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深夜、オフィスの照明がわずかに灯る中、
若井は黙々と残業をしていた。目の前の書類に、視線が泳ぐ。
(もう……限界だよ……)
手が震える。
何時間も、ひたすらに働き続け、気づけば時計は夜中の2時を回っていた。
それでも、まだ大森から追加された仕事は終わらない。
(でも、あいつをこのままにしておくわけにはいかない……)
心の中で、若井は決意した。
大森がどんなに意地悪しても、今度こそ反撃してやる。
若井は立ち上がり、息を大きく吸って深呼吸。
「できる」と自分に言い聞かせ、覚悟を決めてデスクを離れた。
――だが、背後から聞こえた声に、全ての意気込みが打ち砕かれた。
「お前、何やってんだ?」
大森の声が響く。
振り返ると、そこにはいつもと変わらない、冷ややかな表情の大森が立っていた。
「先輩、もう仕事は終わりました」
「は?まだ終わってねぇだろ」
大森は無表情で歩み寄り、若井の肩を掴む。その力強さに、若井は一瞬で固まる。
「お前、仕事できたからって、反抗してみようってか?」
「……っ……!」
「やってみろよ。どうせ、またお前が“できない”って証明するだけだ」
「違います、できてる……」
「できてねぇよ」
その言葉とともに、若井の身体はあっという間に床に押し倒される。
バランスを崩して、勢いよく倒れた体が、冷たいフローリングにぶつかる。
「……!」
若井は必死に反応を試みるが、大森の体重が乗ったかのように、押さえ込まれて動けない。
「ほら、またその顔。――最初から言ったろ?お前は俺に逆らえない」
大森の冷たい笑みが、視界に広がる。
その距離が、どんどん縮まってきて、息ができなくなるほどに近くなる。
「お前、逆らうことなんてできないんだよ。それだけはわかれよ」
「……うっ……」
「“反抗してみろ”って言ったから、見せてやったんだろ?やっぱり、お前は俺のもの。分かってんだろ?」
声が低く、冷たく。
その一言で、若井の心は完全に捕まった。
――大森の意地悪が、痛いほどに胸に響く。