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裏五条
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桜咲かな
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2人が離れた後、亜矢は小さく息を吐いたが、いつもの彼女らしくグリアを突き放そうとしない。
今、やっと全てを思い出した。
とは言っても、あの時に自分の魂をグリアに注ぎ、倒れた後の空白時間の記憶はないが。
「グリア……生きてる……」
亜矢は、グリアの存在を確認するようにじっと見上げる。
「ああ? 生きてるぜ。あんたもな」
何が起こったのか、亜矢には分からない。
『魂の器』の儀式の後に、自分は死んで、グリアは永遠の命を手に入れた、と。
その結末の後、何が起こったのか。どうして今、自分は生きているのか。
だが、確かな事実は、今もこうして、グリアも亜矢も生きて存在している事。
2人が生きる上で縛るものは、もう何もないと思えた。
「良かった……ぁ……」
亜矢はポロポロと涙を流し、グリアの体を自らの両腕で抱き締める。
今までにない亜矢の行動にグリアは意表を突かれるが、すぐに気を取り直して亜矢の顔を上に向かせ、指先でそっと涙を拭ってやる。
「言っただろ? あんたを生かしてやる、と」
「うん……ありがとう」
普段は面と向かって言えないような言葉が、今は不思議なくらい素直に出てくる。
「やっと……あなたが誰なのか分かったよ」
「ああ、記憶を戻したからな」
「そうじゃない、あなたの正体。あなたは死神じゃなかったわ」
命も、記憶も取り戻してくれた人。奪うのは、魂でなく唇と心だけ。
正直、彼の正体は何であるかは、もう問題ではない。
「残念だが、オレ様は死神だぜ」
「じゃあ、ヘタレな死神」
そんな今の亜矢にさえ、少なからずグリアは惹き付けられるものを感じた。
グリアはその衝動に動かされるようにして、再び重ねようと顔を近付けるが———。
「あの〜……」
亜矢とグリアの背後、玄関のドアの前に誰かが立っていた。
亜矢はその人の存在に気付くと、反射的にグリアを力いっぱい突き飛ばした。
ドガっ!!
「でっ!!」
突き飛ばされた勢いで、グリアの後頭部と背中は壁に激突した。
玄関の前に立っていた少年は、申し訳なさそうに頭をかいた。
「あっ、取り込み中だったかな……ゴメン」
照れながら、笑う少年。
亜矢は突き飛ばしたグリアに構わず、とっさに叫んだ。
「リョウくんっ!!」
リョウは亜矢の反応を見て、少し驚いた様子だった。
「あれ、亜矢ちゃん、記憶戻ったの?」
リョウが言い終わるよりも前に、亜矢は駆け出してリョウに正面から抱きついた。
「リョウくん!! 良かった!! いつものリョウくんに戻ったのね!!」
「えっ!? え、あ、亜矢ちゃ……!?」
さすがの天使も、亜矢のこの行動には意表を突かれたらしい。言葉になっていない。
リョウは顔を赤くしながら、気を取り直して亜矢に言う。
「ボク、左隣の部屋に住む予定だから、挨拶に来たつもりだったんだけど」
つまり、今までと同じという事だ。
グリアは後頭部の痛みを堪えながら、つまらなそうな顔をして床にあぐらをかいている。
「亜矢ちゃん、ごめん。……本当に……」
一言では言い切れない今までの思いを抱え、リョウは小さく言った。
「え、何が? 何でリョウくんが謝るの? またお隣さんだなんて、嬉しいわ!!」
亜矢はそんなリョウに笑顔を返した。
リョウは救われた気がした。そうだ、この笑顔が……そんな彼女が……いつも……。
「天界の方は? 大丈夫なの?」
「あ、うん。ボク、天界に仕えるのは辞めて、フリーの天使になったんだ。だから、このまま人間界に住んじゃおうかな〜なんて」
「って事は、もしかして……」
亜矢は何を思い出したのか、グリアの横を駆け足で通り過ぎて自分の部屋へと向かう。
コメント
1件
やばい、このエピソードガチで泣いたわ…。亜矢が記憶戻ってグリアに「ありがとう」って素直に言えるの、めっちゃ尊い。しかもリョウくんがまさか隣の部屋に引っ越してくるとは!しかもフリーの天使になって人間界に住むって…二人とも生きてて、みんな再会できて、本当に良かった。でもグリアが最後に壁に叩きつけられてるの、ちょっと笑ったw 次が気になる!