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「あ、君!Vとジョングク呼んできて!もうすぐ撮影だから」
「はい!了解です!」
先輩スタッフに頼まれた僕は、明るく答えた。
僕は今日、世界的アイドルグループ、BTSの世話をするスタッフとして、初めての仕事をしている。
迷惑をかけないように、邪魔にならないようにと意識して、かなり緊張したが、この数時間で少しずつ慣れてきた。
僕は少し離れた所にある控え室に向かい、扉を開ける。
他のメンバーはもう皆スタジオに行ったのだろう。
そこにはVさんとジョングクさん、他数名のスタッフが居るだけだった。
「Vさん、ジョングクさんそろそろ撮影始まります!」
「あ、もう時間かぁ」
「はーい」
2人は手を繋ぎ、おもむろに立ち上がった。
そこで僕はほんの少しの違和感を覚える。
…恋人繋ぎ。
この2人は仲が良いって聞いていたけど…メンバー同士で普通こんなことするのか?
「あれ、どうしたの新人くん」
Vさんに声をかけられて、僕の一瞬フリーズした脳はすぐに元に戻った。
「す、すみませんっ!えっと、こっちです!」
いけない。仕事仕事!
僕は2人の前に立ち、スタジオへ向かう。
廊下には僕たち3人しか歩いていない。
うん。
…気まずいな。
「ヒョン」
すぐ後ろから、ジョングクさんの小さな声がした。
「何?」
Vさんの声。
「終わったら〜〜〜しょうね…」
僕は、振り返らなくとも2人の距離が近いことが分かった。
おそらくこの声の小ささから、お互いの耳もとで話しているのだろう。
「今の、誰にも言わないでくださいね」
またもジョングクさんが囁く。
「言わないよ。てか、言ったらおれたち詰むでしょ」
「ふふ、それもそうですね」
「じゃあ、…後で」
「うん」
……
なんだ。
今の会話。
他人に言ったら詰むこと?
何それ?
僕は歩調が乱れないように頑張る。
「ヒョン、顔赤い」
「グガのせいだよ」
「んふ、可愛いですね」
「うるさい」
「もう一回します?」
「……ここではダメ」
一瞬、僕の足が止まりかけた。
頭の中は真っ白になった。
いや。
何をするの。
何を。
あ〜………待て。
これは聞いてはいけない気がする。
そう思った直後。
背後から、ちゅ、と小さなリップ音がした。
……?!
…………?!?!
僕は振り返ろうとする頭を必死に抑えた。
「……グガ」
「何ですか」
「新人くん、いるってば」
「分かってます」
「聞こえちゃう」
「聞こえないでしょ」
「でも…」
「別に、聞こえてたとしても、これくらい良いんじゃないですか?」
「あは、それもそっか」
いやよくないです。
ものすごーくよくないです。
僕は心の中で叫んだ。
どうしてそんな平然としているんですか。
僕は人生で今以上に空気に憧れることは無いと思う。
2人が笑う。
僕はさらに気まずくなる。
そして最悪なことに、後ろでジョングクさんがまた何か囁いた。
「あーあと、するときはあんま大きい声で喘がないでくださいね?この前ユンギヒョンにバレそうになったので」
「そ…それはグガが激しくしすぎたからだろ…!」
「頑張って耐えてください」
「もーやぁだぁ…」
「あーそんなこと言うならやりませんよ?」
「うっ…それは…」
「ね、もう我慢できないんでしょ?ヒョンが耐えてくれれば望み通りこの後してあげますから」
「や、やめてよ…その話!もうスタジオ着くんだから」
「ヒョン、前に勃ったまま撮影頑張ってたことありましたよね〜」
「バッ、誰のせいだよ…!」
やめてください。
本当にやめてください。
世界的スターがそんな話…フキンシンにも程がありますっっ!!
僕はスタジオに着いた瞬間、2人から逃げるように離れた。
他のスタッフたちに紛れたところで、深く息を吐く。
そのとき、先輩スタッフが通りかかった。
「あ、呼んできたか!ありがとな」
「はい……」
「お?疲れたか?」
「いえ……あの2人って…」
「うん?」
僕は言葉を飲み込んだ。
聞けるわけがない。
「なんでもないです!」
先輩は不思議そうな顔をした。
そして、Vさんとジョングクさんを見るとあっさり笑う。
「またイチャイチャしてる?」
「えっ…あ…はい」
「いつものことだから気にしなくていいよ」
「……そ、そうなんですね」
先輩は何事もなかったように歩いていく。
僕はその背中を見ながら思った。
やっぱり、この現場。
流石にキスとか行為をしていることは知らないと思うけれど……
僕以外、誰も気にしてない。
そして、これからもきっと、Vさんとジョングクさんは平然とイチャつくのだろう。
仲が良いのは良いことだが…
……せめて、あんな話はもう少し控えてほしい。
僕はスタジオの隅でそう願った。
end.
#グクテテ
⁹⁷.국
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コメント
1件
読了しました!「聞こえちゃう」を体現する新人くんの地獄絵図、めちゃくちゃ面白かったです…笑。設定のフックが秀逸で、読者も新人くんと一緒に「聞こえちゃってる」感覚になるのが素晴らしい。平然とイチャつくVとジョングクの温度差も絶妙で、続きが気になります!