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私は太宰。太宰治だ
現在は武装探偵社の社員を、
以前はポートマフィアの最年少幹部をしていた。
ポートマフィアの幹部だった頃、
1人の友人を無くした。
織田作、織田作之助だ。
彼は優しかった。
言葉には出さないが私たち友人に優しかった。
いや、私たち友人にも優しかった。
彼は身寄りのない孤児たちを養い守っていた。
でも、そんな優しかった織田作はもう居ない。
亡くなったのだ。
彼が生きていた頃に
私たち友人3人で行っていた酒場も今は行かない。
優しかった彼を思い出し寂しくなってしまう。
話は変わるが、知っての通り私は自殺癖がある。
何時も、未遂で終わるのだけど。
今から話すのはあの時の話。
バシャンと水音を立てて私の体が沈む。
口から溢れ出す空気の泡は上に行きやがて消える。
身体の中の酸素がやがて無くなってゆく。
意識が段々と薄れていく感覚が分かる。
自殺なんてしているけれど、なんだかんだ言って
楽しい人生だったのかも。
頭に色々な人の顔が浮かんでくる。
探偵社のみんな。敦くん。ポートマフィアのみんな。
中也。安吾さん。それから、織田作。
でも、もうすぐ織田作の所へ行ける。
会えるだろうか。会えない、だろうな。
私は沢山の人を殺し、不幸にした。
皆に優しかった織田作とは違う。
織田作は天国。私は地獄。
当然の報いか。
そんな事を考えていた。
その時、水中にすっと手が伸びてきた。
その手は私の腕を掴み強い力で引き上げる。
あぁ、結局、また死ねなかった。
誰だろうか?
また、敦くん?
探偵社の誰か?
マフィア?
通りすがりの人?
警察?
しかし、どれも違った。
「太宰」
私の名が呼ばれた。
薄れゆく意識の中で
「太宰」そう呼んだ声が響く。
この声は、織田作?
そうだ、織田作の声だ。
「おだ、さく?」
とうとう私、死んだんだ。
きっとここは死後の世界。
「太宰、お前は未だ此方にくるな」
そこで私は意識を手放した。
気がつくと探偵社の医務室だった。
皆が私の名を呼ぶ。
そして、私は先程のことを思い出した。
私は探偵社を飛び出し、先程の川まで走った。
皆は私を呼び止めたが止まろうとは思わなかった。
「織田作ッ」
呼んでも返答は無い。
織田作はもうそこにはいなかった。
私が見た幻覚だったのか。
そうとも考えた。
しかし、織田作がいた場所に一冊の本が落ちていた。
拾い上げた。
それは織田作が大切にしていた本だった。
不意に織田作の墓に行きたくなった。
友人だったが、彼が亡くなり、
楽しかった日々を思い出してしまう。
だから、墓参りには1度も行けてなかった。
その本を握りしめ、私は墓まで走った。
買った花を供えた。
天に居る織田作を想い手を合わせた。
その時、私の手から本がすり抜け、落ちてしまった。
拾おうとすると、本に書かれた文字が見えた。
それは、織田作の筆跡で
太宰、お前はいつもよくやっているな。
でも、未だこっちには来るな。
お前が年老いて死んだら、安吾と3人で飲もう。
俺はあの時死んだことは後悔していない。
だから、心配するな。
何時もお前らのことは空で見守っている。
そう書いていた。
これを読んで、私は泣いた。
今までにないくらい大声を上げて泣いていた。
もう、悲しくない、と言えば嘘になるかもしれないが
早く死にたいと思う気持ちは少し減った気がした。
今日はあの酒場に行こうか。
今はもうあの3人で飲むことは出来ないだろう。
しかし、いつも隣に居る。
寂しくは無い。
あの時と同じものを頼んで飲んだ。
「織田作、ありがとう」