝な、、っ!!??
柔らかい唇が俺の頬に触れた。優し過ぎて、触れてるような触れていないような、そんな感覚。突然のご褒美に時が止まる俺を無視して、仁人はふにゃりと笑った
吉田:……これで、我慢しろよ、、おやすみ
佐野:っ、、誘いたいのか誘いたくないのかどっちなんだよ、!?とりあえずこっち向いて寝て!じゃないと耐えれない!!
吉田:、ん、これで、いい?
佐野:いいよ。素晴らしいよ。はぁ、最高だわ……明日はゆっくり過ごそう
吉田:…ん
佐野:明日、なんかしたいことある?
吉田:あした、?
佐野:うん。明日
吉田:補充したい……かも、
佐野:今は違うの?
吉田:…もっと、してよ
佐野:分かった笑…俺も明日補充していい?
吉田:……いい、ょ、
相変わらずくすぐったいな
END
—————————————————『補充させて』はピュアピュアな話にしたかったのでセンシティブ無しで駆け抜けました
これも悪くない
それでは!
コメント
2件
あああ早速番外編ありがとうございました!!!!ysdさんはなんでこうも無自覚にsnさんを誘惑しますか!?!?最高可愛いです!!! そしてsnさんは何年経っても理性と闘ってて不憫可愛いです…これでこそsnjn…!
ありさん〜〜っ!!番外編も尊すぎてヤバいんですけど!!!😭💕💕 デート回の「俺のことも本当に求めてくれてたんだ」ってシーン、佐野さんの涙と一緒にこっちも泣いたわ…!仁人が素の佐野さんを受け止めるの、めっちゃエモいよ!!! 数年後パートも、社会人になっても変わらない距離感と、でも確かに深まった絆がにじみ出てて、もうずっとこの2人を見ていたい…!頬キスのくだりは声出た、まじで罪な男よ仁人くん…!