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るぅとくん視点です😌😌
「 仲間たちの覚悟 」
それは突然だった。
「さとみくん、今日の打ち合わせ、
14時から……」
僕の呼びかけに、さとみくんはクルッと振り向いた。 そして、満面の笑みで言った。
「るぅとに、!さとちゃんね、あのね、ブロックもってきたの!」
手にしていたのは、色とりどりの積み木だった。リュックの中からごそごそと取り出し、テーブルの上に並べ始める。
「……え?」
「これでおうちつくるの!るぅとにぃもやろー?」
僕は一瞬、言葉を失った。だがすぐに、昨日の告白を思い出す。
(……これが、“発作”なんだ)
幸い、その場にはジェルくんもいた。
彼は何も言わずにさとみくんの隣にしゃがみ、積み木を一つ手に取る。
「じゃあ、じぇるにぃはここ、塔を作るな。高〜くするで!」
「わあ、たかいねぇっ!!」
幼児のような無邪気な声。けれどその中には、心のどこかで“逃げ場”を求めているような寂しさがあった。
その後、打ち合わせは急遽オンラインに切り替えられ、さとみくんとジェルくんを除いた4人で進めることになった。
「……こうなると、今後のスケジュール、根本的に見直さないと厳しいかもね」
僕はスライド資料を見ながら冷静に言ったが、その指先は少し震えていた。
「さとみくん、今日あれで3回目だよ。昨日の夜も、急に赤ちゃん言葉になってたってジェルくんが言ってたし……」
莉犬が不安げに言う。
「このままじゃ、活動自体に支障出るんじゃ……」
ころちゃんがぽつりと漏らすと、空気が一気に重くなる。
だが、なーくんはゆっくりと頷いた。
「支障が出ても、俺たちは一緒にやるって、さとみくんに言ってあげたい。」
「……なーくん……」
「たしかに大変だと思う。でもな、俺たちが一緒にいる意味って、活動だけじゃないと思うんだよ。家族みたいなもんだって、ジェルくんも言ってたでしょ?」
莉犬が唇を噛み、ころちゃんが目を伏せる。
僕も小さく頷きながら、言葉をつなぐ。
「一緒に考えよう。“病気だから”って突き放すのは、さとみくんが一番怖がってることだと思うから。」
夕方。メンバー全員がさとみくんの部屋に集まった。 さとみくんは、ふと目を覚まし、大人の意識に戻っていた。
「……みんな……?どうして……?」
「少しでも、力になりたくて来たんだよ」
莉犬がそっと隣に座る。
「さとみくん、ひとりで抱えてきたんでしょ?今度は、僕たちに頼ってよ」
「でも、俺、情けなくて、あんな姿みんなに見られたら……嫌われるって思った……」
ころちゃんが、少し涙ぐみながら言った。
「そんなの、嫌いになる理由になんないよ。むしろ、僕たちのこと信じてくれてなかったの!?」
さとみくんは顔を伏せる。だが、ジェルくんがそっと肩に手を置いた。
「……俺は、どんなさとちゃんも好きや。大人でも、子どもでも、泣き虫でも。お前が“ここ”にいてくれるだけで、ええんよ。」
その一言が、すべてを溶かした。
「……うわぁぁぁ……っ」
さとみくんは声を上げて泣いた。
長い間張り詰めていた糸が、ようやくぷつりと切れた音がした。
夜、さとみくんはまた子どもの姿に戻っていた。 だけど、今度は孤独じゃなかった。
莉犬がぬいぐるみを用意し、ころちゃんがタオルケットをかけてくれた。僕 は小さな絵本を読んで、なーくんが隣でゆっくり背中をさすった。
ジェルくんはさとみくんの手を握りながら、優しく言った。
「なぁ、さとちゃん。俺ら、ぜったい一緒に乗り越えられるからな」
「……うん……じぇるに、……だいすき……」
ぎゅっと、ジェルくんの胸に抱きついた。
いつかまた大人のさとみくんに戻るその日まで。 ジェルくんは何度でも、何度でも支えてみせると誓った。