夢主の設定
名前:エマ・コントルダンス
容姿:金色の髪/青い瞳
現代パロディ。
高校生設定です。
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バカだって恋くらいする
「なあ、エマ。バレンタイン、俺にチョコくれよ」
精一杯のアピール。
不自然にならないように。
『え?…うん、いいよ。でも味の保証はできないからね』
「おう」
エマはメモ帳に“コニー”と俺の名前を書いた。
「…俺の他にもチョコ渡すのか?」
『うん。色んな人からチョコ欲しいって言われたから。エレンに、ライナーに、ジャン、オルオ先輩、それに殆ど話したことない他のクラスの男子10人ちょっと、あとサシャかな』
……マジかよ。
覚悟はしてたけど予想以上に多い。
可愛い上に優しくてめちゃくちゃいい子だからな。
爆モテの彼女を例に漏れず好きになってしまったのは自分だけど、あまりにもライバルが多すぎる。
『みんな必死だよね。バレンタインにいくつチョコ貰えるか競ってるの面白い』
サシャはチョコをいっぱい食べたいだけだろうけどね、と笑うエマ。
あ〜、可愛いなあ……。
しかし。
エマは分かってるんだろうか。
数を競うのが目的でない男共がそのリストの中に一体どれだけいるのか。
エマの彼氏になりたいと思ってる男はたくさんいる。
昼休み、放課後、体育祭の後、文化祭の最中。
エマに告白して断られた男は俺が知ってるだけでももう10本の指には入りきれないくらいいる。
高校に入学後、「めっちゃ可愛い子がいる」と大騒ぎのクラスメート。
友達に引っ張られて見に行った隣のクラスに、彼女はいた。
ふんわりと少し癖のついた金色の髪、綺麗な青い目。
白い肌にピンク色の頬と唇。
これがひと目惚れってやつなのか。
心臓がバクバク音を立ててうるさい。
どうやったら彼女の視界に入れるか。
俺を知ってもらえるか。
そんなことを考えていたら、同じクラスで幼馴染みのサシャが、あろうことかエマの手作りのカップケーキをもらったと自慢してきた。
体育でエネルギーを消耗して、腹を空かせて座り込んでるサシャに、調理実習で作ったカップケーキをお裾分けしてくれたと言うのだ。
「女神様かと思いましたよ!!」
味も抜群に美味かったらしい。
ひと口食べたいと言ったけど、食い意地の張った彼女は俺に見せびらかすように大袈裟に口を開けてカップケーキを放り込んだ。
サシャには悪いが、ちっと利用させてもらおう。
カップケーキの件でエマと仲良くなったサシャに、俺を紹介してもらって面識を持つ作戦だった。
そして無事に俺のことを知ってもらうことができて、俺とサシャとエマは昼休み、屋上で一緒に弁当を食べる仲にまでになった。
まあ時々、それに便乗してエマを狙う男共がくっついてくることはあったがな。
2年に進級して、俺はエマと同じクラスになれた。
クラス割を見て心の中でガッツポーズをしたもんだ。
同じクラスになったことで前より話す機会も彼女を眺めるチャンスも増えた。
どんどん好きになっていってしまう。
告白なんて日常茶飯事の彼女。
しかもある時から聞こえてくるようになったのは、エマは告白を断る際に“好きな人がいるから”と言うようになったって話だ。
俺はもう気が気じゃない。
好きだと伝えたら、彼女はどんな顔をするだろう。
せっかく仲良くなれたのに、気まずくなるのだけはごめんだ。
そして、2月。
バレンタイン前にチョコが欲しいと言ってみた。
味の保証はできないからね、と笑ったエマは、心なしか嬉しそうに見えた。
エマがバレンタインにチョコをくれたら、ホワイトデーにお返しを渡す時に、思い切って告白してみようと思う。
断られても、今までと変わらず仲良くして欲しいと懇願するつもりだ。
「コニーも恋するんですねえ」
「は!?どういう意味だよ!」
「バカでも恋するですねって意味ですよ」
「サシャにバカって言われたくねえよ!」
エマがどっかの知らん男に呼び出されてるので、今日はサシャと2人で弁当を食べる。
サシャが美味しい美味しいと言って自分の料理を食べるのが嬉しかったそうで、エマは毎日、サシャと俺の分まで弁当を作ってくれるようになった。
こんな奇跡のような日常を作るきっかけになったのは、あのカップケーキの件だ。
あの日座り込んでいたサシャに感謝感謝。
「エマに告白は?好きなのバレバレですよ」
「マジかよ」
サシャにそれを言われてしまったらおしまいだ。
「エマといる時のコニー、周りに大量のハートが飛んでるのが見えるくらいデレデレです」
そ、そんなにか……。
「私は応援しますよ、2人のこと。もしエマとコニーが付き合ったら、今までとは違った感じで楽しいでしょうし。まあ、私はこれからもエマが作ってくれたお弁当やお菓子が食べられたら満足ですけどね」
…お前、絶対後者のほうしか考えてねえだろ。
「……エマに、バレンタインにチョコくれって言った。だからホワイトデーのお返しを渡す時に思い切って告ってみようと思ってんだ」
「いいじゃないですか。あ、ちなみに私もエマにチョコくださいって頼みましたよ。友チョコくれるお約束です。楽しみだなあ〜」
やっぱチョコ食いたいだけかよ。
そして1週間とちょっと。
バレンタインデー当日。
男も女も朝からそわそわ。
義理チョコ友チョコばら撒きチョコ。
クラスの男子全員分のチョコを用意してくれた優しい女子がいたおかげで、我がクラスの男は1人として、チョコ0でみじめな思いをする奴はいなかった。
昼休み。
いつものようにサシャとエマと3人で屋上へ向かう。
彼女のチョコを欲しているであろう男共が一緒に昼飯を食おうと誘ってくる。
普段は快く俺たち3人に加えてやる(本音を言うと俺は面白くない)エマだが、今日のエマはどいつにも同じ文句で統一して断っていた。
「ごっはん♪ごっはん♪ 」
うきうきで自分が持参した弁当を広げるサシャ。
エマもいつものように自分の分と、俺とサシャにと作ってきてくれた弁当箱の蓋を開ける。
「! これ、もしかしてバレンタイン仕様か?」
『うん。可愛いでしょ?もはやネタだけど』
「可愛い〜!いただきまーす!」
笑いながら話すエマ。
そして早速手を伸ばすサシャ。
今日の弁当の中身は、ハートだらけだった。
玉子焼きもハート、おにぎりもハート、ひと口サイズの小さなハンバーグもハート、それに添えられた人参もハート、ベーコンもハート、ピックもハートがついたもの、おかずカップまでハート柄という徹底ぶりだ。
『チョコももちろん作ってきたけど、2人のこと大好きだから今日のお弁当はハートだらけにしようって決めてたの』
え、今ダイスキって言ったのか??
「私もエマ大好きですよおぉぉ!!うまっ」
「おっ…俺だって!だ…大好きだ…!いただきまーす!」
サシャに便乗して言ってしまった。
そして急いでエマの弁当の中身を口に放り込む。
大丈夫だよな。
変なふうに聞こえてないよな。
「うま!いつもありがとな!」
『よかった!こちらこそ』
花が咲いたように笑うエマが本当に可愛くて、うっかり抱き締めてしまいそうになるのを必死に堪える。
『…じゃあ、はい!今日のメインね。ハッピーバレンタイン!』
弁当を食べ終えた俺たちに、エマがこれまた可愛くラッピングされた箱を差し出す。
「やった〜!チョコ〜!」
「ほんとに作ってきてくれたのか!ありがとう」
好きな子からのバレンタインチョコに胸の鼓動が速くなる。
こんなに嬉しいなんてな。
サシャは早くも箱を開けている。
中には、粉砂糖で白く化粧をされたチョコレートケーキのようなものが入っていた。
『サシャにはガトーショコラね。お豆腐使ってるから普通に作るよりヘルシーに仕上がってると思うよ』
すげえ。
豆腐がガトーショコラになるなんて。
豪快にかぶりつくサシャ。
「うっまああぁぁぁ!!これほんとにお豆腐入ってるんですか!?」
『うん。もっと言うとチョコも使ってないの。ココアパウダーとハチミツが入ってるんだ』
「チョコ使ってないのか!?サシャ!俺にもひと口くれ!!」
サシャはとてもとても嫌そうな顔をして、大きなガトーショコラのほんの端っこを、人差し指じゃない、小指と親指の先でちっっっさく千切り、俺の手に乗せた。
…まあいいけど。
これはサシャがもらったものだし。
俺たちのやり取りを見て、エマが腹を抱えて笑っている。
小さなガトーショコラのかけらを口に入れる。
普通に美味い。
「ほんとにチョコの味がするんだな!」
『そんなちっちゃなかけらでも味が分かるんだね』
笑いすぎてうっすら滲んだ涙を拭うエマ。
「俺も開けていいか?」
『っ!…うん、いいよ』
俺は再び胸を高鳴らせながら、綺麗にラッピングされた箱のリボンを解く。
中に入っていたのは、まるでプロのパティシエが作ったかのように美しいチョコレート。
「ぅお!!すげえ!宝石みたいなのもあるぞ!」
「きれーい!コニー、1つもらいますよ」
そう言って俺の返事を待たずにつやつやのハート型のチョコを口に放り込むサシャ。
こいつ…一生許さねえ……。
『コニー。早く食べてくれるかしまうかしないとサシャに全部食べられちゃうよ』
また笑いながらエマが言う。
その通りだ。
全部食い尽くされる前に口に入れなければ!
これは俺が初めて好きな女の子からもらったチョコなんだから!
俺はさらに腕を伸ばしてきたサシャの手を軽く叩き、気になっていた宝石の形のチョコを口に運ぶ。
!!!
何だこれ美味すぎるだろ!!
パリッと崩れたチョコの中から、とろっとした別のチョコが出てきた。
こんなん高級チョコの店でしか買えないような代物だぞ。
『…ど、どうかな……?』
「めっっっちゃくちゃ美味い!!」
心配そうにたずねるエマに即答する。
「今まで食べたチョコの中でいちばんうめえ!」
『ほんと?お口に合ってよかった』
エマが安心したように顔をほころばせた。
予鈴が鳴る。
もう教室に戻らなければ。
「あ!!私次の授業の課題まだやってなかった!ミカサかアルミンに見せてもらわなくちゃ!」
気を遣ってとかじゃないと思うが、サシャが大慌てで屋上から去っていった。
残された俺たちも急いでその場を片付ける。
「チョコめちゃくちゃ美味かった!ありがとうな。頼まれた男共みんなにあんなクオリティ高いの渡したのか?」
『まさか。そんなことしないよ。他の人にはビスケットにガナッシュ挟んだようなのしかあげてない。……コニーにだけだよ』
…!?
え、俺にだけ??
驚いて隣を見ると、淡いピンク色の頬をいつもより鮮やかに染めたエマがいた。
そして俺をじっと見つめてくる。
青い瞳に自分の姿が映っている。
『コニー、聞いて。…私、コニーのことが好き』
「!!」
突然の告白にまた速くなる鼓動。
俺は夢を見てるのか??
ずっと片想いしてた相手が自分に好きって言ってくれたなんて。
『…その…返事は今じゃなくていいから……』
「いや、今言う!」
『ええっ!?』
俺は両手でエマの手をぎゅっと握る。
小さくて柔らかくて華奢な手だ。
「俺も!エマのことが好きだ!先越されたけど、告白するつもりだったんだ」
俺の言葉に大きく目を見開く彼女。
そして耳まで真っ赤になっていく。
「エマ。俺と、付き合ってください!」
『はい…!うれしい。勇気を出してよかった』
俺にだけ向けられた最高の笑顔。
握った手をそっと引っ張って、彼女を自分のほうに引き寄せようとしたその時。
キーンコーンカーンコーン
午後の授業の始業チャイムが鳴り響いた。
「やべ!走るぞエマ!」
『…うん!』
俺はエマの手を引いて屋上からの階段を駆け降りた。
ちくしょーあとちょっとでエマを抱き締められたのに。
まあ、晴れて彼氏彼女になれたんだから、そんなに慌てなくてもいいか。
後のお楽しみだ。
走りながらついつい口元が緩んでしまう。
今日は自分史上最高のバレンタインデーになった。
end
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