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応接室のドアが閉まった瞬間、私はようやく息をついた。佐野晶哉くん
佐野くんの履歴書を手に、面接が終わったばかりの部屋で、彼の姿を改めて見つめる。
黒髪を少し短く整え、スーツがピシッと決まっていて、以前の会社で見た彼より大人びて見える。
180cmの長身が、部屋の空気を少し圧倒している。
「佐野くん、本当にここに来るなんて……」
私は声を低くして言った。
面接は形式的なものだった。
彼の経歴は申し分なく、前の会社の営業成績やプロジェクトの実績を聞けば、誰が見ても即戦力だ。
末澤さんからの推薦状も添えられていた。
でも、私の心は面接の内容より、彼の存在そのものでいっぱいだった。
『先輩、俺の面接、どうだった?合格?』
佐野くんは、いつものワンコみたいな笑顔で尋ねてくる。
でも、瞳の奥にオオカミの鋭さがちらりと見える。
あの路地裏での約束から、数ヶ月。
メールのやり取りで彼の成長を感じていたけど、こうして顔を合わせてみると、胸がざわつく。
「もちろん、合格。明日から来てくれるの?」
『はい!先輩の隣で働けるなんて、夢みたいや』
彼は立ち上がって、私に近づく。
応接室は誰もいない。
軽く手を握られて、熱い視線に射抜かれる。
『これからは、毎日一緒にいられる。先輩、俺のこと、ちゃんと見ててな?』
私は頷くしかなかった。
新しい職場で、再び先輩と後輩の関係。
でも、それはただの表向き。
心の中では、すでに彼に捕らわれている。
面接の後、人事部に結果を報告して、私はデスクに戻った。
佐野くんは明日から入社決定。
胸の鼓動が少し速い。
新しい始まり。
でも、高橋さんの事件の影が、まだ心の隅に残っている。
誰かを傷つけないように……そう思いながら、仕事を続ける。