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遠い昔の夢を見た
俺がまだ、幼かった頃の
カーテンの隙間から差し込む光で目が覚めた
鳥の囀りが遠くから聞こえてくる
…確かこの鳴き声はツグミとかいう鳥だったか。
この鳴き声の主が誰であろうと俺には関係ないのだが。
そんなことを考えながら上半身を起こす
今日はやけに頭が痛い
薬でも飲んでおけば治るだろう
少々痛む頭を押さえながら家の階段を下る
親は多忙の為最近は家に居ない
いつにも増してやる気が起きない
いや、最近はずっとそうだ
特に自分のやりたいことも見いだせず大事な高校生活の1年が過ぎようとしている。
勿論勉強や運動は人よりやっているしやれている、という手応えもある。
だが何をするにしても何も感じない
「そういう年頃だ」とか言われるが俺はそうは思わない
俺のしたいことはなんなのか…
それは今考えるべきことでは無い、とでも言うように水道の蛇口を捻りコップに入れた水を煽る
頭痛が酷くなり吐き気までしてきて流石にヤバいと感じたのは4限目のときだ
視界が霞む
周りの声がフィルターを通しているように聞こえる
このままではノートを写すことすら出来なくなるだろう
それは流石に不味い
俺は早退することになった
どうせ家に帰っても親は居ないのだ、早退したところで気付かれないだろう
だがそれは誤算だった
俺が家に帰ってきたら親に通知が来る、というシステムが頭から抜けていた
だがもう帰ってしまったのだからしょうがない
気付かれていないことを祈るのみだ
今は考えるのも嫌な程頭が痛い
今日は塾がある、それまでに治さなければ
今はとにかく家にある薬を飲んでベッドに身体を預けた
それからどれくらい経っただろうか
俺は玄関のドアが開く音で目が覚めた
…俺の嫌な予感が当たった
今日は親が帰ってくる予定では無かったのだが親が帰ってきたということは俺が予定より早く帰ってきたことが親にバレたのだろう
まだ痛む頭痛が更に酷くなるのを感じた
小さく舌打ちしつつ階段を降りる
「…母さん………」
やはりそこにいたのは母だった。父は居ない。そもそも単身赴任なので当然だろう
「白夜…!!」
「あ……いやこれは…」
視線が泳ぐ
母の目は直視出来なかった
「心配したのよ!!!」
「………え?」
俺の予想に反して親は心配の色を見せた
「先生から連絡があったの、早退したって」
ああそうか、学校側からも連絡があったのか
今まで早退などしたこと無かったから知らなかった
でもまあ普通に考えればそうか
「…大丈夫なの?」
「ああ…うん……大丈夫」
安堵しつつ答える
「ああ良かった…」
まるで自分のことかのように喜ぶ
「………そ、そう…」
「単位は落とさずにすんだのね…良かった…」
「っ…………」
「ほんとに…良かった………」
そういうと母は俺に抱きついてきた
だがその腕は体温を感じられ無かった
例えばそう、他人に触れられているような…
「ぅ………」
唐突に吐き気を感じてよろめく
「じゃあお母さん仕事戻るね」
仕事を無理矢理抜けてきたのだろう。
母はすぐに帰って行った。
母は最後まで笑顔だったが俺にはそれも他人行儀に見えた
「ゔっ………おえっ…」
母が帰ったあとすぐトイレに駆け込んだ
流れていった水を眺めながら吐き気を抑えるように腹をさする
この世界は明るすぎる
起きてから目を瞑るまで光が無いとき等ない
そんな光から俺は目を背けていたい
現実を見てしまうから
でもずっと俺は直視させられている
親という現実から
この白夜はいつ消えてくれるのだろうか
コメント
10件
あらヤダいいお母さん…ってなってたのに単位のとこで横転した しんどいね…
カスな母は嫌いやがそんな母持ちの子は好きなんよなぁ… こういう母いたらまじで嫌だよ
途中まで「良い母だ…」と思っていたのに、「単位は落とさずにすんだのね」で「ん?」ってなりました 心配してたのそこか…! びゃくたんの過去(?)はこんな感じなんですね……こりゃしんどいわ どうしようもない不安感が押し寄せる地の文、最高です!面白かったです!