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sm.side
俺には昔から仲の良かった1つ上の幼なじみがいた。ただ、それは過去の話。親の仕事の都合で引越しが決まった俺は、その幼なじみ…….翠と離れることになった。
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「ここが、白尾高校…..」
目の前の大きな建物に気圧される。すごく大きなその学校は、ずっと連絡だけのやり取りだった翠、通称シャークん曰く「俺の通う高校」で、今年から俺が通う高校でもあった。
(…じゃなくて、クラス表!)
そう。この学校には毎年沢山の生徒が入学するらしく、今年は6クラスに分かれるらしい。
(俺の名前は…..、あった、3組…!)
この高校に見知った顔は、それこそシャークんくらいしか居なくて。色んな感情が溢れそうになるのを感じつつ、俺は3組の教室に向かった。
教室に入ると、まだ数える程しか生徒は居なくて、俺みたいな知り合いの居ない人たちかも、なんて考えが浮かんだ。
俺は黒板に貼ってあった座席表を確認して、自分の席に座る。そのまま皆が集まるのを待った。
しばらくの間する事もなくそこに座っていると、見知らぬ人から声を掛けられた。
「あの…、そこ、多分俺の席だと思います。あの表、ちょっと見方難しいですよね、笑」
青みがかった黒髪と涙ぼくろが印象的なその人は、俺が座っているその席を指さして言う。
「ぇ…、ごめんなさい。えっと、俺の席は…、」
ふと顔に熱が集まるのを感じる。…..最悪だ。入学初日にこれは恥ずかしすぎる。優しくしてもらったけれど、……悪いけど、顔を合わせたくない。
そんなことを考えながら、そそくさとその場を離れ、再び黒板の表を見に行く。
(えー…..と、俺の席は、)
表の左上から目で追っていく。すると横から「君は…..ここ、かな?あ、隣だw」なんて声が聞こえた。
(探してくれるんだ…。…..隣、だし…)
あんな事があった直後に隣の席なのは気恥ずかしい気持ちもあるが、これから1年間一緒の彼に、そうは言っていられない。
「ありがとう」を伝えようとすると、相手が先に自己紹介をする。
「じゃあ改めて、隣よろしく。俺、時野蒼って言います。きんとき、ってよく呼ばれるからそう呼んでくれると嬉しい」
(きんとき…..か。…じゃなくて、俺も自己紹介…!)
急いで言葉をまとめて改めて口に出す。
「席、見つけてくれてありがとう。俺、紫崎須磨。…..よろしく、きんとき」
高校に入って初めて、友だちができたような気がした。