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銀新です。
キスシーンがあります。
大江戸ストアを出た瞬間、空が唸った。次の瞬間、滝みたいな大雨。
「うわぁぁぁ!?ちょ、ちょっと銀さん!?さっきまで晴れてましたよね!?」
「最近の天気はツンデレだからな。急にデレて急にビンタしてくるんだよ」
二人は慌てて軒下へ駆け込む。バケツをひっくり返したような雨が、石畳を白く霞ませていた。
銀時は濡れた髪をかきあげ、盛大にため息をつく。
「そういや結野アナ大雨降るっつってたな〜クソ、忘れてた」
ぶつぶつ愚痴りながら、さっき買ったポッキーの袋を開ける。
ぱき、と軽い音。
「こんな日は糖分補給だよ。銀さんの脳みそは繊細だからね」
「いやこんな日って…いつも糖分補給してるじゃないすか…」
銀時は気にせずポッキーを咥える。細長いチョコの棒が、やけに絵になるのが腹立たしい。
新八はその姿を、じっと見つめていた。
雨音に混じって、自分の鼓動がやけにうるさい。
「……」
視線に気づいた銀時が、ちらりと横目で見る。
「何?ポッキー欲しかったのか?でもこれはダメだよ?銀さんのだからね〜」
わざとらしく袋を抱え込む。
「別にポッキーを見てた訳じゃ…」
言いかけた瞬間。
ぐい、と顎を軽く持ち上げられた。
「え——」
唇に、柔らかい感触。
一瞬だけ。けれど確かに重なった体温。
思考が完全に停止する。
雨音が聞こえないくらいに自分の心臓がうるさい。
離れた距離はほんの数センチ。銀時の赤い瞳が、悪戯っぽく細められる。
「じゃあ銀さんの事が欲しかったのか?」
優しくて。
どこか楽しそうで。
新八の顔が一気に熱を帯びる。
「なっ……!?ち、違……!」
言葉が続かない。
銀時はくす、と笑う。
「顔真っ赤。雨より分かりやすいな」
「う、うるさいですよ……!」
新八はそっぽを向く。
けれど離れない距離。
肩が触れそうで、触れない。
銀時はポッキーを一本くわえたまま、ぼそりと呟く。
「……欲しいなら最初から言えば良いのに」
その声音は、からかい半分、ほんの少しだけ本気。
新八は答えない。
ただ、逃げるように視線を逸らしたまま、小さく呟く。
「……ずるいですよ、銀さん」
雨はまだやまない。
けれど二人の間には、雨とは違う、静かで甘い温度が漂っていた。
銀時は空を見上げる。
「ま、雨もたまにゃ悪くねーな」
隣で、新八の鼓動はまだ落ち着かない。
赤い顔を隠しながら、ほんの少しだけ——
銀時の袖を、そっと掴んだ。
雨宿りは、もう少し続きそうだった。