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9月。新学期が始まり、秋に近づいたと思ったがまだ暑い。
昼休み。いつも通り教室で友達と話しながらご飯を食べていると教室がだんだん騒がしくなっ
た気がした。周りを見ると、
「えー最悪、このアイドル推してたんだけどー」
「活動休止!?待って生きていけない…」
などとクラスの女子が嘆いている。
どうやら人気アイドルの”ほづみ”とか言う人が活動休止を発表したらしい。
僕のスマホもその話題でつきっきりだ。
「あーあ、俺もこんくらいかっこよかったら女子に騒がれてたのかなー」
と一緒にいる友達、佐々木が口にする。
「次元が違うでしょ、ちょっと自販機行ってくるね」
立ち上がり、財布とスマホを持っていることを確認する。
「俺ブラックコーヒーで」
何カッコつけてんだと思うがそもそもお前の分はない。
そう、自販機に行くと言うのは建前でほんとは教室が騒がしすぎだから逃げたくなっただけ
だった。
僕は教室のドアを開け、自販機に向かった。
自販機まで行くには階段を登り、3年生のフロアを通って渡り廊下を渡らないといけない。少
し面倒だが自販機の近くに日当たりのいい空き教室があるのでまあよしとしよう。
少し歩いて三年生フロアに入るところで道に迷っている男の人を見つけた。道の真ん中でうろ
うろしている。少し邪魔だな、と思ったが困っている人を無視するほど性格は悪くない。
「あの、なにかお困りですか?」
後ろから見ると髪がサラサラだったから勝手にイケメンだと決めつけていた、けど…
実際、男が振り返った瞬間にマジか…と思った。目にかかるほどのぱっつんの前髪にメガネ、
そしてサイズの大きいマスクをしている。
「ぁ、、えっと、食堂、に、行きたくて」
喋り方も解釈一致。仕方なく案内してあげることにした。
「食堂はこのすぐ近くですよ。僕も行くところでしたので、一緒に行きますか」
ぶっちゃけ教室から離れられるのならそれでよかったから食堂に行くことにした。
食堂に着くと男はパンを一つだけ買ってお礼を言ってきた。それだけで足りるのかと思った
が、初対面の男に色々言われるのはあっちもめんどくさいだろうと思い言葉を飲み込んだ。
「すみません、あと、、空き教室とか、人があんまり来ないところってありませんか?」
この人が最近話題のインキャというやつか?人とあまり絡もうとしないで1人で過ごそうとし
ている。珍しい、と思いつつせっかくなので僕のお気に入りの教室を教えてあげることにし
た。
「なら、僕のお気に入りの教室を教えてあげますよ。みんなには内緒で」
ついでに自販機でジュースを奢ってもらい、空き教室についた。
「ここ、日当たりもいいし、人も来ないですよ」
と軽く紹介をすると、メガネの隙間から輝いている瞳がチラついて見えた。
「ありがとう!命の恩人だよ!」
大袈裟だな、と思った。が、すぐに男メガネとマスクを外したことでわかった。心を許された
のだろうかと思い、顔を見る。
嘘だろ。
テレビやネットニュースで何度も見た顔。間違えるはずがない。
その男は人気アイドルの”ほづみ”だった。
「え、いや、あなた、ほづみさん、?」
頭がはてなでいっぱいになるというのはこういうことだろうか。
「あれ、俺のこと知ってた?3年に引っ越してきたんだ、活動休止っていう程だからね。
身バレ防止のためにマスクとメガネつけてるの。君、流行りに疎そうだからいけるかなって
思ったけど無理だったか」
マスクを外すとなんだか話し方がシャキシャキしたような気がした。
ヘラヘラ笑っているが、僕に身バレしてしまっている。
「えっと、僕にバレちゃってますけど、、大丈夫ですか?」
「大丈夫、ではないね。マネージャーにドン叱られるよ、きっと。まあでも、この空き教室を
教えてくれたのは君だし。おあいこって感じかな」
そんな軽い感じでいいのか、と思うがまあいいんだろう。
「君、名前教えてよ。」
「あぁ、自己紹介。僕は2年の石動律人です。えっと、オムライスが好きで勉
強が嫌いです」
1人の相手に自己紹介をするのは初めてな気がしてなんだか少し恥ずかしい。
「あれ、2年生だったんだ。一応俺も…穂積詠都だよ。好きな食べ物か…カツ丼とか?嫌いな
のはにんじん!ねぇ、明日もここで一緒にお昼ご飯を食べよ!」
コメント
1件
わあ、第1話から面白い展開でしたね!「教室の騒がしさから逃げたかった」という主人公の心理から始まって、まさかあの変装男子が人気アイドルだとは…設定の組み立て方がすごく自然です。ぱっつん前髪・メガネ・マスクの三重変装で「インキャ」に見えるけど、実は輝く瞳の持ち主っていうギャップ描写が効いてます。空き教室を「命の恩人」呼ばわりするところで、ああ、この二人、秘密の関係になりそうだなとワクワクしました。続きが気になります!