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- ̗̀推しが尊い ̖́-
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桃蔦凛は、桃太郎の両親の元に産まれた。
故に幼い頃から鬼の危険性等についてよく言い聞かされていた。
『わかってるよ。パパ、ママ』
けれど、どこか息苦しさを感じていた。
(おにも、ももたろーも、なかよくできればなぁ)
従兄も親戚の話をつまらなさそうに聞いていた。
檸檬色の髪と瞳を持つ従兄。
幼い凛は彼に懐き、後ろをついて回った。
従兄の名前は『桃宮唾切』と言った。
『つーちゃん、あのねあのね、わたしね…』
『何だいそのあだ名』
『おなまえがつばきりだから、つーちゃん!』
凛が高校生になり、唾切が桃太郎機関に入っても関係は続いた。
友達の事、学校の事、やっぱり友達の事。いっぱい電話で話していた。
『つーちゃん、今日も守がね…』
『毎日その子の事ばかりだね』
だが、ある日凛の父が殺された。
殉職したと、父の部下に涙ながらに言われた。
父を殺した鬼の名前を聞き、凛の生き方はねじ曲がった。
『神示、守…?』
親友が鬼だったという事よりも、親友が自分の父を殺したという出来事が凛を修羅にした。
高校を中退し、桃太郎機関の父がいた隊に所属した。
『絶対に、許さない』
その後は色々な隊を転々とし、副隊長となった。
沢山の鬼を屠り成果を挙げていく中で、いつだったか、唾切に心配そうに言われたことがあった。
『隈がひどいね…。眠れているのかい?』
『いいえ。…パパの事を、思い出しちゃって 』
コーヒーを飲みながらふるふると首を横に振る凛の頭に唾切は手をのせた。
まるで本当の兄であるかのように、優しく凛に言葉を紡ぐ。
『無理は、しないようにするんだよ』
凛はその言葉に何も言えなかった。
そして、京都で唾切が殺されたと知った。殺したのは守だった。
そして、今。
[凛、やっと悲願を果たせるね]
「ええ…。やっとパパに笑って話せる。つーちゃんにも」
傍らにいる唾切の幻影と共に、守の喉に剣を突き刺そうとしている。
「ばいばい、守」
剣を振り下ろした瞬間、守が仰向けになり、その瞳が見えた。
漆黒の瞳には光は無い。
小さく唇が動いた気がした。
「もういいや」とでも言うように。
飛び散っていた血液が舞い、守へ集まっていく。
守が守ろうとしていた生徒達や桃華達が名前を叫んだ。
血液の中から出てきた守は今までに何度か見た鬼の状態に類似している。
精神的に追い詰められた状態で起こる、鬼特有の形態。
「暴走…」
[凛、今なら理性を失っているから殺しやすいよ]
「そうね、つーちゃん…」
囁くように助言する幻影に返事をし、守に向き直る。
理性を無くしているのか守は唸りながら凛へ向かってきた。
凛はそれをかわして背中を大きく切り裂く。
だが、守はものともせず振り返り、凛の首へ手を掛けた。
そのまま何度も地面へ叩きつけられ、骨が折れる音がした。
苦しい。息ができない。
片手は地面に爪を立て、もう片方は守の腕を掴んで止めようとしている。
その中で、微かにかつての親友の名前を呼ぶ声が凛の唇から漏れた。
「…まも、り」
一瞬だけ、力が弱まった。
守が自分の顔を覆い、呻き始める。
少し見えた顔には、迷いのこもった漆黒の瞳が微かに見える。
次の瞬間、守は完全に凛への拘束を解き、自分の胸をかきむしった。
まだ暴走してはいるが、かろうじて残った理性をかき集めているのだろう。
「リん、にゲて。モしくハ…ころシて」
その言葉にまだ理性が残っているのかと目を丸くした。
(暴走しているなら、他に被害が及ぶ可能性も高いわ)
凛は起き上がり、まずはその場にいる桃華を含む鬼達に怒鳴る。
「早急にここから退避しなさい!残ったら殺すわ!守は安心なさいっ!」
馨がその言葉に頷き、生徒達や桃華に逃げるよう促した。
皆が逃げたのを 守の肩を掴み呼び掛ける。
「守、起きて!」
自分が何をしているのかわからない。
ただ、反射的にそうしていた。
幻影が凛に語りかける。
[何をしているんだ凛、敵なんだよ?殺さなければいけない]
凛はもう聞いていなかった。
[親友だなんて関係ない。僕の仇は?伯父さんの…、君のパパの仇は?]
凛はただ、あの日愛した親友に呼び掛けていた。
[君はもう忘れて…]
「うるさい!」
凛は幻影に蔦を伸ばし、切り裂いた。
(今思えば、つーちゃんは仇討ちなんて望まない)
なぜ仇討ちなんて考え、教えたのか。
(きっと、私の心を守るため)
その時だった。
『凛』
唾切の、凛を呼ぶ声が聞こえた。
『もう、隈は消えたかい』
「これから消えるわ。…ありがとう、つーちゃん」
幻影はかき消え、あの日のもう壊れてしまった少女二人だけが残った。
今もまだ守は本能と戦っている。
本能がまだ理性を上回っているのか、殴られ、地面にめり込まされた。
「…っ!」
凛は涙を溢しながら守に呼び掛ける。
「お願い!戻ってきて…!」
今はただ、昔のあの場所に置いていかれた自分がこの体を動かしていた。
「傷つけてごめんなさい、何もかも…」
守の胸に拳をぶつけ、すがるように泣く。
大好きなあなたに、また逢いたい。
「お願いよ…守」
その時だった。
びちゃびちゃと足元に大量の血が落ちる。
見上げると、守の暴走は終わり、笑っていた。
もう限界なのか体の力が抜け、凛に横たえられた。
束ねられた長い黒髪が地面に広がった。
守は「あのさ」と少し掠れた声で凛へ話しかける。
腕はかろうじて動くのか、真珠のような肌を撫でるように指でなぞった。
「ありがとな。あいつら逃がしてくれて 」
傷だらけで笑う守は、あの日と同じ。
ただ、凛も傷だらけということと年齢が変わったということ以外は。
「心配させないでよね…」
涙がまた零れる。
守の頬に、凛の涙が伝った。
「本当に、海ちゃん達に言いつけるわよ?」
「勘弁しろよそれは!」
守が勢いよく起き上がり、「いってぇ…」と蹲る。
どちらからともなく笑いが込み上げる。
笑いが止むと、凛は守を抱き締めた。
抱き締める力を強くし、大事に言葉を紡ぐ。
「今までもずっと、愛してたわ。守」
守も凛を抱き締め返し、肩に顔を埋める。
「俺も、ずっと大好きだったよ…凛」
互いに抱き締め合い、今までのことを喋り、笑い合う。
愛しさ余って憎さ百倍とはよく言ったもので、その通りだった。
けれど、今は昔と同じく笑い合える。
壊れてしまったあの日の二人の少女は、また心を通わせた。
こんにちは、作者です。関係の湿度が高い親友って良いですよね。今回書けて大満足です。「アクションは?」ってなった方、ごめんなさい。今回は関係性重視で。次四季達なんで。許してください。あと、守と凛は本当に友人関係だけです。恋愛ではないです。
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コメント
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いやあああもう…! 読んでて泣きそうになったわ。凛の「パパの仇」に縛られてた激情と、それでも守を想う気持ちのせめぎ合いが切なすぎて。幻影のつーちゃんを切り裂いた場面で「そうだよ、それでいいんだよ!」って心の中で叫んじゃったよ。最後の「愛してた」「大好きだった」の重なり、関係性最高だわ。次は四季達ってことで楽しみにしてる🔥