シェアする
──二人で、落ち着いた和風の居酒屋に入り、向かい合って椅子に腰かけた。
「……急に、飲みに誘ったりして……」
松原女史が言い、私の顔をまじまじと見つめると、
「……まさか、あなたも先生のことが、好きだとかいうわけじゃないわよね?」
頼んだお酒の一口をごくりと飲んで、探るようにも訊いてきた。
「いいえ…」と、首を横に振って応える。
真梨奈のあんな姿を目にした後だったけれど、不思議と自分の気持ちは冷めていた。
「そう…良かった。あなたまで政宗先生のことが好きだったりしたら、それこそ収拾がつかないもの……」
あの医師のことを、何か知っているかのような口ぶりに、
「……松原さんは、政宗先生のことにお詳しいんですか?」
思い切って話を振ってみた。
「詳しいって程でもないけど……、」
私の問いかけに、もったいをつけるように、そう前置きをすると、
「もう何度も、同じようなケースを見てきたからね……」
サワーグラスを手に、女史は仕方なさげな笑い顔を作って見せた。