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30 ◇復縁したい
俺は元妻が離婚を切り出した原因ともなる事柄を……
俺の女性たちとの付き合いを元妻が知っていたということを……
元義従妹から聞いて、ストンとここにきてようやく腑に落ちたことがあった。
社の慰安旅行で樋口くんの奥さんがすごい発言をして驚いたと
いつかの日、同僚が俺に耳打ちしてくれたことがあって、そのことを
思い出したんだ。
当時も離婚を突き付けられた時も、全くリンクさせて考えたことは
なかった。
……が、元義従妹の話を聞いた今では、すごく納得できる。
あの時の眞奈の暴言は、俺の浮気に気づいていての『俺をあげる』発言
だったのだと。
あんなに仲良しでいつも居心地の良い家庭環境を整えてくれて
やさしかった妻がいきなり離婚通告してきたのだから、もっと自分の身辺
のことについて注視するべきだったのに。
何て俺は間抜けなんだろうなぁ。
妻の前では絶対的な紳士然として振舞い続けてた自分。
禁欲的な言動をし、遊び友達にするような卑猥な話は絶対出さなかった。
妻のことは結婚前も結婚後もお姫様のように思ってたし、扱っていた。
レスになったのも、考えてみればその延長線上にあったのかも
しれないと、今なら自分のことを冷静に分析できる。
眞奈は、自分のことをもう女性として見られないからなのでしょう?
と俺に問い詰めてきたけれど、違うそうじゃないんだ。
そうじゃぁ……ない。
当時は元妻に上手い具合に説明もできなかったので、彼女はきっと
今でも俺の当時の気持ちがそうだったのだと思っているに違いない。
逆っていうか、お姫さまだからそういう行為をすることは
彼女を汚す行為になると思ってしまったんだな。
❖いや、これもまたきれいごとなのかもしれない。
要は気がつけば手軽なところで自分の欲を吐き出せるようになり、
だんだん、彼女と性行為をする必要性がなくなっていったというのが
一番真実に近いのかもしれない。
これまであまり深く考えてこなかったので、振りかえってみれば――――
という話になる。
己の抑えられない性欲を他の女で満たしていたんだ。
言葉でも身体でも。❖
俺の禁欲的な姿しか知らない眞奈は天地がひっくり返るほど
驚き悲しんだことだろう。
これくらいは鈍感な俺にも想像はつく。
元義従妹に会って離婚の真相を知り、俺の気持ちの中で諦めきれない
気持ちがムクムクと芽生え始めた。
31 ◇元妻の恋人
それにしても、当初の離婚理由は俺のほうに原因があったとして、
今では本当に好きな男がいるらしいと聞く。
いつまでもストーカー紛いのようなことをして眞奈にこれ以上
嫌われたくないと思い、この2年間彼女のテリトリー付近には極力
近づかないように努めてきたけれど、もうこの際そんなことは言ってられない。
まずは眞奈の付き合ってる男を見つけようと思った。
何故か分からないが、眞奈にやり直そうと言う前に男に眞奈を
諦めさせたいと思ったのだ。
いや、諦めさせるなどということが無謀なことくらい分かってる。
分かってるけど、会いたいのだ。
どんな奴なのか会わずにはいられない気分なんだ。
もうこれは理屈云々ではない。
探偵でも雇おうかとも思ったのだが、思っていた以上にあっけなく
相手の男が分かった。
眞奈の毎日の行動を調べてみたら、いとも簡単に見つかり拍子抜け
するほどだった。
寺の坊さんのようだ。
なんでまた?
この問いかけはすぐに撤回する羽目になった。
想像していた坊さんではなかったからな。
『坊さんなのに坊主にしなくてええんかいっ、坊さんよ』っと
独り突っ込みしてしまったぜ。
いい年のはずなのに、長髪にむちゃくちゃガタイのいい
坊さんだった。
坊主などではなく、もしかしたら下働きか他の職で雇われて
いるのかもとも思ったが、調べてみるとちゃんとお坊さんの
ようなんだよなぁ~。
それにしても坊さんが女と交際なんかしていいのか?
寺の住職に言いつけてやるか!
破門されりゃあいいんだ。
寺に足繁く通ってる眞奈の様子を幾度となく見ているが、
幸せそうな様子が手に取るように分かる風情だ。
その様子に俺の心は怯みそうになるけど、嘗ては俺が眞奈に
愛されていたんだから、自信を持てよ瑛士……と自分を鼓舞した。
32 ◇俺はヘタレ
どちらにしても遠目でしか見ることができないので、どんな
男なのか実態が掴めない。
俺はついに会いに行くことを決心した。
今までの様子から、俺は眞奈が行かないであろう時間帯に
狙いを定めて寺に出かけた。
男はちょうど境内で庭掃除をしているところだった。
良かった外にいてくれて。
少しは敷居が下がったというものだ。
俺が近づくと男はこちらを見て微笑んだ。
「こんにちは。どうぞごゆっくり……」
「私は眞奈の元夫です」
俺が男にそう告げると、男の顔から先ほどの微笑みが消えた。
だが穏やかな雰囲気はなくならなかった。
ほんとにこの男が眞奈の相手なのか?
「ただのお参りではないということですか?」
「眞奈とはどういう付き合い方をしているのかあなたにお尋ねしたくて
きました」
「そうですか。
確かにお付き合いはありますが、どういうと言われましても答えに困りますなぁ」
「答えに困るようなら、恋人関係ではないと思っていいんですよね?」
「どうして私にそんな確認するようなことを言うのですか?」
「いえ、今の眞奈に恋人がいるのかどうかを知りたかっただけなので……
違うのならいいんです。
いきなり不躾な質問をしてしまいましてすみませんでした。
それでは……」
何か全てにおいて相手の男に対して瞬時に負けた感と敗北感を
感じてしまった俺は、相手がはっきりと眞奈の恋人だ、と言わなかったのを
いいことに、その言葉が出ないうちに、相手が言ってこないうちに、早々と
退散することにした。
知らず知らずのうちに小走りになっていた。
あーっ、俺はヘタレだ、クソッ。
それなのに、もうすでに退散体制に入っていたのに、男は渋い声で
俺の背に向けて声をかけてきた。
「私と眞奈は男と女の関係だよ」
つくづく腹の立つ男だ。
見た目どころか声まで艶があって男らしい良い声をしていた。
コメント
1件
読ませていただきました……。 瑛士さん、ようやく眞奈さんの本気の別れの理由に気づいたんだね。離婚の真相が「お姫様扱い」と「他の女で欲を満たす」の二重基準だったところ、心にグサッときたよ。そして元妻に新しい彼氏ができてたっていう展開……しかも相手が寺の長髪イカつい坊さんってギャップがエグい(笑)。最後、ヘタレ全開で逃げようとしたのに「男と女の関係だよ」って背中越しに言われて敗北感を味わう瑛士、切なくて笑ってしまった。この諦めきれない執着がこの先どう動くのか、続きがすごく気になります。素敵な作品をありがとうございます🤍🥀