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「俺と玲那は同じなんだよ。性別こそ違うけど、互いに互いの苦しみが分かる。傷を舐め合うことができる存在なんだ」


金縛りにあったみたいに、身体が動かなかった。

今は声も出なかった。まさかとは思うが……ひとつの嫌な推測が頭に浮かんでしまったから。

そんな俺を見据えて、創は薄ら笑いを浮かべている。そして、俺の頬に触れた。


「愛がないから結婚すんだよ。それならお互いのやることに文句ないもんな。……俺が男と付き合っても、あいつが女と付き合っても」

「……は?」

今……何て?


聞き間違いであってほしかった。

いやもう、今日起きたこと全て。

でもこれが現実で。容赦なく叩きつけられた気がした。

俺は本当に、何も知らなかった。それを思い知らされる。創の眼は、冷たくてしょうがない。


「准。全部お前の為なんだ」


彼はゆっくりドアノブを回した。

部屋のドアが開く。その奥で揺れる一人の人影。

「……涼?」

いつものように、玄関先まで出迎えてくれるそいつも。

変わらない。……変わらないけど。


「おかえりなさい、准さん」


そういえば、ひどく冷たい嘘をつく。

ドアの先で佇んでいた涼は、感情の無い瞳で俺を見て、それから創の隣へ歩いた。

「お久しぶりです、創さん」

「あぁ。約束どおり働いてくれてありがとな。

やっぱお前は良い子だよ。……成哉」

これは全部、歪な部品で繋ぎ合わせたものなんだ。偶然なんかじゃない、人の手で仕組まれたもの。混乱しながらも、目の前に佇む二人を見た時に確信した。


思った通り、現実は言葉にできない痛みを伴った。

知りたくない。知ったら全て終わる。……その考えは間違ってなかった。


「准、本当のこと知りたいんだろ? 気が変わったから、やっぱり本当のことを話す」


一体全体、何を考えてんだ。

何がしたいんだ。

……こいつらは。

そればかりで何も言えない。俺を見越して、創は涼の耳元に優しく囁いた。


「教えてやんなよ、成哉。お前は誰の物で……何をしに、ここへ来たのか」





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