「美味しかったです。ごちそうさま」
食べ終わり食堂から出ると、すぐそばにお土産屋さんがあり、二人で立ち寄ってみた。
すると店頭で、ここの温泉の湯の花の入浴剤が売られているのが目に留まった。
「これ、天然の湯の花の入浴剤だそうです」
「そうみたいだな。じゃあこれを家のお風呂に入れたら、家が温泉になるな」
「はい」と頷いて、ふと思ったことが口をついた。
「そうだ、これを買って、いつか一緒にお風呂にっていう約束にしませんか?」
自分で言っておいて、けっこう大胆なことを言っちゃったかもしれないと感じる。
「あっ、あの変なこと言ってしまって、私……」
とっさに言いつくろうと、
「変なことなんかじゃない。嬉しいよ」
彼の腕に、腰がクッと抱き寄せられた。
「じゃあ僕が買って、いつかの約束のために持っておこうか」
そう言ってチーフは湯の花の入浴剤を手に取ると、「だから、忘れたりしないでほしい」と、声をひそめて私の耳元に囁きかけた。
「はい……」と、はにかんで返して、でももし本当に一緒にお風呂に入ることになったら、やっぱりすごく照れてしまうんだろうなと感じた……。
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