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机に向かい、赤本を開いたまま止まっていた。
視線は文字を追っているのに、頭の中では別の映像が流れている。
――浴衣姿で褒められた夜。
――さりげなく差し出された手。
「……集中、集中」
小さく呟いて頭を振るけれど、胸の鼓動は早くなるばかりだった。
(悠真さん……今、何してるんだろ)
ため息をついて鉛筆を置く。
窓の外はすっかり秋の夕暮れで、放課後のチャイムの音がまだ耳に残っていた。
その瞬間、机の上のスマホが震える。
画面には「美優」の文字。
『今度の模試、終わったら一緒に勉強会しない?』
(……ちゃんと現実に戻らなきゃ)
そう思ったはずなのに、どこかで「悠真さんにも会えるかな」と期待してしまう自分がいた。