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大きな声を出して奥へと入ってしまったジェシー。
時計の針の音の中で過去の自分を悔やむ。
靴も脱がず、ただ玄関で立ち尽くす。
すると部屋の奥から、ガシャンという大きな音が聞こえた。
それに、ジェシーの小さなうめき声も。
俺は急いで家に上がってジェシーのもとへ駆ける。
近づいてみると、床に広がる鮮血。
ジェシーの足首が痛々しく切れていた。
周りには、グチャグチャに割れた花瓶。
俺はそれらを踏まないように慎重にジェシーの顔を覗き込む。
ジェシーの目は潤んでいた。
それが痛さから来ているのか寂しさから来ているのかは、まだ俺にはわからなかった。
「落としちゃった?痛いよね?」
そう聞いてもジェシーは俯いたまま。
俺とジェシーの間に静寂が流れている間にも、ジェシーの足首からは血が流れ出ている。
俺は花瓶を踏まないように気をつけながら、少し濡らしたティッシュをジェシーに差し出した。
ジェシーは1度こちらを向いたものの、ティッシュは受け取らない。
「ジェシー?これ。血拭かないと。」
そう促しても、ジェシーが言うことを聞こうとはしない。
俺がだめなら…髙地。
俺はジェシーと仲が良く、よく分かっている髙地に連絡をした。
少しして髙地が家に着く頃には、床に広がる血はさらに増えていた。
ジェシーは痛みからか、呼吸が速くなっているように感じた。
「どうしたのジェシー、」
髙地がいつもの 優しい声でジェシーに声をかけると、ジェシーは何かが吹っ切れたように涙を流し出した。
『こ〜ち!寂しかったんだよ!…じゅりが..』
子供のように泣きながら髙地に訴えかれる様子は、今までに見たことがないものだった。
いつもなら抱き締めたくなるのに…
何故かなんとも思わなかった。
もう今までの恋心のようなものは、なくなってしまっていた。