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ヴェルクはクールで表情すら変えないが一瞬、何か言葉に詰まった様子だった。
「はい。こちらとしても現状維持でお取引いただければ幸いです」
王族とは思えないほどに丁寧な口調で申し出る。ヴェルクは王子である前に商売人なのだと感じる。
これだけの会話で商談は終了らしく、シャインは横で身動きしないレイニルに笑いかける。
「そんなに緊張するな。ああ見えてヴェルク殿はオレと同い年だぞ」
「えっと……それって何歳ですか」
「なんだ、忘れたのか? 22だ」
夫の年齢すら忘れるほどに緊張しているレイニルに対して、正面のヴェルクも穏やかに笑いかけた。
「レイニル様。クラウディ家は王家と親密ですので、あなた様のことも存じ上げておりましたよ」
「え? そうなんですか?」
レイニルは驚いて顔を上げてヴェルクと目を合わせるが、感情の読めない漆黒の瞳が少し怖く感じた。
クラウディ子爵家はアメリア国で最大の水の商家らしいので、王家とも繋がりがあるのかもしれない。
おそらくレイニルが虐げられていた事実や地下牢暮らしだった事は伝えられていないと思われる。
「オレは次の仕事があるから行くが、レイニルはヴェルク殿から母国の話を色々と聞かせてもらうといい」
シャインは一人で席を立つと、レイニルとヴェルクを会議室に残して侍女と共に退室した。
地下牢暮らしで何も知らないレイニルが、アメリア国や家の事を知る良い機会だと思ったシャインの気遣いだった。
会議室にたった二人で沈黙が続く。クールなヴェルクは自分からは口を開かない。レイニルが恐る恐る口を開く。
「あの、アメリア国は今、どうなっていますか? 雨は降っていますか?」
「……降っていません。あなた様がいなくなってからは」
なぜだか、急にヴェルクの口調が冷たくなった。まるで雨女のレイニルがいなくなったせいだと言われた気がした。
さらにヴェルクは淡々と語り続ける。
「水はアメリア国の財源です。このまま雨が降らなければ商売ができません。あなた様のご実家も破産されるでしょうね」
「そんな……!」
自分を虐げたクラウディ家だが、レイニルにとっては家族。両親の顔すら覚えていないが、それでも自分のせいで家を壊したくないと思った。
サンディ国に嫁いだ今も、実家どころか国に迷惑をかけ続けている罪悪感の重さに心が潰されそうになる。
しかも未だサンディ国に雨を降らせずにいる。レイニルは誰の役にも立てない自分を責めるしかなかった。
「私……やっぱりアメリア国に帰るべきなのでしょうか」
あからさまに落ち込んだ様子を見せたレイニルを見て、ヴェルクは微かに口の端を上げた。
「その事も含めて、国王陛下がレイニル様にお会いしてご相談したいそうです」
「私がアメリアの国王様と?」
しかしレイニルは、アメリア国では子爵家の次女でしかない。しかも今は隣国のサンディ国に嫁いだ身。
このタイミングで母国の国王が会いたいとは、どういう事なのだろうか。貴族の生活を送った事のないレイニルには成り行きが想像もできない。
そしてヴェルクはレイニルに考える時間を与えない。
「それでは、今からご一緒にアメリア国へと参りましょう」
「え、今から……ですか? シャインに相談してから……」
「ご心配いりません。シャイン陛下には事前にお話を通してあります」
「……そうなんですか? 分かりました」
物事の手順など知らないレイニルは、あっさりとそれを信じてしまった。
二人は一緒に会議室を出ると、そのまま城の外へと出る。
城門の外で待機していた馬車に乗り込み、アメリア国へと出発する。
コメント
1件
あっ第7話読んだよ〜!😭💕 ヴェルク、めっちゃクールなのに「雨が降ってない」って言った時の口調が急に冷たくなって、レイニルが罪悪感で潰されそうになるの切なすぎる…! でも国王が会いたいって話、シャインに内緒で連れてかれちゃう展開がもう気になって仕方ない! このままアメリア国に連れて行かれて大丈夫なの!? 次が待ちきれないよ〜!!🌸
眠狂四郎
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桜咲かな
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桜咲かな
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桜咲かな
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