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今、事件が起きている。高校二年生に無事進級出来たは良いものの、新学期最初にこれはキツすぎる…。だって!!!
隣の席の人が学校一美人だと有名な【クララ・スミス】さんだから!!!
でもとりあえず、挨拶はしなければならない。今まで人見知り兼陰キャ過ぎて友達が0人だったが、二年に進級したら隣の人に話しかけると決めたのだ!
「こ、こんにちは…。」
僕、よくやった!人生で一番緊張したが、挨拶をやり遂げたぞ!さて、返事は…?
「…………。」
む、無言…?まあそうだよな…。知らない人から、…しかもいかにも陰キャそうな僕が話しかけても学校一美人のスミスさんは見向きもしないよな…。それに外国から来た人だし、日本語分からないかもしれないし…。
で、でも!こんなところで挫ける訳には行かないんだ!僕は!友達作りを成功してやる!
「ぼ、僕の名前は【佐藤 蓮太】です。これからよ、よろしくお願いします…。」
よくやった!よくやったぞ!もういっそのこと返事が返ってこなくてもいい!ここまで会話をしようと試みた自分を褒め讃えてやる!偉い、偉いぞ!
「…き…。」
き…?
「君によく似合った綺麗な名前ダネ。ワタシの名前は、【クララ・スミス】。ぜひ、綺麗なナマエの持ち主であるキミにクララと呼んで欲しいナ。」
…ん?ちょっと待て。理解が追いつかない…。セリフがキザすぎないか…?
…いや、勘違いかもしれない。うん、きっと勘違いだ。人に名前を教えてもらうのが久しぶりすぎて、きっと幻聴を聴いたんだ。
とりあえず会話が出来ているのは確かだし、こちらも言葉を返さないと!
「…ぼ、僕のことは蓮太と呼んでください。」
「ワタシに名前を呼ぶことを、許してくれてどうもアリガトウ。一音一音タイセツにして、君のナマエを呼ぶことにスルヨ。」
………。
勘違いじゃなかったーーー!!!
う、嘘だろ!?才色兼備、文武両道のクララさんが、キザなセリフを日常の言葉として使う人だったなんて…!
………いや、もしかして…!?
「あ、あの…。」
「ナンダイ。綺麗なキミよ。」
「日本語ってなにで勉強しましたか…?」
「齋藤英孝サンの動画を見て勉強シタヨ。でも今は君のコトしか見てナイヨ。」
やっぱり!キザなセリフを使うことで爆発的に売れたあの芸人!齋藤英孝の動画を見て勉強してしまったのかーー!
これは…、やばいな…。クララさんと話す度に心が落ち着かなくなってしまう…。悪い意味で。
…僕、本で読んだんだ!友達とは、一緒にいて心が落ち着く人!つまり!クララさんと友達になるためには、このキザなセリフを使うことをなんとか止めさせなければならない!
そこで決心した。
《クララさんにまともな日本語を教えよう》
と。
僕は、クララさんにこのことを伝えることにした。凄く辛い事実だと思うけど仕方ないんだ。ごめんなさい、クララさん。
「く、クララさん。落ち着いて聞いてください…。」
「ナンダイ?」
「その話し方…、実は普通の日本語じゃないんで…す。」
「どういうことダイ?その可愛いおクチから教えておくれヨ。」
僕は息を飲んでクララさんの瞳を真っ直ぐ見つめた。
「…実はその話し方は、【キザな話し方】と言うんです…。つまりですね、クララさんは今、…無駄に格好付けてロマンチックな言葉を日常会話として…使っているのです…。」
クララさんはショックを受けたような顔をした。
そうだよな…、辛いよな…。でもそこを耐えて欲しい。耐えてこそ、まともな日本語を話せるようになるのだから。
「じゃ、じゃあ、ワタシは日本に来てから一年間、無駄にカッコつけてロマンチックなコトバを使っていたというコトかい…?」
「そういうことに…、なりますね。」
クララさんは一瞬動きが止まったが、急にこちらに椅子を近付けてきて僕の手を握りしめた。
もちろん僕は人見知り兼陰キャなので、「ひょえぇ…!?」と、お世辞を言おうにも言えないほどにきもい声を出してしまった。穴があったら入りたいとはこういうことなのだろうか…。
「蓮太サン!ワタシにフツウの日本語を教えてくれるカイ…!?キミに教えて欲しいンダ!ワタシには君しか居ないのダカラ!」
「わ、分かりました…。分かりましたから…、その…、手を…。」
そう言うと、クララさんは飛び跳ねるように僕から離れて、顔を真っ赤にした。
「ご、ゴメンナサイ!キミの手を思わず握ってしまった…。キミが魅力的スギテ…。」
「い、いや大丈夫です…。」
二人の間にシーン…と気まづい空気が続く。
この空気を断ち切るにはどちらかが話を切り出すしかないが、僕は人見知り兼陰キャだし、クララさんに託すしか…。
そう思ってクララさんの方を見ると、口を鯉みたいにパクパクしながら、頬を赤く染めていた。
こ、これは、クララさんには託せないかも…!?
…僕がこの空気を断ち切るしかないのか…。めいっぱい拳をギュッと握りしめて、勇気を振り絞った。
「く、クララさん!普通の日本語を話すための第一ミッションなのですが…。」
「は…ハイ!教えてオクレ、カワイイ君ヨ…!」
「言葉の最後に後付けしている言葉を言わないようにしましょう…!」
~第2話へ〜