テラーノベル
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気づいたら、俺は知らない場所に立っていた。
「……え、ここどこやねん。」
周りには草の匂い。夜の湿った風。
その真ん中に――巨大なサーカスのテントがひとつ。
赤と白のストライプ模様。
でも、色あせて少し古びてる。
それなのに、入口だけはぼんやり光ってて、
俺を呼び込んでいるみたいだった。
「いやいやいや。俺、サーカスなんて来る予定なかったよな!?
てかまず……帰り道どこ!? スマホどこ!?」
ポケットを探ってもスマホはない。
時計もない。
なんなら、帰る方向も分からない。
嫌な予感が背中を走る。
「……しゃーない。とりあえず、中入るか。」
怖いけど、このまま何もしないままなのはもっと怖い。
俺は光ってる入口に手を伸ばし――
ふわり、と。
テントの中から、誰かの笑い声が聞こえた。
「……え、今の絶対おったよな。誰かおったよな。」
中は暗くてよく見えないが、
奥のほうにステージらしきものが見える。
ぐっと息を呑んで、一歩踏み込む。
――その瞬間。
ぱんっ!
スポットライトが俺に向かって一斉に点灯した。
「まぶしっ!! 何これ!? 俺舞台立ってんの!?」
見渡すと、観客席は真っ暗で、誰もいない。
でも……どこからか“拍手の音”が聞こえた。
ぱち、ぱち、ぱち――
「いやいやいや!!
誰やねん拍手してんの!!
出てこいよ!!」
返事はない。
なのに拍手だけが続く。
そのとき。
ステージ上のカーテンが、ゆっくりと揺れた。
ほんとに微かに……誰かが奥へ隠れたみたいに。
「……おい、待てや。」
気づいたら、俺はそのカーテンへ歩いてた。
怖いのに、足が勝手に向かう。
カーテンをつかんで、勢いよく開く。
「ちょっと! 出て――」
言いかけた瞬間。
奥の通路が、まるで迷路みたいに伸びていた。
赤いカーペットがずっと先まで続いている。
そして床に、古い紙切れが一枚落ちていた。
拾い上げると、こんな文字が書かれている。
**《最初の謎を解け。
道化師は三つの嘘をつく。》**
「……はぁ!?
なんやねんこれ!!
俺、謎解きしに来たんちゃうで!?
そもそも“道化師”って誰やねん!!」
叫んでも返事はない。
ただ、奥の暗闇だけが、
俺をじっと見ているみたいに静かだった。
不安が喉にひっかかる。
でも――
「……行くしかないかぁ。」
紙を握りしめて、
俺はサーカスの“迷路”へと足を踏み出した。
コメント
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新作!今回も楽しそうなお話ですね笑連載頑張ってください