「ど、どうって……」
なんて答えればいいのかおぼつかないでいると、
「……彩花、もっとそばに……」
片腕に腰がぐっと抱き寄せられ、耳元へ密めた声で囁やきかけられた。
「私を、見てくれないのか?」
羞恥心に駆られ、うつむけた顎の先が上向かせられる。
「こんなにも私は、君を欲していて……」
彼の端正な顔が目の前に迫り、抑えがたい熱情に掻き立てられた性急な唇が、一意に押し当てられると、体中を痺れるような感覚が襲った。
「……うん、あっ……」
濡れて温かな舌が、口を開けるよう促し下唇を緩くなぞる。
ひらいた唇の隙間から入り込んだ舌が、戸惑いに引きかける私の舌を絡め取る。
こんなのって、ずるい……。
自分から仕掛けるはずだったのが、いつの間にかまた惹き籠まれて、ただされるがままに感じさせられてしまっていた。
「貴仁さ……ん」
息を継ぐ間に、切れ切れに呼びかけると、
彼が唇を離して、私の頬を両手の平にふっと包み込んだ。
「せっかく汗を流してきたのだから、ここまでにしておこうか」
二度までも、やっぱり私への気づかいの方を優先する彼に、
「……嫌、もう少し、して……」
思い切って腕を伸ばし、その身体にギュッと強く抱きついた。
不意をつかれて、彼が「……んっ⁉」と、驚いたような声を放つ。
「……もっと、していて……」
このまま後には引けない思いで、そう責め寄ると、
「……はぁ、あっ、ダメだ……」
彼の口からにわかに荒い息づかいが漏れて、喉元が喘ぐように波を打った。
「……私だけじゃなく、あなたにも感じてほしいの」
大胆な言葉とは裏腹にわずかに震える手を、下半身へ差し伸ばすと、
「……そこ、は……」
ビクッと身悶えた彼が、寝返りを打ち、手から逃れようとした。
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