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『君の声を好きになってた』
tg視点
──先輩、
さっき、何を言おうとしたの?
放課後の教室。
日が差し込む窓のそばで、俺はひとり、ノートにペンを走らせてた。
……書いてるのは、生徒会の書類でも課題でもない。
ただ、どうしようもなくあふれてくる言葉を、文字にしてるだけ。
pr “お前のこと、ほんまは好きやったんちゃうかなって”
あれが、ただの気まぐれなら。
あれが、ただの冗談なら。
たぶん、こんなに胸はざわつかない。
でも、あのときの先輩の顔は、本気だった。
記憶がないはずなのに、心だけが俺を覚えてるみたいに――
あんなの、期待するなって方がムリだよ……。
pr ……ちぐ?
その声が、胸の奥まで響いた。
顔を上げると、いつのまにか教室の入り口に、先輩が立っていた。
pr ひとり?教室来たらお前おって、なんかラッキーやわ
tg …っ、びっくりさせないでくださいっ
pr 何書いてんの? 手紙? 日記?
tg ち、違いますっ!!
pr ははっ、そっかそっか~俺宛やったら読もう思たのに~
tg ぜ、ぜんっぜん違いますからっ!!!
もうっ……からかわれると分かってても、心臓に悪い。
でも、笑ってくれると、嬉しいって思っちゃうの、ずるい。
pr なぁちぐ、最近お前の声、なんか落ち着くわ
tg え?
pr なんか、ずーっと聞いてた気するねん…それって変かな?
心臓が、また跳ねた。
それ、ほんとは“ずっと話してた”からです。
毎日、“好き”って言い合ってたから。
俺が、先輩の声を、先輩の全部を、好きでい続けたから。
でもその全部を、先輩はまだ、知らない。
tg …変じゃないです
pr そっか。じゃあ、また聞かせてな
tg …え?
pr お前の声。なんか、聞いてると安心する
ねぇ先輩。
それ、昔も、同じこと言ってくれたんだよ。
“ちぐの声、好きや。落ち着く。”
そう言って、俺の髪を撫でて、照れくさそうに笑ってくれた。
忘れられたはずのその言葉が、
記憶じゃなく、心に残ってるなら――
もしかして、
先輩はもう一度、
俺のことを――
──「好きになりかけてる」んじゃないかって。
そう思った瞬間、
どうしようもなく、涙が出そうになった。
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