テラーノベル
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シャー。 カーテンを開ける。俺を迎えたのは、陽の光と屋根を一つ挟んだすぐ側の部屋で、着替え中の下着姿の女性だった。
黒レースパンツとブラジャーに思わず視線が集中する。
「きゃあああああああああ!!!」
「わああああああああああ!!!」
お互い奇声をあげた。
「まもりんどうしたのー?」
階下からは桜花姉の声が。
トットットと、階段を上る足音が聞こえる。
やばい、こんなの見られたら最悪だ。
変態って思われたくない!
「ごめんなさい!」
そう一言だけ謝り、カーテンを閉める。
シャー。
太陽の光が遮断されて再び薄暗くなる。
コンコン。
「まもりん入るよー」
「お、おう」
従姉が部屋のドアをノックして扉を開ける。
パチ。
ドアのすぐ近くにあった電源を入れる、と部屋に人工の光が照らされた。
俺はカーテンのそばで顔を赤くしていた。
「部屋に特に異常なし。まもりんがカーテンの近くにいるってことは、見たね?」
「みみみ、見たって何を!?」
「とぼけても無駄。お隣のお姉さん。咲倉蕾(さくらつぼみ)さんを」
全てお見通しである。という勝ち誇った表情だ。
窓際まで迫ってくる桜花姉。
シャー。
カーテンを開ける。
そして窓も開ける。
ガラ。
暖かな風が部屋へ吹き込み、俺と桜花姉の髪がふわっと揺らいだ。
「蕾さーん。着替え終わったー?」
向かいの部屋へ声をかける。
「は、はーい」
上擦った声だ向かいから聞こえて、カーテンが開いた。
腰まで届くサラッとした黒煙色の髪。
顔立ちは整っており、パッチリとしたタレ目。
シュッとした鼻筋。
紅色の唇。
既に下着姿ではなく、白いワンピースに体を包んでいた。
正直、すごく綺麗で見惚れてしまっていた。
数秒後、我に返り。
「あの、ごめんなさい!知らなかったとはいえ、女性の着替えを覗くなんて」
深々と頭を下げて謝罪する。
「いえいえ、こちらこそ今までこのお部屋、空いてたから誰もいないって油断しててごめんなさい」
相手も頭を下げた気がした。
ニヤニヤ。
怪しい視線を感じて、背筋を90度に戻す。
案の定、桜花姉が不敵な笑みを浮かべていた。
「蕾さーん、いい頃合いだし、そろそろあの作戦行きます?」
「え?えぇ!?えぇぇぇぇ!?」
1人でも「はぁはぁ三兄弟」みたいな驚いた表情をする。
「いや、たしかにちょうどいいけど、出会ってすぐの相手に頼むには心の準備が」
あせあせと慌てて視線がクルクルと回る。
「いいじゃんいいじゃん。裸見られたんだし」
「裸じゃないよ、下着姿!」
慌てて否定する。
「似たようなものだよ」
桜花姉は、顔にかかっていた自身の栗色の髪を指で流し、ケタケタと笑う。
2人の会話に置いてけぼりな俺。
モノクロナツキ
#イケメン
「なぁ、作戦ってなんの事だよ?」
「あー、じゃあその話からだね。蕾さん、そっち行っていい?」
「いや、初対面の男性を入れるのはちょっと……」
たじろぐ。
「だったらこっち来る?」
「初対面の男性の部屋はちょっと」
完全に拒絶されたー。
「て言ったって、まだ何も無いからさ。まもりんも良いよね?」
「いやまず説明をだな」
「それはすぐするよ。蕾さんこっち来て」
おずおずと言った感じで、窓から身を乗り出し、屋根を伝って俺の部屋へ来る。
こちらへ上がって来ようと、開け放された窓口へ手をつける。
上がってこようと力を入れるのがわかる。だが上がれない。
「あの、もし良かったら」
俺は思わず手を差し出していた。
カァァ。
彼女の頬が紅く染まる。
「ありがとうございます」
照れてるのか、俺の方を見ず振り絞った声でお礼をしてくれた。
俺の手を掴み、部屋へ身を乗り出す。
とさ。
無事こちらの部屋へ入室完了。
「さてと、3人揃ったところであの人が帰ってくる前に作戦会議を始めますか」
「あの人って?」
気になって挙手。
「蕾さんのお姉さん」
「帰宅するとまずいのか?」
「まずいからこうやって作戦会議するんだよ」
未だに流れが掴めない。
頭に「?」マークが沢山浮かぶ。
「題して、蕾さんの鬼道島脱出作戦!」
「脱出?」
「そう。蕾さんはこの島を出たがってるの」
「なんでですか?」
件のお姉さんへ視線を向ける。
まだ下着姿を見られたことが恥ずかしいのか、俺の顔から視線を逸らす。
「明日にはわかる……よ……」
掠れた声。
「明日?」
「いつものあれかー……」
桜花姉は体験しているのか、苦虫を噛み潰したような表情をする。
「???」
謎が増えてゆく。
「とりあえず明日になれば何かが起こることは分かったけど、なんで俺まで巻き込むんだよ?」
「ふっふっふ」
うわー、悪い笑み浮かべてるよ。
「まもりんには蕾さんの彼氏役をやってもらうからだよ」
「は?はぁ!?はぁぁぁぁぁ!?」
「うん、いい反応いい反応」
にこやかに微笑む。
「まず1から説明してくれ!」
「しょうがないなぁ」
顔にかかった前髪を流す。
「蕾さんのお姉さんはね、すっごく怠け者なの。それが嫌でこの島から去りたいって前々から相談受けてたの」
「ふむふむ」
「そこでいい口実がないか二人で考えてたんだけど、恋人と駆け落ちしようって結論になったの」
「ほぉほぉ」
「でも、なかなかいい相手が見つからない」
「ふーん」
「けどそこへ、まもりんがやってきた!」
「なんで俺なんだよ」
はぁとため息をつかれた。
桜花姉は指を1本立てる。
「いい?まもりんはこの島の外の人間。その相手を好きになり、追いかけて本土へ逃げる」
「そこまでは分かったけど、この島を出てからの生活は?」
「まもりんの実家でいいじゃん」
ケタケタと軽く笑う。
「いやうちの親、仕事忙しいからほとんど2人きり。それに家には帰りたくない。
うちは、そう、とある事件がきっかけで、逃げるようにこの島にやってきたからだ。
なので地元には帰りたくないのだが……。
蕾さんの下着姿が脳裏に過ぎる。
カァァ。
想像したらまた顔が赤くなった。
本人もそうなのか、俺と同じ表情だ。
「その反応を見ればわかる!二人の相性は良し!」
「何を根拠に!?」
それまで黙っていた蕾さんが叫ぶ。
「だってお互い既に意識してるでしょ?」
「いや、それは下着姿を目撃したから申し訳ないくて意識してるだけ!」
「蕾さんは?」
「正直に言っていいですか?」
「うん」
「はい」
俺たちは同時に答える。
「一目惚……です……」
手のひらで口を抑えて恥じらえた声で告白された。
「え?」
ポカーン。
マジ?こんな綺麗な人が?
豆鉄砲食らった鳩のような表情になっていた
「やっぱり!恋人役じゃなくて恋人でいいじゃん!」
バシバシと俺の背中を叩く。
「…………」
「どうしたの?まもりん」
「女の子、それも年上のお姉さんから告白なんて始めててどう答えたものかわからん」
「そうですよね……」
しゅん……。
表情だけでなく、なんとなく黒煙色の髪もしゅんとなってる気がした。
「その、お姉さんから逃げたい原因も明日にならないと分からないので、まずは友達からでいいですか?」
蕾さんの表情がパァと明るくなった。
「はい!ぜひ!」
ということでガールフレンド(仮)がこの島初日でできてしまった。
「えっと、まずはLI〇E交換ですよね?私のQRコード表示します!」
サッとスマホを取り出し、早速チャットアプリの友達登録が完了した。
正直、嬉しい気持ちはある。
だって、すっごい好みな人だもん。
この島の生活が楽しみになった自分がいた。
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