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傷ついた心、君のせい

第2話 - 第2話　はじめての目があった日

2025年04月25日

#恋愛

#高校生

#青春

ハルマキ

佐々木美咲は、いつもと同じように教室の隅で静かに過ごしていた。朝の授業が始まる前、クラスの中ではにぎやかな会話が交わされているが、美咲はそのどれにも参加しようとはしない。目の前の机に座り、黙々とノートを開いていると、周りの音が遠く感じられ、ただ自分の世界に閉じ込められたような気分になった。美咲にとって、学校はあまりにも広すぎて、時々その大きさに圧倒されることがあった。
その日も、他の生徒たちは友達と楽しそうに話している中、美咲だけは静かにペンを走らせていた。視線は自然と前方に向けられるが、そこに特別な何かがあるわけでもない。教室の前の方に座っている佐藤智也が目に入った。彼はいつものように、少し隣の男子と話をしていたが、その姿はやはり目を引いた。

智也は、学校で一番人気のある男子で、何をしても目立つ存在だ。サッカー部のエースで、成績も優秀で、誰もが彼のことを尊敬している。しかし、美咲はその人気を羨ましいとは感じたことはなかった。ただ、どこか心の中で「彼にどうしても興味がある」という気持ちが芽生えていた。それは、ただの憧れではなく、何かもっと深いものだった。智也のことを見つめることは、美咲にとって無意識に心を動かす行為だった。

その日、授業の合間に、何気なく視線を上げると、ちょうど智也と目が合った。美咲は驚き、目をそらしそうになったが、智也もまたその瞬間、少しだけ驚いた様子を見せた。それからすぐに、智也は小さく微笑んだ。

その微笑みが、美咲の心に深く刻まれた。智也が微笑んだ理由は分からない。ただ、目が合ったから、なんとなく微笑んだのかもしれない。それでも、美咲はその一瞬が自分にとって特別なものだと感じた。その後、しばらくは何も言葉を交わすことはなかったが、あの瞬間、二人の間に何かが生まれたような気がしてならなかった。

放課後、いつものように教室を出ると、智也がグラウンドに向かう姿が見えた。美咲は、またその姿に目を奪われた。彼が走る姿、ボールを蹴る姿に、何度も心を揺さぶられた。どうして、こんなにも彼に引き寄せられるのだろう。美咲は自分でもその理由がわからなかった。ただ、彼が目の前にいるだけで、心が高鳴るような感覚を覚えていた。

その日、美咲は帰り道にふと立ち止まった。グラウンドの隅でサッカーをしている智也の姿を見ながら、思わず自分がどうしてこんなにも彼を見ているのか、自問自答していた。彼のことを好きだとはまだ言えないけれど、少なくとも、智也が気になる存在であることは確かだった。

「こんなに気になるのは初めてだ…」

そう呟きながら、美咲はその場を後にした。歩きながらも、智也のことが頭から離れなかった。彼と目が合ったあの瞬間が、こんなにも自分の心を揺さぶるなんて思ってもいなかったからだ。

その日の帰り道、家に着くと、美咲は何も言わずに部屋に閉じ込めるようにして座った。心の中で、あの瞬間を何度も反芻していた。智也の微笑み、そして目が合った瞬間の静かな空気。何も特別なことがあったわけではないのに、その一瞬がこんなにも大きな意味を持つとは思ってもみなかった。

その後の数日間、美咲は毎日、教室で智也を見かけるたびに、胸の中で何かが動くのを感じていた。彼と話すことはもちろんなかったが、目が合うたびに少しずつ自分の中で彼に対する感情が膨らんでいくのが分かった。

そして、放課後、智也がサッカーをしているのを見たとき、美咲は思い切ってグラウンドの隅で立ち止まった。どうしても、彼を見ていたいと思ったからだ。すると、智也がふと美咲を見つけ、軽く手を振った。美咲は驚き、思わず顔を赤くして手を振り返した。

その瞬間、彼女の心はさらに高鳴った。智也が自分に気づいてくれた。それだけでも、嬉しさと緊張が入り混じった感情が湧き上がった。そして、美咲はその日から、ますます彼との関係がどうなっていくのかを楽しみに感じるようになった。

それでも、美咲はまだ自分の気持ちに整理をつけることができなかった。彼女は、智也のことをどう思っているのか、自分の中で確信が持てなかったからだ。しかし、その日以来、美咲は少しずつ、彼との距離を縮めるために一歩ずつ踏み出していくことを決意した。そして、智也もまた、彼女に対する気持ちに気づき始めているのだろうか。次に会ったとき、二人の間に何か新しい変化が訪れることを美咲は心の中で期待していた。