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翌日――
若井が出社すると、机の上に“倍以上”の資料の山。
「……うそだろ……」
ファイルの端には、でかでかと貼られたメモ。
《これ、今日中。by もとき》
きた。
やっぱり、あの夜のこと、何かの“罰”だったんだ。
いや、罰でもない。ただの気まぐれ。いつもの“意地悪”だ。
「おはよ~若井くん、調子どう?」
その声に、背筋がぴんと伸びる。
「……おはようございます」
「机、綺麗だったからさ。お前、暇だと思って」
「……」
「“俺がやるべき仕事”、お前に渡してあげた。光栄だろ?」
「嫌がらせですよね」
「言ったな?」
大森は若井の肩に手を置いて、ニヤリと笑う。
「お前が“俺の部下”である限り、俺の裁量。文句あんなら、辞める?」
その一言が、首に巻かれた鎖みたいに重かった。
「……ありません」
「そう。なら黙ってやれ」
ひらりと書類を追加して、大森は立ち去った。
その背中には、躊躇も迷いも、一切ない。
若井は息を吐いた。
目の前の書類の山が、いつもより高く、遠くに見えた。
でも――
それでも、仕事を終わらせなきゃ。
あの男に、“できない”なんて、絶対に思わせたくない。