コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
というわけで建真のご飯を済ませた後、彼がお風呂に入っている間にフリマサイトに登録した。もちろんネクタイを売りさばくためだ。ずっと紙袋の奥底にしまわれていたアイテムの存在なんて、持ち主は忘れているに違いない。それに売ったら証拠隠滅できるし、知らぬ存ぜぬで押し通す。
建真のものだからこれからの行為は若干犯罪のような気もするけれど、彼からはモラハラ・経済DV・セックスレス・浮気と四重苦も与えられているんだから、そのくらい問題ない気がしてきた。
生活費くれないのが悪い!
それにもともと私があげたものだし――と自分勝手な理由をこじつけた。
早々にフリマアプリでネクタイを売っちゃおう。
(えーっと…フリマアプリ…『なんでも売買屋』かぁ)
一番上に出てきたフリマアプリをインストールした。SEO対策(「検索エンジン最適化」を意味する、Search Engine Optimizationの略。Googleをはじめとした検索エンジンのランキングで上位表示を行うことで、検索結果からの流入や売上、リード獲得などを大きく増やすことが可能となる施策のこと)もバッチリだから、1番上のアプリは人気なのだろう。
早速個人情報を登録していると、早くもつまずいた。
(あ”。銀行口座情報、登録できないや…。どうしよう…新しい口座開設するにも時間かかるよね…)
困っていると、アプリの説明に目が釘付けになった。
(ん? 口座を登録したくない方は、直接取引も可能。店舗に持ってきてくれたら売上金を即金でお支払い――ですって!)
早速なんでも屋を検索すると、飲み代半額券をもらった大吉酒場のすぐ隣だった。
(ラッキー!! 早速入手したネクタイ売っぱらって、飲み代稼ごう!!)
どうやら運の良さが上昇した模様。また建真を倒す一歩が踏み出せた気がした。だが、現実はゲームと違ってそう甘くないものだと、思い知らされる――
(4つあるから1つ500円で売れる計算で出品したけど…ネクタイ、ぜんっっっぜん売れない!!)
箱もあるし新品未使用。4つまとめてセットで2000円。お買い得だと思うんだけど、だめみたい。
3日経ってもな――んのアクションもない。
あと、他にめぼしいものが無いか確認したくて建真の部屋に行こうとしたけれど、鍵がかけられていて中に入ることができなくなっちゃった。多分勝手に入られたら困るって思ったんだろうな。さすがに紙袋を見たところまでは突き止められていないけれど、防衛線を張られたのだと思う。
(…やっぱり私に離婚なんて無理なんだ)
せっかく勇んで奮い立ったものの、早くも現実の壁にぶち当たった。結局私は建真のために料理を作るしか能がないんだ…。
晴奈との浮気現場を目撃しておきながら、なにもできないなんて。
悔しい。
今までだったらここで諦めていたけれど、ちょっとだけ勇気を持てたし、レベルも上がったから負けない! 私は勇者になったんだ!!
よし。こうなったら直接売りに行こう!!
4本セットで1000円くらいになったら御の字!
2000円なら尚よし!!
そう思って私は就業後、早速大吉酒場の隣にあるビルの3Fに足を運んだ。怪しげな雰囲気のマンションで、1FはShot Bar『大吉』、2Fは金融業者『エンマン』、3Fはお目当ての『なんでも売買屋』が入っている。
階段を上がって早速3Fフロアに立ち入った。上がってすぐの所に『なんでも売買屋』と書いた大きな看板がどーんと置いてある。わかりやすいな。ダンジョン内で迷子になることはなかった。
ドキドキしながら店内に足を踏み入れた。所狭しと並べられたお宝には一切値段がついておらず、幾らで販売しているのかよくわからなかった。新古のネクタイなんか値段付くのかな…。