テラーノベル
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現代
緑目線
暗い夜空に咲き誇る花。
それを見上げる4人の横顔。
花火は嫌いだ。
あのときの音とよく似ているから。
ふいに、穏やかな瞳と視線が交わった。
……あのとき?
それっていつだっけ。
「……はいっおっけー!!」
夜空を切り裂いた監督の声。
重苦しい雰囲気が花火のように散ってゆく。
俺の心には大きなものを残して。
「いやー、長時間の撮影ありがとうね!お疲れ様!今回もめっちゃいいもの撮れたよ!」
「…なかむの台本だからだろ。」
「お?珍しく嬉しいこといってくれんじゃん。いい演技してくれるお前らのおかげだよ。」
「やっぱりなかむのストーリーすごいわ…一緒に作ってたときも思ってたけど演者側で改めて体感した…」
「まじ?ありがとw一人だけ大人びてる感じすっげぇ上手かったよ!」
「ねぇ僕はー?」
「もちろんめっちゃよかったよ!最初の嫌なやつムーブおもしろかったしw不穏な雰囲気だすの上手かった!」
「ほんと!?よかったー!」
火薬の香りが漂うなか、和気藹々とした雰囲気が5人を包む。
全て演技だ。
この物語は作られたものであり、現実でも、過去でも、前世でもない。ただ与えられた役を演じただけ。
彼らの未蓮は昇華したのに、俺の胸には穴が開いている。それが何かなんてわからないが、確かに足りない何かがある。
忘れてはいけない大切なものを忘れている。
「ありがとうね、なかむ。俺のわがまま聞いてくれて。」
「いいってそんなん。俺ら友達でしょ?」
「ふふっwそっか。」
「…でもさ、本当によかったの?またっ.」
「いいの。俺は…俺だけは忘れちゃダメだから。」
「っそう……」
監督と話しているところ悪いが、俺の兄を演じていたやつに近付く。いま言わなければ、もう二度と言えない気がした。
「なぁきんとき……少しだけいい?」
どうしたの、だなんて問いかけながら優しく勿忘草は揺れた。あのときみせた暗く濁り、後悔に苛まれた眼はしていなかった。
「ちょっとお願いなんだけど…」
「うん、なに?」
「……ハグ、したい。」
大きく開かれる眼。
それはすぐに細くなり、弓を描いた。
「っふwなに、そんなこと?」
「……ダメ?」
「…ううん、いいよ。”シャークん”おいで。」
身長を合わせるために履いた厚底で躓きながら彼の胸に飛び込んだ。
かなりの衝撃だっただろうが、よろけもせずに受け止めてくれた。
「っっ…ごめんっごめん……」
「…大丈夫、大丈夫だから。」
「なんかっわかんねぇ、けどっ…止まんないっ…」
「そう…好きなだけ泣いていいよ。」
こんなに泣いたのはきんときにはもう会えないんだと分かったとき以来だろうか。
違う。
引き離されるところなんて演じていない。
列車の中で目覚める前なんて演じていない。
じゃあこの記憶はなんだ?
彼の左手に右手を絡める。
胸に開いていた穴が塞がる。
頼むからそんな顔しないでくれ。
「最期がきんときでよかったよ。」
コメント
3件
素敵な話なのは伝わるのですが申し訳ありません自分の読解力が少なくて、😭ざっくりで構わないのでお話のご説明って可能ですかね、?💦