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私の愛犬、ポンタとはもう長い付き合いだ。ポンタは私が高校の卒業祝いに両親に無理を言って飼ってもらったので、7年も共に過ごした事になる。今はもう仕事にも就いてポンタと二人暮しだ。毎日、仕事で疲れた私を愛犬が癒してくれる。これ以上ない幸せだ。
「ポンタ。晩ご飯だよ。」
私が名前を呼ぶと、愛犬は急いでこちらに寄ってくる。その姿が何とも可愛らしくてそのたびに撫でてしまう。
「おやすみ。ポンタ。」
時計が11時を指したので、既に眠っているポンタに挨拶をして、私もベットに潜る。ポンタに癒して貰ってはいるが、どうしても体の疲れは取れないのですぐに意識が落ちる。
「ワンッ」
愛犬の鳴き声が聞こえ、私は急いで飛び起きた。愛犬が夜に鳴くのは必ず何かが起こっている。この前ポンタが夜に鳴いた時は家の中に泥棒が入ってきていた。
私は警戒しながらも電気をつける。しかし、家の中には私以外は何もいなかった。
そう。泥棒も鼠も、ポンタでさえも。
「ポンタ?」
どの部屋を見ても愛犬が居ない。そうして1階に続く階段の先を見た時、目を疑った。1階の地面が紅く染まり、その上にポンタが横たわっていたのだ。
「ポンタッ!?」
私は自身に血が着くのも気にせず、すぐに駆け寄った。皮膚に着いた血は、妙に生暖かった。
結局、ポンタは息を引き取った。時間が深夜だったのもあり動物病院はどこもやっておらず私には何も出来なかった。
もうあれから1ヶ月も過ぎたと言うのに、気分はずっと落ち込んだままだ。仕事もあれ以降上手くいっていない。今日もミスをして上司に叱られてから帰っている。
何より心の準備ができていなかったのだ。寿命や病気などだったらもう少しマシだっただろう。
カランカランと鈴がなる。私は気付けば帰路の途中にあるペットショップに足を踏み入れていたようだ。そしてその子と出会った。その子犬の瞳が、耳が、手足が、その子はポンタだと語りかけていた。その姿かたちが幼い頃のポンタにそっくりだったのだ。
私はその子犬を買ってポンタと名ずけた。
本物のポンタでは無いとわかっているのに