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「初めまして。榊と申します」
2人にも名刺を渡す祐誠さん。
「すごいんですね、榊さん。あの榊グループの社長さんなんて本当にすごい」
希良君が言った。
「彼は、理科の先生になりたいって頑張ってるんですよ」
私が言うと、
「理科の先生。それはすごいね。大学はどこに?」
祐誠さんが尋ねた。
「近くの東英大です」
「渡辺君は優秀なんだね。あの大学なら理系が強い。立派な理科の先生になれる。頑張って」
「あ、ありがとう……ございます。そうなれるように頑張ります」
何だか嘘みたい。
祐誠さんが希良君を励ましてる。
希良君も笑顔で応えて。
この空間、かなり不思議だ。
「じゃあ俺達は失礼します」
慧君は……
祐誠さんとは話さないんだね。
東堂社長と慧君は、みんなに挨拶してから先に店を出た。
それから、祐誠さんと希良君は、カフェの離れた席に別々に座ってパンを食べた。
そのうち2人の他にもお客様が来て、また少しだけ慌ただしくなり、気づけば閉店時間を迎えていた。
「雫さん、ちょっといいですか?」
「どうかした?」
カフェの片付けをしてたら、果穂ちゃんに声をかけられた。
「あの……」
「う、うん」
果穂ちゃん、いつもと様子が違う。
明るい笑顔が消えて、ちょっと……深刻そうな表情。
「昼間、みんなが集まりましたよね。榊社長さんとかイケメン大学生君とか……」
「そ、そうだね」
「雫さんって……あの中のいったい誰が好きなんですか?」
えっ?! いきなりの質問に驚いた。
「果穂ちゃん、どうしたの? 誰が好きって……どういうことかな?」
「この前、イケメン大学生君とここでニコニコ話してて、榊社長さんにはパンの配達もして。それに、慧さんとも仲良しで」
声のトーンがどんどん低くなり、果穂ちゃんらしさが無くなってる。
少し……怖いよ。
「私、イケメンの男性達に媚び売ってる雫さんのこと、見ててイライラするんですよね」
え……果穂ちゃん?
「雫さんって、「別に私は」みたいな顔して、結局いろんな人と仲良くして、ちょっとズルくないですか?」
「そんな……」
「本当にイライラします! ハッキリして下さいよ、雫さんは誰が好きなんですか?」
果穂ちゃん、怒ってるの?
こんな顔で怒るところは初めて見たし、急にそんなこと言われても……私はどう答えたらいいのかわからない。
だって、誰が好きかなんて、自分でも全然わからないんだから。
「果穂ちゃん、どうしてそんなにムキになって私の好きな人を聞くの?」
「雫さんがそんな態度なら、私、ハッキリ言います。もうずっと前から……」
強気な態度だったのに、言いかけて少し戸惑ってる。
「……わ、私、慧さんが好きなんです!」
えっ!? 嘘……本当に?
「果穂ちゃん……」
驚き過ぎて言葉が出ない。
「私……慧さんのこと、すごくすごく好きなんです。こんなこと誰にも話したことなかったですけど、雫さんの態度を見てたら、何だか腹が立って言いたくなりました」