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僕は恋をした事がない。
誰かを、恋愛的に好きになった事がないのだ。好意を寄せらる事はあった。
異性からも、同性からも。
でも、僕は彼らの気持ちが解らなかった。解りたいと思った事がなかった訳でもない。
でも、心の奥底でそれを否定し続ける自分がいた。
ダメだ、全然思いつかない。横を見ると、今か今かと僕の返事を待つ瀬尾と目があった。
「…ええっと」
「はい!」
何だこの流れは。
ガラガラ
ドアの方に目を向ける。やって来たのは木村だった。
「何してんだ、お前ら」
木村は俺を一瞥した後瀬尾を見た。
「えっ、あ」
「サボりは見過ごせないな」
「いっ今用が終わったんすよ!じゃあ俺戻りますね!!先輩、考えててくださいね!」
そう言って瀬尾はさそくさと保健室を出て行った。木村を見た途端の焦り用は凄かった。先生が怖かったのか、ただただ真面目なのか。
「…」
そんな考えを巡らせていると、先生の視線に気づいた。
「及川、あいつと何の話をしてたんだ?」
「え、、ただの会話です」
「返事とか言っていたが?」
「あー、アレは」
好きなタイプを聞かれた。なんて言いずらい。もし聞かれても答えられないし、。
「えーと…」
「やっぱりアイツ、」
「別に、というかこれはプライバシーに関わります」
「お前なぁ」
そう言って木村はため息をついた。僕は瀬尾くんのプライバシーを守ったのだ。そういう事にしといて欲しい。
「及川、明日1限目に小テストをする。赤点取ったら、分かるよな」
木村は微笑んで見せた。
まず、入院のため先週はずっと学校を休んでいた。それに加え、授業に集中していなかった。そして今日も1日サボってしまった。
「……。」
「大丈夫だ。先生のテストで赤点取る奴は居ないに等しいからな」
そうだった。いつも赤点を取りまくっているやつでさえ、先生のテストでは赤点を取らぬよう赤点ギリギリを死守していた。
「…完全に脅しじゃないですか、、」
「はは」
木村は楽しそうに笑った。
「先生ってそんなに怖いか?」
「まあ、優しそうには見えませんが」
「正直だな」
楽しそうに笑う木村。
…ハルもそうだった。ハルは少し不良っぽい見た目をしていたからか、ハルをよく知らない奴らには怖がられたりしていた。いや、やっぱり全然似てない。先生は多分中身も不良だろう。
「どうした?」
「、、いえ、」
「なんだ?まあいい。またプライバシーとか言われてもあれだしな。」
「はは、」
僕は苦笑した。
「なあ、及か」
キーンコーンカーンコーン
木村が僕が名前を呼び掛けたのと同時にチャイムがなった。木村は腕時計を見て、僕を見た。
チャイムが鳴り終わる。
「あーあ。先生用事ができた。」
たぶん帰りのホームルームだろう。
「先生、さようなら」
「ああテス勉、頑張れよ」
そう言った先生は僕の頭をぽんっと軽く叩くと、保健室を出て行った。
テス勉か…。なんとなく先生に叩かれた頭をさすった。
最後のアレは僕が赤点を取ると思っての行動だろう。そう解釈しても間違いはないはずだ。
そういう事なら赤点を取る訳にはいかない。というか僕はまだテストで赤点を取ったことは1度もない。今回がやばいだけだ。
僕はスマホを取り出した。