2022.3.26
今日は一粒万倍日、天赦日、寅の日が重なるとても縁起のいい日らしい。僕はこの日を機にラジオ用に2つ目の日記でも付けてみようかなと思いつく。早速仕事帰りにそのまま近くの本屋へ寄った。
ワンポイント黒猫の絵が描かれているものや革素材で高級感のある表紙、目に入るもの全てに引かれる。でも僕はもう35の大人。なんならおじさんという世界に入りかけている人間だ。可愛らしい柄の入ったものや派手なものを持ち歩くのは少し恥ずかしい。
新しく始まるラジオ#ふらっと の番組ステッカーに使われている1色である、「黄色」の日記を手に取った。落ち着いた黄色で無地のシンプルな表紙が気に入った。小さいことも深く考えすぎてしまう僕。
これでいいかな。
もう一度ほかの商品にも目を向けようとするが、すでに足がレジに向かっていた。疲れていたのだろう、体が休みたいと言っているのかもしれない。
「もしかしてパンサーの向井さんですか?」
店員さんが日記と、他に数冊買っていた小説を袋に入れながら聞いてくる。プライベートでファンの方に話しかけてもらえるのは嬉しいけど今日は例外。疲れている。意識せずにも冷たく返してしまう。
「そうです。」
「やっぱりですか!!!長田さんとのチャンネルも見てます!!!」
「ありがとね笑」
疲れきった表情筋を必死に動かして、笑顔を見せる。本心で嬉しいという感情はあるが、上手く表に出せないほど疲れている。その後も沢山話してくれた店員さんを振り切るようにして店を出てきてしまった。車に乗り家に帰る。
家に着いてソファで横になった途端、
やっぱり店員さんへの対応雑だったかなぁと一人反省会が始まる。これだけが頭をぐるぐると巡り、自分を責める。色んなことを考えていると、急な眠気が襲ってきた。体が限界だったのだろう。
目が覚めると短針が9を指していた。朝なのか夜なのかわからなくなり焦る。カーテンの外が暗くなっていることを確認し、帰ってきてから触れていなかった鞄の中からスマホを取り出す。マネージャーからのLINEや最近引っかかりそうになったばかりの詐欺メールなどが6件来ている。
とりあえず重要なものは返信し、スマホを閉じる。
いつ寝たんだろう、この後予定あったっけ。ボーッと考える。日記のことを思い出し、机の上に3色ボールペンと一緒に置く。黒のインクをだし書き始める。
3月26日
店員さんに、冷たい態
手を止める。「向かいの喋り方」の日記では黒い日記と言われるほどマイナスなことばかりを書いてきた。今日日記を買うと決めた時から、#ふらっと の日記では、学んだこと、良かったこと、その日見たエンタメなど、+になることだけを書こうと決めていたのだ。今書いたことに取り消し線を引き無かったことにする。
3月26日
̶店̶員̶さ̶ん̶に̶冷̶た̶い̶態̶
ちゃんとラジオのことを考えて日記をつけ始めようという気持ち、えらい
新品の日記に自分を褒めるようなことを書くとやっぱり不思議な感じがするが、これでいいんだ。
そんなことを考えているとスマホからLINEの通知音が鳴った。
「岩井君からだ。」
あまりに急で久しぶりな連絡に驚いた。
今、何してる?
︎︎ ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ仕事が終わって家にいるよ
ああ、そうなんだ
ちょっとだけでも
会えない?
︎︎ ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ 何その感じ笑笑
ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ全然いいけど
渡したい物が
あるんだけど
ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤああそうなんだ
ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤじゃあ○○で待ち合わせね
すぐに支度をして、タクシーで待ち合わせ場所に向かった。渡したい物ってなんだろう、なんかしたっけ
お金を払い運転手さんにお礼を言ってタクシーを下りるとすでに岩井君が車の中でスマホをいじって待っていた。
「とりあえず乗りなよ」
わけも分からないままドアを開け、助手席に座った。車が動き出し、岩井君から話が始まる。
「どうなの?新しいラジオは?よさそう?」
早速#ふらっと の話が出される
「まあまあ大変なところもあるけど楽しくできそうかな」
なんとも言えない答えで返す。
「そうなんだ」
ここで話は途切れる。何話そうかなぁ、と話題を考えていると、岩井君がダッシュボードに手を伸ばした。何取り出したんだろうと、岩井君の手に注目していると、「forYou」と書かれた封筒を差し出された。
「これ」
「えっなになに?」
あまりの説明の少なさに戸惑ったが、「開けて」と中を見る許可を貰えたので早速封筒の中を覗く。そこには黒の片耳イヤホンが入っていた。それも「#MUKAI」と書かれたタグ付きで
「何このタグ!」
「友達の服屋の人にタグ作ってもらったから巻いといた」
平然と返される答えにぽけーっとした顔になってしまう。
「使ってこれ。絶対に必要になるやつでしょ。これずっとTBSに置いとけば向井くん専用のになるから」
突然な岩井君からのプレゼントと優しさに
驚きが隠せず、ありがとうという一言しか伝えることが出来なかった。嬉しさのあまり上手く言葉にできなかった。頑張って伝えようと頭の中で必死に文を作ろうとするが、車は待ち合わせ場所に戻っていて、いつの間にか車から降りていた。岩井君の車が動き出してしまう前に、もう一度「ありがとう」と伝えた。
家に着いてからも余韻に浸る。岩井君の声、表情、仕草を思い出して口角があがる。ラジオで使うはずが、すぐに使いたくてスマホに挿して曲を聴く。前に岩井君が教えてくれた曲を。
そして日記に付け足す。
3月26日
岩井君がもっと好きになった。
コメント
1件
え待ってめちゃくちゃ最高ですありがとうございます、、!! もう好きすぎてハート沢山押しちゃいました笑