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自分がシスター・ミレと同じ聖女……
この事実はシエラによりいっそうシスター・ミレとの親密感を抱かせたみたい。
だからかな?
シエラは今まで以上にシスター・ミレにべったり引っ付いて離れなくなったの。しょっちゅうシスター・ミレのベッドに潜り込み一緒に眠ったりもしてたわ。
「しすたぁ~」
「シエラは甘えん坊さんね」
笑いながらシエラを受け入れてくれるシスター・ミレはとっても温かくて、ふんわり柔らかくて、フワッと良い匂いがした。
これは私の関与できないシエラが勝手にとった行動だったけど、私もシスター・ミレと一緒に眠るのは凄く安心できて幸せだったから別にいいんだけどね。
そうやって1年もシスター・ミレにくっつきながら聖女の教えを受けてシエラも5歳になっていた。
「こうやって祈ればいいの?」
「そうよ。今は形だけだけれど本当は目を閉じて神と対話を行うの」
その日はシスター・ミレと教会の礼拝堂で彼女が神へ祈祷を捧げる姿を模倣していた。
「この黙祷で神を敬仰し、感謝の言葉を捧げるのよ」
「神さまにいつも見守ってくれてありがとうってお礼を言うんでしょ!」
シスター・ミレに褒められたくて張り切るシエラは素直で純真なのだ。
そのあまりの愛らしさにシスター・ミレもデレデレになっているわね。
「シエラは何でも直ぐに覚えて偉いわね」
「えへへへ」
彼女が頭を優しく撫でてくれるから、私もシエラもとても嬉しくなる。
だから、私もシエラも自然と笑顔になるんだ。
「シスター・ミレ」
そんな穏やかな空気に包まれた礼拝堂にシスター・ジェルマが少し険しい表情をしてやってきた。
「どうかなされたのですか?」
「自警団の方が見えているわ。どうも街道で魔獣が現れたそうなの」
シエラは魔獣と聞いて不安が募り、シスター・ミレのスカートを強く掴んでしまった。
「シスター……」
「大丈夫よシエラ。すぐに済ませて帰ってくるわ」
彼女はシエラの頭を一撫ですると、颯爽と礼拝堂を出て行った。
その後ろ姿を見送った私とシエラの胸は不安でいっぱいだった。
この1年で魔獣を討伐しに行くシスター・ミレを何度も見送ったけれどやっぱり凄く心配。
それに何だか今日はとっても胸騒ぎがするの。
そして……
その悪い予感は見事に的中してしまったのだった。
私とシエラの想像していたのとは全く違う形で……
しばらくしてシスター・ミレは無事に帰ってきた。
それはとても嬉しかったんだけど、彼女は黒髪の男を抱えていたの。
後から自警団の人達に聞いたんだけど、魔獣の群れに襲われてシスター達はかなり危ない状況だったらしい。そこに現れたこの男のお陰で窮地を脱したとのこと。
だからこの黒髪の男はシスターの命の恩人なの。
だけど……
「く、くちゃい!」
そうなのだ。
この男の放つ悪臭は酷かったのよ!
「そんなことを言っては駄目よ。臭いや汚れで人格を否定するものではないわ。それに何と言っても私達の命の恩人なの」
いや、他に命を救われた自警団の男性陣も引いちゃってるじゃない!
それを厭わずに接するあなたは正真正銘ホンマもんの聖女様ですよ!
「シエラもこの方の介抱を手伝って」
「う~」
これは嫌だ。
はっきり言って嫌だ。
だって凄い悪臭なのよ。
どーしたらこんなに臭くなるのよ!
感覚はシエラと共有しているのだから、私だってこのドブ川より酷い臭いを感じている。
これは堪らない!
はっきり言って私もシエラもこの臭いに近づきたくないわ。
だけどシスター・ミレの言葉はシエラにとって絶対なのよ!
渋々ながらシエラはシスター・ミレの指示に従って体を拭くのを手伝い、着替えを用意し、ベッドに寝かせた男の看病につきっきりのシスター・ミレの為に食事や飲み物を準備した。
嫌な顔1つせずに甲斐甲斐しくお世話をするシスター・ミレ……
もう後光が見えますよ!
あなたはモノホンの聖女様や。
私にはとてもこんな慈愛に満ちた行動はとれそうにないわ。
心配になってきた……
私とシエラってホントに彼女のような聖女になれるのかな?
だけどもっと衝撃的な事実がこの後で判明したのよ!
なんとこの黒髪の男性の名前が……
結城悠哉(ゆうきゆうや)――
え!?
まさか日本人ですか!?