テラーノベル
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実際の団体、個人とは無関係です。
※成人向けに準ずる表現があります。ご注意ください。
※その他、捏造した設定が多く含まれます。
※中華絵巻を元にしてます。
※モブ多めです。
※※※痛々しい表現が多くあります。
閲覧には十分注意してください。
セラフは案内されるがままに部屋へ入ると、中は白を基調としたさっぱりとした空間だった。
厚手の寝具が載った明らかにふかふかしていそうなベッドと、窓際には大きめな円卓と椅子。
円卓の上には湯気が立ちのぼる茶器と3つばかりの茶菓子が置いてあった。
せっかくなので円卓に付いたセラフ。ちょうど窓の外が見える位置だ。
数分と経たないうちに、自分が来た扉とは別の戸が開き、長い裾を引き摺ることなく上手に歩いて男性が出てきた。
「…本日はお越しいただきありがとうございます。奏斗と言います。」
そう言って礼をする。
上等な金糸のような髪が目元を覆い、表情はよく見えない。しかし、やつれているとか飢えているという雰囲気は無い。
『顔をあげて。こっちに来て座って。』
「はい、失礼します。」
ぱっと顔を上げた彼の目は綺麗な空色で、その顔はまだあどけなさを残していた。
動くたびに揺れる長くて美しい髪と服を上手く扱い、彼も椅子へと座った。
近づくと甘い桃のような香りが一層濃くなった。
名前と軽い注意事項を言いながら、彼はセラフのために茶を淹れ始めた 。
それを眺めながらセラフは美しい所作に育ちの良さを感じていた。
『敬語、外してもいいよ。窮屈でしょ』
「…いえ。お客さん相手にタメ口は、ちょっと。」
ツンとした態度を崩さない奏斗にやや気圧されてしまうが、セラフはひとまず情報収集として話題をいくつか切り出した。
『お茶、淹れるの慣れてるね。』
「仕事なんで。」
『ここで働いて結構長いの?』
「そう、ですね。それなりに。」
『そっか。その、髪もさ、綺麗だけど淹れる時の仕草も綺麗だった』
「ありがとうございます。」
『…。』
会話が上手く続けられず、セラフは一度口を閉じた。
人と話すことは苦手ではないがこうも躱されてしまうと難しい。
怪しい物が部屋にないか目で探しながら、話題を考えていると、奏斗が口を開いた。
「…時間無くなっちゃいますけどしないんですか?」
『え?』
奏斗はベッドを指差し、訝しげにセラフを見た。
その行動にセラフはやっとここがそういう場所をする茶屋だったと思い出した。
つい、法的に大丈夫な茶屋なのか調べるということだけを意識してしまい、忘れていた。
『あ、いや、えっと……こ、ここで大丈夫。 』
目の前の奏斗も誰かにその長くて綺麗な髪を乱されているのだろうか、一度意識してしまうとなかなか頭から離れない。
良からぬことを考えるより前に、セラフの脳は脊髄へとある言葉を口から吐き出させた。
『そういえば、ここって桃娘がどうとかって言ってたけど、君もそうなの?』
セラフの質問に一瞬目を丸くした奏斗だったが、すぐに平静を取り戻し、視線を手元に落とした。
「そうです。……このお茶も桃の花と葉から抽出したものなんです。」
『桃以外食べたことないの?』
「え、あぁ、…まぁ、そうです〜」
場が暗くならないためなのか貼り付けた笑顔には諦めとも失望とも取れた。
セラフは失言だったと目を逸らした。
数十分ほど会話もなく、ただ桃の茶を啜る時間となった。
葉特有の渋みと桃の甘い香りが相まってなかなか好ましい味わい。
「あの…あと10分しかないんですけど!」
セラフが茶を味わっていると奏斗が顔を覗き込むような形で机に乗り出してきた。
そんな体勢をされると胸元まで覗けてしまい、桃の花みたく慎ましやかな突起があるのがセラフには見えてしまった。
『ごふっ…!げほ、げほっ!!』
「うわっ!なに、ちょっと、大丈夫!?」
突然むせ込んだセラフに思わず敬語が取れた奏斗、ガタンと音を立てて椅子から立ち上がり、セラフの背面へ回った。
すると、すぐにセラフの背にふわりと軽い布と温かい手の感触が伝わってくる。
「ごめんなさい、そんな驚くなんて思わなくて……」
『げほっ…!いや、俺もごめん、ちょっと不意打ちに弱くて……(?)』
自分でも何を言ってるか分からないセラフの言い訳にまだ心配そうな顔で背をさする奏斗。
『はぁ…ありがとう、奏斗。』
やっと落ち着いたセラフが後ろを向いて、ずっと労ってくれた奏斗の手を握り返した。
女性のような線の細い、か弱い手だが節々が骨張っていて彼が男性であることを再確認した。
肌荒れこそひどくないが爪の先が所々ぼろぼろなのを見るとあまり生活が良くないことが推測できる。
よく奏斗を観察すると齢に比べて背もまだ小さい。
あまり眠れていないのか、目元と口元も少し荒れていた。
『ねぇ、また君に会いに来てもいい?』
「え??ど、どうぞ。」
『ありがと。じゃあ、また来るね。』
困惑している 奏斗の手を優しく撫でて、セラフは席を立つ。
出口を目指して歩きだすと、ぐっと裾を引かれて振り返った。
「…お、お見送りします」
焦った表情をした奏斗が早足でセラフより前に来ると、すっと扉を開けてくれ た。
セラフが礼を言って、もと来た受付ロビーまで出ると奏斗はお辞儀をして扉を閉めた。
さて、この後は四季凪と情報を共有して、まとめて……。
ミランへ話を伝えるにはまだ情報が足りないし、何度か会って信頼度を上げた方が深い話もしやすい。
セラフは今後のことを考えながら、四季凪と落ち合うための別の場所へ向かった。
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