テラーノベル
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「俺は、誰かの駒にはならない」
警視庁で総理暗殺未遂の容疑をかけられ、取調べに遭っているザウルは、一言だけ、だがはっきりと桜祐警視の追及を否定した。
「どういう意味です?」
すかさず桜警視は食いつくが。
「言葉通りの意味だ。どうせ事情を話しても警察は陰謀だと笑うだろう」
これは自白を始めるサインだ、と桜祐は感じる。
「僕はこの手の話は慣れているのでね、聞かせてください」
祐は椅子に座り直し、前のめりになる。
と、間の悪いことに、桜警視の携帯が鳴る。
「失礼」
電話の相手は妻の桜春警部からだった。
「ああ、もしもし、後でかけ直すよ」
踵を返し、桜警視が取調室から戻ると、ザウルは姿を消していた。
「被疑者は?」
「えっ! 公安特別捜査隊さんが引き取るのではないのですか!?」
先程桜警視に敬礼した取調べ担当の警察官がうろたえる。
桜警視の目が見開かれる。
「……誰が、ザウルを引き取った!?」
「公安特別捜査隊を名乗る特殊部隊のような連中が。警察手帳を持って──あ」
言い終わる前に、桜警視は駆け出していった。
* *
特殊部隊が怒鳴るように声を掛けあう。
「急げ何やってる! 追手が来るぞ!」
手こずっている様子だ。
警視庁地下駐車場ではワンボックスカーがエンジンを唸らせたまま停車しており、今まさに発進するところだった。
地下駐車場に滑り込んだ桜警視はこれがザウルを連れ去った車両と直感で信じ、運転席をけたたましくノックする。
すると運転手がドアを開ける勢いで桜警視を弾き飛ばし、車両の別のドアから特殊部隊が恐ろしい姿を現す。
車両の奥にはザウルが口にガムテープを貼られ拘束されているのが見えた。
桜警視は拳銃を見せた、と特殊部隊員が認めるより早く、2、3人の部隊員のゴーグルを銃撃で撃ち抜く。3人眉間を撃ち抜き倒した。
残りは運転手含め、2人しかいない。
「桜警視!」
警視庁の警備中の警察官が加勢し、もうひとりを銃撃。
「撃つな!」
初めに撃った3人は仕方ないとしても、桜祐はなるべく証人を生かしておきたかった。
運転手は青ざめ、運転席の、何やらスイッチを押そうとする。
「スイッチを離せ!」
桜警視が拳銃を構え直した次の瞬間、爆発で吹き飛ばされた。
耳を聾し、キーンと不快な音だけの世界となる。
桜警視はコンクリートの床に転がるが、ザウルは炎に巻かれ、のたうち回る。
銃撃された特殊部隊員は息も絶え絶えだ。
警察官が消化器でザウルの着衣着火を消した。
警察官が駆け寄り、ザウルを喋れるように口元のガムテープを剥がしてやる。
「パルタ共和国に行け」
「喋るな! まずは治療を!」
「いいから聞け!」
大火傷を負ったとは思えないザウルの一喝に警察官は驚く。
「パルタ共和国に……行け!」
桜警視はそれを聞き、爆発を浴びた自分を奮い立たせた。
肩を押さえ、立ち上がる桜警視を、慌てて警察官が支える。
「あ、桜警視、無理をなさらないでください!」
「パルタ共和国の謎、そして特殊部隊の自爆覚悟のザウルの保護……」
桜警視は闘志に目を燃やす。
「パルタに渡航する準備をせねば」
ようやく合流した大河内が桜警視を強引にもコンクリートの床に座らせる。
「その通りだ。だけどまずは治療だ」
* *
科捜研には天馬理久という天才研究員がおり、サイバー捜査員の桜春警部と共に遺体、遺留品の解析を行なっていた。
「パラノイアAIと同規格の遺留品!?」
桜警視のおうむ返しに、天馬は頷いた。
「言うまでもなくパラノイアAIとは、国家情報局に導入された出所不明のAIであり、国民を管理統制だの、歴代総理の魂が入ってるだの都市伝説もあるけれども、もしその都市伝説のひとつ、世界支配のためのAIという噂が真実なら、特殊部隊の背後関係を立証することになるね」
早口で天馬はまくしたてた。
パラノイアAIを都市伝説的に捉える意見は巷であり、アメリカのCIAやイスラエルのモサドが導入するパラノイアAIは世界の支配者が諜報を握る道具だ、という主張だ。
「そして、総理暗殺未遂事件の現場からはパルタ人の容疑者とパルタ製ボウガンが見つかってる」
桜警視は特に天馬の弁を否定せず、顎をなでながら事実を述べる。
「ああ、それね、パルタの狩猟部族が猛獣狩りに使うボウガンだね」
「パルタ政府の関与もあるのかな」
春がひょこっと疑問を投げかける。
桜警視と天馬研究員は顔を見合わせた。
「それを言うなら、エーデルシュタインの総理警備プラン漏洩のほうが怪しい」
パソコン画面にはオルフェウスという語が表示されていた。
* *
後日、傷を癒した桜祐警視は、子育て中の桜春警部を除く公安特別捜査隊メンバーを引き連れ、国家情報局の一室に出頭した。
「桜警視ほか公安特別捜査隊、参りました」
「楽にしろ」
桜警視たちは立ったまま休めの姿勢をとる。
彼らに語りかけるのは、乃木康信危機管理対策官。丸刈りの中年男性で太い黒縁の眼鏡をかけた官僚だ。
元公安調査庁首席調査官であり、公安特別捜査隊の前身部隊においては桜祐たちのチーフであった。
「報告書は読ませてもらった。今回の件、色々と聞いている」
乃木対策官は手を後ろに組み、歩きながら述べる。
「情勢は緊迫している」
ドアをノックする音が鳴る。
乃木対策官が「入れ」と言うと、国家情報局職員が必要書類を持ってきた。
「君たちにはパルタ共和国とエーデルシュタインへ渡航してもらう」
来た、と桜祐は思った。
「パルタ、エーデルシュタイン、ふたつの国を蝕む敵は何者か。それを調べるのが君たちの任務だ」
コメント
1件
おお、第2話も熱かったな!桜警視の銃撃戦、キレッキレでかっこよかったわ。でも何より「パルタ共和国に行け」って燃え尽きるみたいに言ったザウルの最期の言葉が気になりすぎる。パラノイアAIとエーデルシュタインの防衛プラン漏洩…国の裏側がちょっとずつ見えてきて、続きが待ちきれねえ🔥