今日の夢はとても鮮明に覚えている。
狐のお面をした少女が壮大な音楽に合わせて麗しく踊る。周りには、可愛らしい妖精と神秘的な木々や青い花に囲まれて、見入ってしまうほどだ。
「もう一度みたいなぁ…」
独り言のように呟いた。
「どうしたんだよ、優星。何を見たいんだ?」
「なんでもないよ。」
鮮明に覚えている夢だけど、うまく言語化できる自信がないから話すだけ無駄かもしれない。
「あ、そういえば今日転校生が来るらしいぞ。女の子かな?女の子だと良いな〜 」
キラキラした眼差しで空を見上げる慎は、俺の幼馴染だ。
いつものように時間ギリギリで教室に到着し、窓際一番後ろの席に座ると、いつもはない席が隣にあった。
「ふふ、転校生の子、優星くんの隣みたいね」
お茶目にそう呟くのは、俺の前の席に座る玲香だ。
「噂によると少し変わった子らしいよ。まあ噂だけどね。」
「へえ〜。」
興味なさげに軽く反応すると、その噂の転校生が先生と共にやってきた。
「はいはい静かにしてね〜。みんなも既に知っていると思うけど、今日から新しい仲間が増えるよ。さあ、自己紹介して」
「中空心暖と言います。花が好きです。 よろしくお願いします。」
長細い目にキリッとした鼻筋。黒い長髪でスラっとしたスタイルの彼女に、教室が少しザワつく。慎も目を輝かせていた。
「自己紹介ありがとう。席はあそこね。」
彼女は頷き、俺の席の隣に着席した。
「お隣、よろしくね」
「うん。よろしく。」
愛想のない返事をした途端、ピリッとする頭痛に一瞬だけ襲われた。
そして思い出すのはあの夢だった。
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