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早くここから出たい。

その一心で高校を卒業してファミリーレストランでアルバイトを始め、生活費を入れながら、必死でお金を貯めた。



いつか両親みたいな「定食屋」を持ちたいって夢を描きながら──



でも、料理の勉強をしたいのに、なぜかおばさんにキッチンを使わせてもらえず、それが苦痛で仕方なかった。



「灯り」でママさんに料理を教わりながら、いよいよ一人暮らしができる目処がたった時、もみじちゃんに泣くほど強く反対され、先延ばしになった。



それでも、もみじちゃんを説得し、踏ん切りをつけた時、詐欺にあって……

貯金していたかなりの額を盗られてしまい、自分の責任だとはいえ、どうしようもない喪失感に襲われ、しばらく立ち直れずにいた。



今は背負ってしまった借金をコツコツ銀行に返しながら、正社員になったファミリーレストランの仕事を一生懸命頑張っている。



みんなが笑顔になれるような美味しい料理が食べられる「定食屋」を開く――

気が遠くなるような夢だけど、それだけを心に決めて、何とか気持ちを前に向けていた。



「とにかく双葉のせいでこっちはかなりの負担がかかってるんだからね」



「……」



「お母さん、双葉ちゃん困ってるよ。もういいじゃない。お母さんは毎日パートで疲れてるんだよ。早く休んで」



もみじちゃんは優しい。いつも周りを大事にして、言葉をかけている。それにひきかえ、私は、感謝してると言いながら、家族を大切に思えない心の醜い人間なんだ。



「本当にこの家で頼りになるのはもみじだけ。お父さんはテレビ見てるか新聞読んでるか、本当に役に立たないし」



「俺だって仕事してるんだ。お前はグチグチ言い過ぎる」



今日、初めておじさんの声を聞いた。

珍しくボソッと反論したけど、それ以上は言わずにまた黙ってしまった。そんなおじさんのことを、2人はあまり良く思ってないみたいで、一家の大黒柱という威厳は……どこにも見当たらなかった。



食事が終わり、部屋に戻ってベッドに腰掛けた。

「はぁ……」と、勝手に深いため息が漏れ出す。



私は、変わらない日常に嫌気を感じながら、微妙な距離感を保って、おじさん、おばさん、そして、もみじちゃんと生活していた。

世界で1番幸せな私~イケメン御曹司の一途で情熱的な溺愛に包まれて~

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