「ちゃんとやってや!忙しいのはお前だけちゃうんやで!」
お、なんだなんだ、もめごとか?
大声の主はわかってる。大先生だ。
保育園時代からの僕の幼なじみ。
声と態度の大きさで人に負けるのを見たことがない。
怒鳴られているのはサッカー部のコネシマだな。大先生の前で掃除をさぼろうなんて、いい度胸だ。
ちなみに俺は、チーノ。
「大先生、がんばってるな。」
俺にそう話しかけてきたのは猫宮。
猫宮は小学校五年生の時に転校してきて、最初に仲よくなったのが僕と大先生だった。
それ以来、僕たち三人は一緒にいることが
多く、鬱軍団とでも呼ばれ始めた。
未だに慣れてへんけどな。
「部活があるから急いでるって言ってるだろ!俺はもう少しでレギュラーなんや!」
掃除を適当に終わらせようとしたコネシマは、それを見逃さなかった大先生に注意されたらしい。
自分の担当を終えていた僕は、
黙って手伝うことにした。
これ以上大先生とコネシマをもめさせたくない。 猫宮も同じように手伝い始めた。
「….だとしても、掃除をちゃんとやらない理由にはならないと思うけど!」
ごもっとも。コネシマは何も言えなくなってしばらく大先生をにらんでいたが、
時計をちらっと見る とあせったようで、
不機嫌そうな顔をしながら、
机と椅子を運び始めた。
ちょうど先生が教室に入ってきて、
声をかけた。
「お、しっかりやってるな。当番のみんな、ごくろうさま。 早く終わらせちゃおう」
猫宮が、僕にこそっと話しかけてきた。
「大先生凄いなぁ。あの強さは尊敬するわ。誰にでも注意できるんやで。ほんと憧れる」
「どうだかな。大先生は小さい頃からああやったけど…。そのせいでトラブルも多かったぞ」
「なるほど。それをちーのがいつもフォローしてたんか。」
「放っておくと、こっちがとばっちりを受けることもあるしな。小一の時のことだけどさ……」
「ちょっとそこ!俺のうわさ話してるやろ!すぐわかるんやからね!」
どういうわけか勘づいた大先生が、
僕たちに怒鳴った。
顔は笑ってるからいいようなものの、
あの大声、初めて聞いた人は驚くだろうな。
昔話は、そのうち猫宮に話してやろう。
僕たちは首をすくめて、残りの椅子と机を運んだ。
放課後、僕と猫宮は、職員室に用事が
あるという大先生のことを教室で待っていた。
部活がない日は、こうやってよく三人で
一緒に帰っている。
僕と猫宮はさっきの話の続きをしようとした。
「大先生は、誰にでもはっきりと言いすぎなんだよ。 俺たちにも遠慮なし。そこがいいところともいえるけど。」
「ふうん。なんでちーのは大先生のことは大先生って呼ぶのに、俺のことは猫宮なん?」
なんだなんだ、急に僕の話題になったぞ。
そんなこと深く考えてなかった僕は、
言葉に詰まった。
「ショッピって呼んでみてよ」
ふむ。呼べるか。
「大先生のいいところは認められるけど、俺のいいところは認められんとか!」
いやいや、そんなこと意識したこともないし。
「あんな、大先生と初めてしゃべった時、
なんでもはっきり言うから、 びっくりしたのを覚えてる。 今でもちょくちょくダメ出しされて、 落ちこむこともあるけど、なんでか、 嫌いにはならへんの。
厳しくはっきり言ってくれるところが 大先生のいいところだし、 黙って掃除の手伝いをしちゃう優しいところがちーののいいところだし、 俺はどっちも好きやで」
「す……好き?」
なんだ、そのワードは。
どきっとするだろ。
「おん。友達のいいところって、好きになるやん。俺のいいところって何?」
ああ、そうか。いいところの話か。
問い詰められて、僕は猫宮を正面から見つめた。
改めて考えると、俺は、友達のいいところ
なんて意識していないことに気づいた。
それで友達を選ぶわけじゃないし、
でも大先生や猫宮がどういう人間かなんて、わかりすぎるほどわかってる気がするし。
「ねぇ!俺のいいところも言ってみてよ」
猫宮のいいところ。
うーん、なんだかいっぱいあるような…。
「ショッピはなぁ……」
ついそう呼んでしまった俺は、
それ以上言葉を続けることができず、
ショッピから目をそらした。
顔が赤くなっているかもしれない。
いや暖房のせいだ。
決してショッピの笑顔を見たからじゃない!
GWなのでね。投稿します。
日常組もそのうち書くかもしれない🙄
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コメント
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初 コ メ 失 礼 し ま す .ᐟ .ᐟ .ᐟ 文 の 書 き 方 が凄 く 好 き で す っ 😖 💗 2 人 の 絶 妙 な 関 係 が な ん と も 言 え な い く ら い 好 き で す .ᐟ フ ォ ロ ー 失 礼 し ま す .ᐟ .ᐟ